今でこそ下北沢に住んで、トレンディという言葉をほしいままにしている僕だが、当時はその2つ隣の駅『東松原』という駅に住んでいた。
渋谷からだと、確か6駅くらいであっただろうか。
距離にするとおよそ5キロくらい。
当然渋谷から歩いて帰るには、結構大変である。
僕がこれから書く物語は当然すべて実話である。
その日は晴れていた。
3月初めくらいで、春の空気が漂いつつありながらも、まだまだ寒さに気を許せないような時期で、朝出掛ける時には、ダウンジャケットが手放せない時期であった。
いつものように朝起きて、普段と何ひとつ変わらない日常の中、出かける準備をして、家を出て、車を運転していた。
僕はこう見えても、朝起きるのは意外と得意で、それでいて朝からなんでも食べられる。
その日は銀座に用事があって、その前にどこかで朝メシをすませて、と考えていた。
しばらく車を走らせていると、吉野家の看板が見えた。
おし、今日は朝から牛丼でも食べよかな。
当然朝の定食メニューなど、目もくれない。
目玉焼き?
納豆?
ノンノンノン。
肉ですよ。
そう思って車を吉野家の前に停めて、向かおうと思ったその時、気付いてしまった。
財布が、、、、、、、、
ナイ。
OH!NO!
慌てて車中を探すものの、当然見つからない。
だがしかし!
すぐに思い出した。
僕は財布を2つ持っているのだ。
1つはカードやら、お札やら入っている、いわゆる普通の財布だ。
そしてもう1つは小銭専用の財布。
普通の財布は持ち歩くには大きすぎて、何かと面倒なので、平べったくて薄い、小銭入れを常備しているのだ。
当然財布を取りに戻る時間などないので、望みはその小銭入れに託された。
意を決して開けてみると、、、、
920円入っていた。
そう。
この920円で朝食、昼食をまかなわねばならないのだ。
しかし僕の胃袋はもう牛丼にガッチリ掴まれていた。
まあ昼食はちょっと節約して、菓子パンとかで我慢するか、と自分に言い聞かせて吉野家に入った。
そこで僕の定番メニュー、ナミタマゴミソシルを注文する。
締めて480円。
ということは、残り440円である。
まあ贅沢こそできないが、菓子パンの2つくらいは問題なく買えるお金だ。
食べ終わり、何も考えずにまた車を走らせて、銀座に向かう。
そして銀座について、有料パーキングに停めて、初めて気づく。
あっ
駐車場代。
。。。。。。
やってしまった。
と言っても、1200円打ち止めの駐車場なので、牛丼に罪はない。
いやどっちにしても牛丼には罪はないか。
ここで先程も書いたが、家に帰ってお金を持ってくる時間はない。
だが、1200円もない。
残された方法は?
そう。
電車である。
そうすると必然的に車を1日駐車場に置いていかなければならないが、そこはさほど問題なく、次の日に取りに行けばいいのだ。
僕は電車で帰り、財布を次の日に持って電車で銀座に向かい、次の日は車で帰るという選択しかなかった。
幸い駐車場は24時間1200円だったし、次の日も銀座に行く予定だったので、何も問題ない。
そして電車なら多少の小銭でなんとかなりそうだ。
そう自分に言い聞かせ、車から降りて用事のある場所へと向かう。
そして昼食の時間を迎える。
わかっていたことだが、相当腹ペコだ。
この時点で牛丼を食べたことを激しく後悔する。
いや何故牛丼だけにとどまらず、タマゴと味噌汁までつけてしまったのか。
当然牛丼に罪はない。
そしてタマゴにも、味噌汁にもない。
あるとすれば、後先考えずに食の欲望に負けてしまった俺だ。
そんな後悔と、自己嫌悪にかられた昼下がり。
(なんかラップっぽい。笑)
おさらいをしよう。
所持金920円
からの罪深い牛丼、畏れ多いタマゴ、背徳感ある味噌汁で480円。
なので現在の所持金は440円である。
カードは何もない。
スイカも。
パスモも。
ここで初めて真剣に考える。(大分遅い)
440円で一体僕は何ができるんだろう。。
晴天の中、芝生の上に寝転んで考えたい疑問だ。
要約すると話は簡単なことだ。
腹ペコだが金がない。
それだけだ。
まず最初に考えなければいけないのは、帰りの電車賃である。
そしてその電車賃と所持金との差額が、自分が使える金額となる。
調べてみると、帰りの電車賃は、、、、
320円。
なるほどなるほど。
まあ予想通りのラインだ。
そうすると、440円の所持金から、320円の電車賃を引くと、
120円。
考えて欲しい。
あなたならこの120円で何を買うだろう。
そしてこの時僕は何を買ったのだろう。
腹ペコの身体で僕はコンビニに飛び込んだ。
つづく。