toyohikobandoのブログ

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Wikipedia によるニセ旗作戦の意味は、海賊 が「 降伏 」の旗を掲げて 敵 を油断させ、逆に相手の船を 乗っ取る という行為。

しかし、最近のニセ旗作戦は、敵方の旗を付けて味方の軍や住人を攻撃しているケースで、主に西側と言われる勢力の方がこの作戦の実行を多く行っているように見える。

理由は簡単、力のある主要メディアは西側であり、人々は西側メディアの情報をより信ずる傾向にあるから、ニセ旗作戦は成功しやすいからだ。

 

7月27日にゴラン高原の村、マシュダル・シャムスにイランの支援を受けるヒズボラのミサイルが着弾し子供を含む12人の若者が死亡、イスラエル側はヒズボラに対する報復を予告、と主要メディアは一斉に報じている。そして、おまけのようにヒズボラはそれを否定していると。

多くのメディアの情報はこの程度だ。

 

マシュダル・シャムスの村は北に位置する。

 

9年前の写真だが、下のグランドが子供たちがサッカーをしていたグランドと思われる。

 

だから、西側に与する軍事勢力はニセ旗作戦をしやすい。

西側メディアと日本のメディアは、ヒズボラを説明するとき必ずイランの支援を受けた組織として説明する。悪者イラン=悪者ヒズボラでまず視聴者に対してイメージを植え付ける。だからやったのはヤツラだ、と。

 

ゴラン高原とは、第三次中東戦争1967年にイスラエルがシリアから奪った地域でかなりの広さ1,800 km2を持つ。そのシリアと接する狭い帯状のエリアに緩衝地帯として、国連PKOが割って入っている。日本の自衛隊もシリア内戦までは駐留していた。

例により、アメリカを除くすべての国・国連はイスラエルのゴラン高原占領を承認していない。

ゴランには当然シリア国籍の人々が住んでいたが、イスラエル侵略後、キリスト教徒、イスラム教徒、ドルーズ教徒を含む約12万7000人のシリア人(人口の95%)が国外に逃れ、追放され、過疎化した村々は壊滅させられた。残りの5%ということなのだろう、結束力の強いドルーズの人々は4つの村に居残りそのまま現在も住んでいる。その数25,000名。

イスラエルはドルーズの人々にもイスラエル国籍を与えようとしているが、多くは自らをシリア人と考えており、都合でイスラエル国籍を取得しているのは20%程度と推定されている。

イスラエルでは、非ユダヤ系イスラエル人に対する厳然たる差別、それも法律上で規定された明確な差別があり、好き好んでイスラエル国籍を取得する者はまずいない。

イスラエルの政策として、ゴランへのユダヤ人の入植か進められており、95%の土地に軍に守られた25,000人のユダヤ系イスラエル人が入植済みであり、今後も増えていく計画だ。

 

ドルーズとは、ドルーズ派とかドルーズ教などといわれるイスラム教シーア派系に属するグループを指している。今回改めて調べて分かったのだが、ドルーズ教徒の歴史・政治学者Pr. Rami Zeedanによると、ドルーズ教のオリジナルは1000前のエジプト生まれとか。

ドルーズ教の内容の多くはアラブの世界に共通するものだが、諸々の宗教教義を取り込んだのだろうか、輪廻転生を信ずるなど、他との比較では複雑で奇怪な宗教と思われている。また、ドルーズの両親から生まれたもののみがドルーズであり、他からの改宗は認められていない。つまり、ドルーズ同士の結束は強いということになる。

ドルーズ教徒は主に、レバノン・シリア・ヨルダン・イスラエルに住みその総数は100万人から200万人と大雑把に推定されている。

筆者、ドルーズ村の子供に感動的な世話を受けたことがある。その話を始めると長くなるのでそれは別の機会にする。

 

ヒズボラとは、シーア派のイランからの支援を受けたレバノン内の武装勢力の一派として、西側ではテロ組織に指定されるような扱いである。しかし、ヒズボラの実体はレバノンの国会を構成する政党の一つであり、彼らが持つ独自の軍事組織はレバノン軍をはるかに凌ぐと見られている。ヒズボラを正しく理解するにはレバノンという国家を理解する必要があるが、これは中東専門家にしても上級者編になるくらい複雑だ。

かつては「中東のパリ」と呼ばれるくらいの経済的繁栄を誇っていた世俗国家であったが、例によりイスラエルの仕掛ける戦争の影響を受け、特に1967年の第三次中東戦争の玉突きでパレスチナの人々がレバノンにも避難することから、イスラエルはレバノンを攻撃するようになり、そもそも各宗派間のバランスで成り立っていたモザイク国家は崩壊し、イスラエル・シリア・各宗派武装勢力が入り乱れ、1990年にようやく終了するレバノン内戦となったわけだ。筆者、1980年代半ばにレバノンに入ったが、国家としてのレバノンは全く存在していない状態で、ドルーズは主要な軍閥の一つであったが、ヒズボラの名は聞いたことはなかった。2022年の選挙におけるヒズボラの現在の議席数は、128議席中61議席。前回から10議席を失い過半数割れになっているが、いまだ最大勢力を誇る。

 

疑われるイスラエルによるニセ旗作戦

ゴラン高原、ドルーズ、そしてヒズボラの前提知識を持っていると、今回のドルーズ村の子供たちを殺傷したミサイルはどちら側が撃ち込んだか、が想像できるというものだ。

事件発生と同時にネタニヤフは「自国民を攻撃したのはヒズボラだ、報復する」と声高に叫ぶ。当然ヒズボラはそんなことはしていないと否定する。

この地の歴史と状況を知る者が、客観的に、論理的に考えて、ヒズボラがイスラエルに占領されイスラエルから差別を受けているドルーズの村を攻撃する、訳が無い。

ヒズボラにとってシリアは同盟軍であり自らの後ろ盾である。そして、ゴランのドルーズはシリア人でイスラエルに抵抗しているのだ。

そして、当のドルーズの村では宗教指導者たちが、報復の名のもとに戦争のエスカレーションを望まない、と抗議行動を起こしている。

 

今回の事件について、西側メディアからも聞こえてきたのはイスラエル軍の誤爆の可能性か、ということと明確には表現はしいないがニュアンス的に(と筆者には聞こえる)、イスラエルによるニセ旗作戦か?とも受け取とれるような報道だった。さすがの西側報道もイスラエルによるガザのジェノサイドに直面し、堪忍袋の緒が切れそうなのだろうか。