事件簿その114 「祖父の仲間と魚釣り事件」
小学校1年か2年の頃だろうか。
おじいちゃんとおじいちゃんの友人2・3人で魚釣りに行った。
友人の一人に魚釣り初体験のHさんがいた。
Hさんは威勢がよく、男気溢れる方だった。
「わしが100匹釣っちゃるわい!!」
Hさんがこんな調子の中、船は出発した。
ポイントに到着し、魚釣り開始。
いきなりHさんがヒット!!
釣れたのはオコゼ。
何も知らないHさんは素手でキャッチ。
だめだめだめ!!!
みんなに注意され、説明を受けるHさん。
絶対触っちゃいけんで!!
背びれに毒があるし・・・
っていうか、何でこいつを鷲掴みしたんな!!
どの角度から見ても危険なの分かるじゃろーが!!
ギザギザの鎧を纏い、
近寄るなオーラ全開で、
敵意むき出しの風貌。
これを見て、「よしオッケー。素手でいける!」に辿り着く発想が素敵。
Hさんは、こう言う。
「大丈夫じゃい!!全然いとーないし(痛くないし)。かわいい顔しとるじゃなーか。」
釣りに熱中して15分くらい経っただろうか。
Hさんのいないことに祖父が気付く。
そして祖父は次の瞬間、事件を目撃してしまう。
トイレの陰で、
やはりHさんは、
泣いていた。
痛みをこらえきれず、
泣いていた。
私は「せつない」という感情を、
こうして覚えた。
事件簿その113 「リング事件」
「そのビデオを見ると1週間後に死ぬ」
1998年に映画化され、日本のホラーブームを作った作品、
「リング」。
中学3年の頃だっただろうか。
ホラーの好きな私と妹は、この日も「リング」のドラマを観ていた。
ガラス戸を挟んだ隣の部屋で、両親の大きな声が響く。
どうやら、父が母の体の上に足を乗せたらしい。
母:「もーう!!重たいけん足下ろしてや!!」
父:「あっしの足ですか?」
母:「あはははは!!!」
全く物語の中に入り込めない。
肩に力が入るような緊張感。
夜トイレに行けなくなるような想像の連鎖。
そんな危険を冒してホラー作品には臨みたいのに。
妹はホラーを楽しめない環境に苦笑いしている。
今度は父がしつこく手を顔の上に乗せたらしい。
母:「もーう!!寝れんけん、手下ろしんさいや!!!」
「わての手ですか?」
「あはははは!!!」
この日の「リング」は、
全く怖くなかった。
妹はホラーを楽しめない環境にただただ苦笑いしていた。
中国で見つけた本事件
友人じょにーから、中国で購入したという本を渡された。
これは事件だという。
まさに事件だった。早速報告したい。
中国の出版物には著作権という概念がないのであろうか。
明らかにキャプテン翼である。
裏もこんな感じである。
大人気のサッカー漫画の模倣品というか、そのもの!!
ここまでならありがちな事件であるが、
本を1ページ開いた私は、度肝を抜かれる。
ド、ドラゴンボール!!?
サッカーする気ないよね!?
さらに1ページめくる。
え?え?いっぱいいいたいことあるけど、まとめると、
ハンド!!!
1枚めくる。
どうする?タイトル変える?
これ以降全てスラムダンク。
表紙と裏表紙は何だったん?
スラムダンクを表紙に使ったら違法なん?
え?ひとり敵がおる!!
ひとりスパイがおるでー!!
ミッチーはきれいにパクられて完成度が高い。
左の鼻の穴どうなっとんな!!
ピーナツ詰めとる!!
デニス・ロッドマンか!!
・・・ゴリ染めた期間あったっけ?
もう、方向くらい合わせてくれや。
キャプテン翼ーーー!!!
じゃなーわい!!!
なんなんだ。この完成度の低さの高さ。
世界にはまだまだ分からないことが多すぎる。
事件簿その112 「39度の発熱事件」
今週、月曜日、仕事中に寒気、吐き気、眩暈がして早退。
すぐにタクシーで病院に直行。
初乗り710円。1,000円を出すと事件は起こる。
「10円ありますか?」
あるけどー!!!関節痛いんじゃー!!
頭がガンガンする。それより何より寒い。死ぬほど寒い。
何とか病院の扉を開け保険証を提出。
受付の看護婦さんが事件を匂わす。
「ワタベさんですね?」
私の名前は萬収集家「ワタナベ」。本名、渡部祥平。
この漢字のせいで苗字をよく「ワタベ」と間違えられる。
いつものようにやさしく「ワタナベですと」告げるべきところだが、
頭がガンガンする。それより何より寒い。死ぬほど寒い。
この日は、こう答えた。
「・・・はい。」
もう苗字なんてどうでもいい!!患者Aでいい!!楽にしてくれ!!
熱を測ると39.3℃。インフルエンザの検査が必要らしい。
「ワタベさん、検査するので来てください。」
「・・・はい。」
検査の結果、陰性。よかった。
診察後、点滴をすることになった。
「ワタベさん、点滴します。」
「・・・はい。」
抗生物質を飲み、私の大好きな薬「ロキソニン」を投与し、いざ点滴。
すぐに眠りについた。
1時間弱経ち、点滴が終わる。熱は38℃まで下がった。
会計を済ませ、隣の薬局へ。
私が最後の患者らしい。半分シャッターが下りている。
「お待ちしておりました。お客さん、苗字はワタナベですか?」
ん?何でマイノリティーパターン!?
どうぞワタベと呼んでくれ。一旦外出てやり直そうか?
何とか薬をもらい、電車に乗り込む。
咳は出ていないので予防のマスク的に映れば嫌がられまい。
1駅進み、前の席にマスクをした男性が乗ってくる。
マスクが増えるので紛れていいなと思った矢先事件は起こる。
何か、めっちゃ睨んでくる。
私があまりにも体調が悪そうなので予防には見えなかったのだろうか。
「インフルエンザなのに電車乗ってんじゃねーよ!」的な睨み。
目合わさんようにしとこう。頭痛いし。
「ゴホッゴホッ!!グワーッ!!ウオッホーンッ!!」
いやお前、完全に風邪じゃろーが!!!
え?え?何?
何で睨まれたん?
絶対に風邪をうつしてやるぞー!的意気込み?
何とか、事なきを得て最寄駅に到着。
ここから家までは徒歩15分。よし、タクシー。
乗り場に到着。おじいさんが割り込み。
じじいーーー!!!!
寒いーーー!!!助けてーーー!!!
何とかタクシーで家に到着。
710円。1,000円を出すと、
「お客さん10・・・」
あるけどー!!!
皆さんも風邪には気をつけてください。
健康は何よりですね。
事件簿その111 「宮島にまつわる香り事件」
3年前の10月のある日、事件は起こった。
それはコーヒーを飲んで、
そのあと友人にもらったヤクルトを飲んだときだった。
数分後口の中がどこかで匂った覚えのある懐かしい感覚にとらわれた。
あれ、これ何だったっけ?!
虫?!カメムシ?
たぶん何かの虫のにおい。
ん??!違う。虫じゃないのー。
あーーー!!
宮島の鹿のにおいじゃ!!!
その匂いの完成度の高さにひとり大笑い。
海の潮のにおい+獣のもつオリジナルのにおい
=宮島の鹿のにおい
コーヒーとヤクルトでこんなにも混ざり合うのか??
いや、あれだ!!
どうやら昨日の夜中に食べたラーメンの中に含まれたニンニクが健在であった。
…やった!!これで、いつでも宮島に飛んでゆける。
…いや。何を感動している、宮島の鹿!いや、おれ!!
明らかに、くさい。
なぜあの日に、こんなにおい?
鹿からのメッセージか。
助けを求める術なのか。
それとも私の郷愁の念がこのにおいを醸成してしまったのか。
様々な想いを胸に、丹念に歯を磨いた。
バイバイ、宮島。
宮島の鹿と戯れたことのある方はぜひこの方法でトリップを願う。
宮島の鹿のにおいを導き出す方程式
海の潮のにおい+獣のもつオリジナルのにおい
=前日のニンニク+ブラックコーヒー+ヤクルト
=宮島の鹿のにおい