長い間、ブログの更新を停止してきましたが、
タイトルのテーマについて考えるところがあり、更新しました。
5月11日付けの朝日新聞に、
「公立中高一貫校 難関化を検証へ」という見出しの記事が
掲載されました。
サブ見出しは、「小学校の勉強だけでは入れない」
「選抜方式に焦点」
ポイントを引用すると以下のような内容です。
〔全校に広がる公立の中高一貫校をめぐり、文部科学省は入学選抜のあり方などについて今月にも議論を始めることを決めた。「難関化して小学校の勉強では合格できないところがあり、公教育として問題だ」との批判を受けたものだ。文科省は現状をくわしく検証する考えだが、保護者には、「私立のように学費をかけないで大学進学に期待がもてる」と受検熱が高い。見直し論議は、広く関心を呼びそうだ〕
この記事で、あれっと思ったのは、
議論を始めるきっかけについて、
〔規制改革会議の動きだ。「私立への民業圧迫にならないか」といった観点から公立一貫校の問題を議論。昨年末、「塾通いなどが必要で、高額所得者が有利になる」「公立が担うべき役割を明確化すべきだ」と批判する答申をまとめた〕とあった点です。
政府の規制改革会議は、不必要な公的規制をなくし、
経済を活性化させようという趣旨で設けられていますが、
財界人がトップになり、
しばしば一部の経済人の意見を
発表する場のようになっています。
経営的な視点から、派遣労働への規制撤廃を
主張し続けてきたのも、規制改革会議です。
率直に申し上げれば、
この答申(平成20年12月22日)についても、
不自然さを感じました。
公教育の改革を民業圧迫と捉える視点そのものに、
違和感を覚えました。
公立中高一貫校の受験者は、
学校数の増加もあって年々増え続け、
今年は、首都圏だけでも1万6000人が
受験したとされています。
確かに、公立中高一貫校の開校が中学受験の裾野を広げ、
その高倍率は
1つの社会現象のようになっていることは事実だと思います。
しかし、このことは、
これまでの公教育に飽き足らない人たちのニーズを掬い上げた、
あるいは、それだけのニーズがあるということの
裏返しでもあるのではないでしょうか。
一連の公教育の改革は、
学級崩壊、落ちこぼれや吹きこぼれ、
学力低下といった問題を招いたことを反省し、
公教育でも多様性をもたせて
対応していこうという試みであったと思います。
東京都を例にとれば、
進学実績などの面で公立高校が全盛期だった頃、
過熱する受験を緩和するとか、
学校間格差をなくそうといった平等主義的な考え方から、
学校群制や学区制が導入され、
都立高校の衰退といわれる現象が起きました。
現在は、進学指導重点校や公立中高一貫校、単位制など、
多様なメニューを用意して公教育の復権を図ろうとしています。
この公教育改革は、
一定の成果を挙げつつあるのではないかと、
私自身は受け止めています。
規制改革会議が、答申で、
▽地域の「トップ校」の高校には、中学を設けない、
▽志願者が3倍程度を超えたら、
選抜の過程で必ず抽選を採り入れるといった
提案をする背景には、
こうした公教育再建を目指す動きを、
なんとか止めたいとする勢力が
あるのではないかと思ってしまうのはうがちすぎでしょうか。
この答申では、以下の点についても触れられています。
(規制改革推進のための第3次答申から一部抜粋)
○ 公立中高一貫校による原価をまかなう授業料等の徴収
公私共に生徒一人当たり同額の公的助成金を受けた上で、人件費等の直接間接
の経費を私学と同等にまかなう授業料等を、中学校、高校ともに必ず徴収すると
いう制度をとった場合には、競争条件が同等となるので上記ア-カは適用されな
くてもよい。しかし現行制度のように公立中学校の授業料の無償原則がある場合、
又は仮に公立中学校の授業料を徴収する場合であっても私学と同等に経費を賄う
だけの授業料が中学校、高校ともに完全に徴収されるのではない場合は、公立に
よるクリームスキミング及び官による民業の圧迫となる以上、上記ア-カは適用
されるべきである。
要は、公立中高一貫校も私立と同等の授業料を徴収すれば、
自由にやっても構いませんという趣旨です。
何とも高圧的な答申です。
この答申は、一人の委員の意向が強く反映されて
まとめられたという指摘もありますが、
教育の理念やあり方に他する考察がなく、
民業圧迫という観点しかないのは残念です。
適性検査の問題も、
論議の対象になっているようですが、
親としての経験から言えば、
公立中高一貫校の適性検査の問題は、
テクニックや記憶力に頼らない問題がほとんどだと思いました。
私立受験の場合は、難関校であればあるほど、
算数の問題では、相当な訓練を積み、
テクニックに習熟する必要がありますし、、
社会の歴史や地理の問題でも、
相当な量の知識を習得する必要があると思います。
やはり、絶対的な勉強量をこなさないと
太刀打ちできないのが実情です。
公立中高一貫校の大半の適性検査は、
そうした問題とは、明らかに一線を画しています。
自らの経験に基づく考察力や思考力、
文章表現力を問うような問題です。
身の回りで問題になったり起こっていることに、
関心をもち考えることが、
試験対策になるような問題です。
ただ、私立受験のような勉強量は必要ないにしても、
何の準備もしないで受けても
大丈夫ということではありません。
どんな試験であっても、
一定の対策や勉強は必要だと思います。
議論をするのは大いに結構です。
教育問題は、ごく身近な問題であるだけに、
それぞれの立場から、様々な意見があるでしょう。
今回の公立中高一貫校の検証問題。
答申をまとめた規制改革会議は、
国会で廃止の是非も議論されています。
先の答申が制度の見直しに繋がるのか
繋がらないのかも定かではありませんが、
一部の人たちの利益だけを代弁するような
論議にならないよう、願っています。
参考になる情報があります。
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