塾を開業した当初、私は実は、教えるつもりはなかったことは前にも書いた。バイトに支払う分がとてもかさむことに気がついたからだ。


 でも、その時点では、まさか算数や数学を教えるようになるなんて思っても見なかったのである。その理由は、とても簡単だ。数学が大嫌いだったからだ。


 高校2年のころ、数学の試験で28点を取った。もちろん赤点だった。でも、親切な学校だったので、追試をやってくれることになっていたのだが、どうせやっても無駄だろうと、何もやらずに臨んだ。


 追試を受けるのはそれが初めてだったのだが、なんと、前回と同じ試験問題だった。追試の常連なる人たちは、級友たちから模範解答なるものをもらい、回答を暗記してから受験するらしく、70・80を楽にとってパスしたらしいのだが・・・。


 私はというと、何もやらなかったのだから当たり前といえば当たり前なのだが、前回と同じ問題しか解けなかったため、今回も28点だけ取ることができた。


 「やっぱりね』、みたいに妙に嬉しかったのを覚えている。


 ところが、追試を実施した数学の先生は、残念ながらそうは思ってくれなかったようで、翌日職員室に呼び出される羽目になった。