昨年の311震災以来、東北に美味しい食べ物を届ける活動をされている猪口由美さんのFBの記事です。
すべて掲載しています。
私は書けなかったこと、書きたかったことが全部ここに書いてあります。
猪口さんたちの活動、トレスインターナショナルとして、ずっと支援を続けていきたいと思っています。

<猪口由美さん 3月5日 FB の記事より 転載>

死ぬまで忘れられない記憶です。めっちゃ長いですけど、ごめんなさい。

3.11。わたしは広島にいました。震災を知ったのは、妹からの「お姉ちゃん、大丈夫?」という心配のメール。取材の後、とにかく何が起こったのか把握しようと急ぎ空港に向かうと、大画面テレビに陸前高田が津波に襲われている映像が何度も流されていました。涙が出ることはありませんでした。あまりの光景に、言葉を失っただけでした。

「いのくちさん、出来るだけ早くきて。現状を見てくれよ」震災から1ヶ月半が過ぎたとき、宮古に住む生産者さんから連絡が入りました。彼が言うからには何かあるんだ、その思いに応えたいと、わたしは被災地に向かいました。

最初は、宮古。それから田老町、大槌、釜石と南下していくにつれ、言葉を失う光景が続き、しだいに自分の心が、目の前の現実を拒否し始めたことが分かりました。感情が動かないのです。焦げた臭いもつぶれた家も車も、爆撃を受けた戦時下のような風景も、心が拒否してました。

そんな状況で最後に訪れたのは、陸前高田でした。政府が数少ない激甚災害に指定した町です。町には人が誰もいませんでした。何の音もしない町を体験したのは、あれが初めてでした。

生産者の河野さんは、醤油蔵の主です。豪放磊落な性格で人望が厚い方でしたが、お会いしたときには、すんごいちっちゃくなっていました。

いろんな話をしました。2人で涙して涙して、涙が止まらなくて、「わたしは被災してないのに、ごめんね」って思うほど涙が出てきました。
そして、醤油蔵があったところに行こうと、移動しているときに聞いたのが、この
話でした。

「津波がきたとき、あそこに見える体育館にみんなが逃げたんだ。でもな、津波の勢いが尋常ではないと感じたじいさんやばあさんが、そこに避難してた子供たちに『こっちや、こっち!』って言ってな、体育館の横にある急な丘に引っ張ってったんだ。ぎゃーぎゃー泣く子を引っ張ってな。子供たちをみーんな連れてったんだ。でな、襲いくる津波を腰に受け、全員の子を引っ張り上げてな、最後の子供を押し上げるときに、じいさんは『後ろはふりむくなー』って言ってな、流されちまった。いのくちさん、振り向くなって言われても、子供は振り向くぞ。子供たちはどんな思いだか。陸前高田は子供が殆ど救われた町って言われるけど、きれいごとじゃないんだよ」

これが被災地での3.11です。これが現実です。被災地の方はみんな、わたしたちが想像もできないことを、経験しているのです。宮古の生産者さんは、これをわたしに伝えたかったんだと、わかりました。

この話を聞いたあと、わたしに何が出来るんだろうとずっと考え続けました。でも、所詮わたしなどにできることは、大したことはありません。この取材と同時期に、わたしは縁あって都内のシェフたちと一緒に被災地支援を始めました。現地に美味しいものを届けることで、つらい思いをしている人が少しでも笑顔になるように。その思いだけで始めました。

いろいろ言う人もいます。「もう食べものは行き渡ってるじゃないの?」「なんでいまだに、炊き出し?」「自己満足?」
でもね、行ったらわかります。わたしたちが想像もできないような悲しみに包まれた人たちに、ほんの一瞬でも笑顔が届けられれば。それだけなんです。

そして今年の3.11。わたしたちは、岩手県大槌町に向かいます。当初、わたしたちは東北に行くこと躊躇していました。被災地の皆さんはひっそりとそれぞれの思いで過ごしたいはず。そこにわたしたちは必要ないと。ただ、これまでのわたしたちの活動を間近でご覧になっていたお寺のご住職からの「君たちだからお願いしたい」との強い思いを受け、動くことにしました。

3.11、岩手県大槌町の一周忌法要では、1100名分の食事を届けさせていただきます。参加するメンバーは、全員心して現地に向かいます。
被災者じゃないにの泣くかもしれないけど、ごめんなさい。でも、あなたたちの心の痛みは、わたしたちが現地に訪れるたび、たくさん受け止めてきましたよ。一生懸命、法要を支えますからね。どうぞ、多くの魂が、安らかに静まりますように。

遠くから支援をしていただいている皆さん、どうぞ遠くから心を送ってくださいね。
おねがいします。




猪口さんたちの活動を知ったのは、TWITTER でした。
鬼のように炊き出しを始めた藤巻さんのつぶやきから『美味しい物届け隊』の活動を知りました。
改めて猪口さんの記事を読んで、昨年のいろいろなことが胸に迫り、
小さなことしかできなくてごめんなさい。と泣きそうになりました。
心を送ります。というか、寄付します(心を送るだけよりも実際に役に立つ寄付をした方が
より実際的ですからねd)
311の大炊き出しどうぞよろしくお願いします。