あたしは普通だ。


本当それしか言うことがない。



「えっ、しょうちゃん放課後いかないの?」



そうあたしに言ってきたのはクラスメートの優衣(ゆい)だった。


「バイトはいってんだよ。優衣たちだけで行ってきて…なっ?」



あたしはそれだけ言うと教室をでた。


お昼休み。毎日あることだけれど俺にとっては大切な時間だった。



行く先は音楽室。


トビラを開けるとそこにはいつものようにギターを弾いている少女の姿があった。



「あっしょう先輩!」


叶未(かなみ)という少女はあたしを見るとそう言った。



あたしの名前は神谷太地(かみやたいち)っていう名前で、女だ。

心の中では自分のことをあたしって言ってる。


そうでもしないと自分が女っていうのを完全に忘れてしまいそうだったから。

心の中ではあたしだけど、みんなの前では俺。

それで、なぜあたしが「しょう」て呼ばれているか。



それは単純に背が小さいからだ。



だから小さいで、しょう。


「カミ…」



カミは少しだけ微笑むと、


「まぁ、冗談だけどな。」



「えっ」




「じょーだん」



カミはあたしをおいてスタスタ歩いて行ってしまった。


「冗談って…」




あたしは、隠しきれなかった。




カミに言われたとき、あたしは絶対ドキドキした。






あんなこと言われて、冗談なんかでおわらせない。




「カミー!!」







カミはすこしびっくりしたようすでこっちを向いた。





「なんだよ?」




不思議と緊張はしなかった。


するヒマもなかったんかも。




「あたしを好きな人にしてよ!」




それだけは、いいたかったんだ。







カミはあたしを見つめたまま、「うん。」といってまた歩いていってしまった。




うんって?どういうことなんだろう。


付き合ってるのかわからない。





「ねぇ、さっきカミと何話してたの??」




結菜はあたしとカミが話してたのが気になったみたい。

そりゃそうか。




「うん。そんなにたいしたことじゃないけど。」





たいしたことないかぁ。


あたしはカミをたぶんだけど好きだ。



それって、カミと両思いなんだよね?




あたしは家についたあと考えた。




小学生の心なりに。



「カミありがとね。」


ピノを食べ終わったあたしと結菜はカミにむかって言った。



「うん。」




カミはそういうと「さみぃな」といって座り込んだ。



「そんなさむい?」



アイスを食べたあたしと結菜でさえもそんなに寒さがかんじないのにカミはなぜだか寒いらしい。



「じゃあ、走るか。」



あたしはそういうとカミの腕をひっぱり結菜に言った。



「今から三人で鬼ごっこやるかぁ。」




「えっ」



カミと結菜は声をあわせてそういうと、少し考えこんでから二人とも「いいよっ」と言った。



あたしもカミも結菜も陸上の選手に選ばれているので足はなかなか速い。




「うしっやるか。」




カミの声とともに小学生の遊びらしい、鬼ごっこは開始された。








「あたし、何回鬼になった?」


あたしは遠くにいるカミと結菜に言うとその場にすわりこんだ。



カミがあたしに近づいてきて言った。



「足、おせーなぁ。しょうがねぇからもう終わりにするかぁ。」




カミは笑いながらそう言うとあたしの腕をひっぱりあげた。





自分たちの自転車がとめてあるところに向かう途中、あたしはカミになにげなく聞いた。





「カミって好きな人とかいるの?」




なにげなく聞いただけ。


本当にそれだけだった。



「なんで?」



「別に…何となく。」





カミはすこし笑うと、




「麻衣ちゃんのこと好きになってほしいの?」





時がとまったきがした。



カミがあたしを好きになってほしいだって!?





あたし、そんなつもりで言ったんじゃない。