彼らに教わったとおり町を手得てから気をつけて右のほうを見ながら走っていると確かに斜め右に入っていく細い道のようなものがあった。地図から言ってもこれが自転車屋の言っていた「景色の良いルート」らしい。

しかし道と言っても幅2mほどの舗装もされていない道であり、日本ならこのまま農家の庭先にでもつながっていそうな道である。


こんなところを入っていってアンティラベに本当に戻れるのかかなり不安だ。

しばらく地図とその道を眺めて思案していると、丁度人が通りかかったので聞いてみた。

彼は英語がわからないようであったが、地図を指して

「トウリトウリバ?アンティラベ?」と行き先の地名を言うと、じっくり地図を見て「そうだ」という仕草をした。


地図を熱心に見ていたので、適当に答えたという様子でもなく、確かな情報に思えた。

彼を信じて何もなさそうなこの農道の道を進んでみることにした。

「ミサオトウラ(ありがとう)。ベルーマ(さようなら)」

と、覚えたてのマダガスカル語を使ってみると、さっきまで変なアジア人に声を掛けられてちょっと引いていた彼もにっこり笑い

「ベルーマ」と返してくれた。


やはりコミュニケーションは現地語に限る。

彼に手を振り、いざ。


しかし何も無い道だ。

両側は畑が広がるだけ。

いや、畑だったところ、と言ったほうが良さそうだ。今、使われているような雰囲気ではない。あとは、原っぱ。

遠くのほうに木の生えていない山。

人も通らない。車も通らない。


空気は乾燥していて、肺に染み入るような透明感が感じられる。

心持ち大きく深呼吸しながらペダルを漕いだ。


しばらくして家が何軒か見えてきた。

土壁で出来た長方形の2階建ての家。これがこの辺の一般的な家の形のようだ。

2階部分はベランダみたいなテラスになっておりそこに椅子やテーブルを置いて人々がくつろいでいる。

「マナオローナ(こんにちは)」

またもや覚えたてのマダガスカル語を使ってみた。


するとあちらこちらから返事が返ってきた。

子供も何人か家から飛び出してきた。

現地語で話しかけると子供にかなりウケが良いようだ。


家並みはそこを過ぎるとそれからしばらく見当たらなくひたすら同じような道が続いた。

景色が良いといえば良いのだが、単調と言えばちょっと単調。

緑の多い日本から見るとこの緑の無さがどうしても不気味に見える。たまに人とすれ違うが、人も滅多に歩いていない。


いつからか、自転車に乗った女の子と一緒になった。

彼女は少しだけ英語が話せた。


片言の英語で話したところによると、彼女の家はアンティラベの方向にあるそうで、途中まで一緒にいってくれることになった。どっちみち一本道なので、一緒に行くしかないのだが。


彼女はカタコトなのだが、非常に丁寧に間違えないように英語を話そうとするので一つの文章を話すのに3分くらい掛かっていて、私達の会話は非常にゆっくりと進んだ。

彼女によるとアンティラベへの道は確かにこれで大丈夫。

ここは滅多に外国人など通らない道なんだそうだ。

景色が良いのはこの先の彼女の家の傍のあたりだという。


そんなことを話しながら進んでいると人気が無かった道に急に人が多くなってきた。

自転車で走れないほどだ。

仕方が無いので自転車を降りた。


なにやら人々が行列を作っている。

先頭は太鼓やシンバルのようなものを持っている。

笛のような音色も聞こえてくる。どうもお祭りのようだ。

真ん中辺りの人々は神輿のような物を担いでおり、その周りを20人くらいの人が囲み行列を作っている。

一体何のお祭りなんだろう?