一時期ちょっと勢いを付けてライトノベルの新巻を読みかけたかと思うと、「それより学術書を読まないと」という気になる。これはもう完全に気分次第です。それはそうと、今回はこの漫画を取り上げさせていただきます。深海魚のアンコさん(1) (メテオCOMICS)(2013/09/12)犬犬商品詳細を見る深海魚のアンコさん(2) (メテオCOMICS)(2014/03/12)犬犬商品詳細を見る深海魚のアンコさん(3) (メテオCOMICS)(2014/10/11)犬犬商品詳細を見る本作の舞台は、人魚が普通に存在している世界で、中でも人魚の受け入れが盛んな街。伝統的な人魚は魚の種類まで特定してはいませんが、本作の人魚はちゃんと魚の種類が特定されていて、実に様々な種類がいます。外見的には、地上で生活する際には下半身を人間の足にしているので人間とほとんど変わりませんが、頭にひれがあるのですぐに人魚と分かります。主人公はチョウチンアンコウの人魚である堤鮟子(つつみ あんこ)。 (犬犬『深海魚のアンコさん 1』、フレックスコミックス、2013、p.7)ちなみに、人魚にとって尾びれを見たがるのはセクハラである模様。まあ下半身であることを思えば……?ただそれだけでなく、アンコにはコンプレックスもあります。まあ確かに、人魚の美しいイメージと違って、アンコウにあまり美しいイメージはありません。 (同書、p.16)しかも深海魚の人魚はレアらしく、人魚世界の雑誌でさえ、深海魚に対応していることはほとんどないとか……。さて、本作の特徴的な設定として、外見や能力ばかりか性格にまで魚の生態が反映されていることがあります。ベタ(闘魚)の人魚、鈴木闘魚(すずき とうな)は好戦的だったり、ダツの人魚は光に寄せられて突っ込んできたり―― (同書、p.9)はたまたこんな場面も。 (同書、pp.84-85)この意味で、本作は人魚という伝統的な寓話的存在に則りつつも、むしろ魚の擬人化に近いところがあります。もちろん、全てのキャラ付けが魚の生態から決まるわけではなく、独自のキャラ付けや意外な方向での可愛さを見せることもありますが。レギュラーはアンコとその友達で人魚マニアの若狭乙見(わかさ おとみ)(本人は人間)、それに闘魚と1巻途中で登場する転校生でアカメフグの人魚・福田紅眼(ふくだ あかめ)。他の人魚は基本的に1話ごとのゲストキャラです(再登場もありますが)。微妙にマニアックな知識も交えて萌えとコメディに用いるという内容ですが、3巻の間ネタが続くのを見て、改めて生物多様性というものを実感させられます。2巻では夏の水着回で海ではなく山にいって川で泳ぎ、川魚の人魚と出会うという、ちょっと捻りの利いた(?)展開もありました。それにしても、人魚にとっては下半身であり見たがるのはセクハラであっても、魚の尾びれにエロスがあるだろうか……と思いますが(ベタ子は流石に綺麗でしたが、むしろアンコのような美しくもない魚が目立ちますし)、慣れてくると何だか分かるようになってきます。実は表紙も、背景と人魚の下半身だけざらざらした質感にするなど凝っていますし、触って楽しめます。3巻には本作連載前に作者が描いた、脱皮する少女(正体不明)が登場する読み切り(本作と直接の関係は無し)が併録されていますが、脱皮に関するそこそこ詳細な記述とそれが独特のエロス(のようなもの)に繋がるのを見て、生物学知識にはこんな使い方もあるのかとある種感心します。なお、作中には女の人魚しか登場していません。チョウチンアンコウのオスは極端に小さくメスと融合することもちゃんと作中で触れられているのですが、さてアンコの父親は……?
オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
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