今回の東北・関東地方大震災では、多数の犠牲者、被災者を生みました。

続く余震、原子力発電所の事故・・・。

まだまだ心落ち着くことのない日々です。


亡くなられた多くの方へ追悼。

そして、被災者の方へお見舞いを申し上げます。

皆様が早く心の平安を取り戻し、街の復興が進むことを願っています。




私も、阪神・淡路大震災を神戸市東灘区で被災しています。

あの日の轟音や救えなかった人々のことを、どうしても思い出してしまいますが・・・。


今は、少しでも日本を前に進めるために、
日常をきちんとすごしていかなければと思っています。


寝て、起きて、ごはんを食べて、仕事して
本を読んで映画を見て、ちょっとお酒を飲んで。

そして、大切なひとと大切な時間を過ごして
いざというときにそのひとを守れる力を蓄えます。




PRAY FOR JAPAN

PRAY FOR YOU

PRAY FOR ME...



マドンナ・ヴェルデ/海堂 尊

¥1,575
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「ジーン・ワルツ」のサイドストーリーということで読んだ。
「ヴェルデ」とは「緑」という意味。
代理母を受諾した、曽根崎理恵の母親「みどり」の話だ。

「ジーン・ワルツ」を読んだだけでは謎だった、代理母問題や母娘の関係がこれで明らかになる。


それにしても、Amazonや他ののレビューを読む限り、理恵はほんとうに人気がない。
理恵の「医療人」としてのふるまいは、倫理的には難があるけれども、彼女も「産婦人科医療」をとても真摯に考えている。一生懸命すぎて世の倫理とずれることがあるだけで。

現代の医療技術において欲しくてたまらない子供を得ることができるのだ、と知った上で、それでも「代理母を頼んでまで・・・」とあきらめきれるものだろうか?現代の法に触れるからといって?
理恵の行ったことはすっとんでいるけれども、これはフィクションなのだから、それぐらいの破壊力がないと現実世界の「不妊治療領域」には届かないのだろうな、と想像する。
海堂氏の問題提起力には感心するばかりだ。


「文学はペンによる謀反だから、世の中が変わって社会事象として確立されればその闘いは終わり。文学で不倫を堂々と扱ったから社会に認知され、その結果、倫理と社会の一部の壁が壊れた。不倫の興隆は文学が打ち立てた金字塔。素晴らしいじゃない?たかだかひとりふたりの物書きの妄想が世の中の自由度を増やしたんだから」(p.210)


理恵のこのセリフを「代理母」に置き換えたのが、作者のこの小説におけるテーマなのだろうな。

NHKで4月からドラマ化されるそうな。
http://journal.mycom.co.jp/news/2011/02/13/010/
村上春樹 雑文集/村上 春樹

¥1,470
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コラム、エッセイ、各種文学賞受賞時スピーチ、といったあらゆる村上春樹の未発表作をひとまとめにした本。あの、「エルサレム賞」受賞時のスピーチ「壁と卵」も掲載されています。
安西水丸さんと和田誠さんのイラストに透明プラカバーの装丁がステキ。


村上春樹の語る「物語」の力、について、いつも共感します。


「僕が小説を書くひとつの大きな目的は、物語というひとつの「生き物」を読者と共有し、その共有性を梃子にして、心と心とのあいだにパーソナルなトンネルを掘り抜くことにあるからです。あなたが誰であっても、年齢がいくつでも、どこにいても(東京にいても、ソウルにいても)、そんなことはぜんぜん問題ではありません。大事なのは、その僕が書いた物語を、あなたが「自分の物語」としてしっかりと抱きしめてくれるかどうか、ただそれだけなのです。(p.72)」



「誤解を恐れずにいえば、あらゆる宗教は基本的成り立ちにおいて物語であり、フィクションである。そして多くの局面において物語は―いわばホワイト・マジックとして―他には類を見ない治癒力を発揮する。それは我々が優れた小説を読むときにしばしば体験していることである。一冊の小説が、一行の言葉が、僕らの傷を癒し、魂を救ってくれる。しかし言うまでもなく、フィクションは常に現実と峻別されなくてはならない。(p.205)」



「生」に「物語」をつけることが、つけてしまうことこそが、ひとをひとたらしめているのではないかと思う。
それは個人的なものであったり、家族や地域に根付くものであったりする。
しかし人類の歴史それ自身が持ち育ててきた「物語」も私たちの「生」には脈々と流れていて、その物語を共有することが「生」を継続するのに必要なのではないかと思うのだ。大きな繋がりの中にいる安心感や安定を感じるのではないかと。たったひとりで無為な生を過ごしているのではないのだと。

他にも、ジャズや翻訳、他の作家について、などなど掲載されていて、読み応えある文章集です。