大分県大分市屋山の八柱神社(やはしらじんじゃ)は、現在の宮中三殿の「神殿」にお祀りされる八柱の神々をお祀りする神社のひとつです。


豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-八柱神社①
八柱神社の神殿

豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-八柱神社④  豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-八柱神社③
八柱神社の神門と参道入口の鳥居


[所在地]大分県大分市大字屋山2281番地(地図

[御祭神]

 ・高皇産靈神(たかみむすひのかみ)

 ・神皇産靈神(かむみむすひのかみ)

 ・魂留産靈神(たまづめむすひのかみ)

 ・生産靈神(いくむすひのかみ)

 ・足産靈神(たるむすひのかみ)

 ・大宮比賣神(おほみやめのかみ)

 ・事代主神(ことしろぬしのかみ)

 ・御膳津神(みけつかみ)

 《金刀比羅社(相殿)》

 ・大物主神(おほものぬしのかみ)

 《稲荷神社(境内社)》

 ・保食大神(うけもちのかみ)【宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)

 ・猿田彦大神(さるたひこのおほかみ)


豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-八柱神社②
「八柱神社」の扁額

 八柱神社の御祭神は、「神祇官八神(じんぎかんはっしん)」・「宮中八神(きゅうちゅうはっしん)・「御巫八神(みかむなぎやはしらのかみ)」・「美保貴神(みほぎのかみ)」・「鎮魂八神(みたましづめやはしらのかみ)」などとよばれる八柱の神々で、現在は、宮中三殿(賢所・皇霊殿・神殿)のひとつ「神殿」にお祀りされている神々と同一です。


 『古語拾遺』にも…。


爰 仰從皇天祖之詔 建樹神籬 所謂 高皇産靈 神産靈 魂留産靈 生産靈 足産靈 大宮賣神 事代主神 御膳神 已上 今御巫所奉齋也

【爰(ここ)に皇天(あまつかみ)(ふたはしら)の祖(みおや)の詔(みことのり)に仰從(したが)ひ、樹(き)の神籬(ひもろぎ)を建(た)つ。所謂(いはゆる)高皇産靈(たかみむすひ)。神産靈(かむみむすひ)。魂留産靈(たまづめむすひ)。生産靈(いくむすひ)。足産靈(たるむすひ)。大宮賣神(おほみやめのかみ)。事代主神(ことしろぬしのかみ)。御膳神(みけつかみ)。已上、今(いま)の御巫(みかむなぎ)に齋(いはひ)(まつ)れるなり。】

~『古語拾遺』~


 さらに、日本書紀には…。


高皇産靈尊 因勅曰 吾則起樹天津神籬及天津磐境 當爲吾孫奉齋矣 汝天兒屋命 太玉命 宜持天津神籬 降於葦原中國 亦爲吾孫奉齋焉

【高皇産靈尊(たかみむすひのみこと)、因(よ)りて勅(みことのり)して曰(まをしし)く、「吾(あ)、則(すなは)ち天津神籬(あまつひもろき)(およ)び天津磐境(あまついはさか)を起(おこ)し樹(た)てて、當(まさ)に吾(あ)が孫(みま)の爲(ため)に齋(いは)ひ奉(まつ)らむ。汝(なれ)、天兒屋命(あめのこやねのみこと)、太玉命(ふとだまのみこと)は、宜(よろ)しく天津神籬(あまつひもろき)を持(たも)ちて、葦原中國(あしはらなかつくに)に降(ふ)りて、亦(また)(あ)が孫(みま)の爲(ため)に齋(いは)ひ奉(まつ)れ」。】

~『日本書紀 卷第二』~


 と、記されています。


 これによると、宮中三殿の「神殿」の八柱の神々がお祀りされたのは、「皇天二祖」。つまり、高皇産靈神神皇産靈神の神詔に従って「神籬」をたてられ、天兒屋命の子孫の中臣氏と太玉命の子孫の齋部氏【忌部氏】に祭事が継承されたのがはじまりのようです。


 八柱神社にお祀りされたのは、仁明天皇(にんみょうてんのう)【正良親王(まさらのみこ)/日本根子天璽豐聰慧尊(やまとねこあまつみしるしとよさとのみこと)】の御宇、承和11年(845年)9月に、坂上大宿禰田村麿(さかのうへのおほすくねたむらまろ)の子孫にあたる坂上大宿禰(さかのうへのおほすくね)によって創建され、「八柱宮(やはしらみや)」・「宮尾(みやを)」と呼ばれていたそうです。


さて、簡単に八柱の神々を紹介させていただきます。


高皇産靈神(たかみむすひのかみ)

 高御産巣日神とも記され、天と地が始まった時、高天原に成った神です。天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)・神皇産靈神とともに造化主宰の神で、天地の万物を生々化育する神、別天神(ことあまつかみ)の第2代の神です。皇親神漏岐命(すめむつかむろぎのみこと)ともいいます。


神皇産靈神(かむみむすひのかみ)

 神産巣日神とも記され、天と地が始まった時、高天原に成った神です。天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)・高皇産靈神とともに造化主宰の神で、天地間の万物を生々化育する神、別天神の第3代の神です。皇親神漏美命(すめむつかむろみのみこと)ともいいます。


生産靈神(いくむすひのかみ)

 葦の芽のように勢いよく芽生えて伸びていく、活動してやまない、生きて活動する霊魂を主宰する生成と発展の神、別天神第4代の神です。宇摩志阿斯訶備比古遲神(あしかびひこぢのかみ)の奇魂(くしみたま)と荒魂(あらみたま)です。


魂留産靈神(たまづめむすひのかみ)

 玉積産靈神とも記され、安定した精神、秀れた智、浮かれ往く魂を身体に鎮め留めることの霊魂を主宰する神、別天神第5代の神です。天之常立神(あめのとこたちのかみ)の幸魂(さきみたま)です。


足産靈神(たるむすひのかみ)
 不足することなくして豊かに充実・具足することの霊魂を主宰する神。豐雲野神(とよくもののかみ)の和魂(にぎみたま)です。豊かな実りを約束する肥えた、慈雨をもたらす雲の原野、満ち足りることの神です。


大宮比賣神(おほみやめのかみ)

 天宇受賣神(あめのうずめのかみ)【天之鈿女神】ともいいます。心が和楽して一切の憂いや苦悩がなくなるよう、霊魂を和やかにする神。


御膳津神(みけつかみ)

生育する食物を悉く大御食とし、日々の供えもの食べ物の神。


事代主神(ことしろぬしのかみ)

 美都齒八重事代主神(みつはやへことしろぬしのかみ)ともいいます。この世、あの世のこと、万事を知り尽くして、国土を安穏に治める境地に進む心境と、言葉の威力・言霊の神。


豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-八柱神社⑥  豊の散歩道 ~豊国を歩く~ Toyo no Sanpo-michi-八柱神社⑤
境内の鳥居と神殿横から

 天と地の万物を生成し育成する霊的なはたらき「むすひ(産霊)」の神々、「ことだま(言霊)」の神、「みけもの(食物)の神、その「めぐみ」・「つながり」に生かされている私たち…。また、その目に見えない「はたらき」に生かされている私たち…。八柱神社にお祀りされている神々の御神徳は計り知れないほど…。その御神徳に感謝。ここにお詣りすると遥か遠い宇宙のパワーをもいただけそうですね(笑)