【コラム】米政治を分断する二つの潮流 (THE WALL STREET JOURNAL)
Capital Journal―政治コラム
2011年 7月 26日 19:43 JST
http://jp.wsj.com/US/Politics/node_279786
国家財政機能の維持という最も基本的な任務さえ果たせないワシントンの現在の体たらくは確かにひどいかもしれない。だが、驚くべきことではない。
8カ月の警告期間を経へてもなお、赤字削減や債務上限引き上げ策に合意できずにいるのは、異常な出来事でも何でもない。むしろ、米政界における二大潮流が最高潮に達した論理的な結果だ。その潮流とは、政府の規模をめぐる、とめどない議論と、下院を中心とする議会内での行き過ぎた党派争いだ。
民主・共和両党の指導部は顔を合わせれば、今週末のように、いつも「相手を打ちのめす」必要性を叫んでばかりいる。これでは、同じ国家を運営するパートナーではなく、冷戦時代の敵国同士だ。
オバマ大統領は昨晩全米にテレビ中継された演説で、米国民にとっても、世界にとっても、いかに愚かしい状況であるかを率直に認め、「政府の分裂状態は米国民による投票の結果だが、政府の機能不全は違う」と述べた。
両党の相互不信は、21世紀の米国社会における政府の規模と役割について、両党の理念に大幅なかい離があることに端を発している。
民主党は、社会の高齢化が進み、経済の成熟度が増すにつれ、政府の役割は徐々に拡大すると考えている。さらに、高齢化に対処するとともに、中国をはじめ中央集権的国家が政府の権限を利用して優位を得ている世界的経済環境で争いながら社会契約を遂行する国家にとっては、政府の役割拡大は必然的かつ望ましい進化であるとみている。
一方、共和党はそれを、国家が従来の経済的より所を失い、本質的欠陥のある欧州的社会主義や中国的商業主義へと流されつつある姿と捉えている。彼らは、社会契約は経済の成熟化とともに抑制されるべきものであり、経済において政府が果たす役割は中国と競うために拡大されるべきではなく、むしろ米国モデルと中国モデルとを差別化するために縮小されるべきだと考えている。
こうしたかい離が、政府が経済に及ぼす影響力をめぐる議論のこうちゃくを招いている。共和党は、国内総生産(GDP)の19~20%の予算で十分と考えているが、民主党は22%程度は必要、としている。この違いはわずかに見えるかもしれないが、実際は今後数年で数千億ドルに相当し、それが両党を大きく分かつ原因となっている。
これら異なる見解の妥協点を見つけることは、理論上は決して不可能ではない。だが実質的には米政界における2つ目の大きな潮流によって、ほぼ不可能な状態になっている。すなわち、約30年におよぶ政治的な流れによって共和党は右に、民主党は左に傾き、議会内の中道派が弱体化し、ほとんど消滅してしまったことだ。
両政党が過去30年にイデオロギー的根拠に沿って体制作りを行った結果、最終的に両党の間には思想的に重なり合う部分が実質ゼロになってしまったのだ。一世代前の民主党には、主に南部出身者を中心とする健全な割合の保守派が存在していた。
それら保守派は、主に北東部出身者を中心とする共和党リベラル派とイデオロギー的に近かった。したがって、一部の共和党員より保守的な民主党員や、一部の民主党員よりリベラルな共和党員がいることもそう珍しいことではなかった。
それら議員が議会のイデオロギー的論争で中間に位置していたことで、たとえ両党の見解が極端に違っていても妥協点を見いだしやすい状況にあった。
だが今やそれら南部出身者を中心とする民主党保守派は共和党員になり、北東部出身者を中心とする共和党リベラル派は民主党員になるか、単にいなくなってしまった。
共和党のロナルド・レーガン大統領が下院の民主党保守派60人の支持を得て自らの予算案を通過させたり、民主党のリンドン・ジョンソン大統領が共和党リベラル派の賛成票を得て公民権法を成立させた日々が遠い昔に思える。
こうした傾向は下院で特に目立つ。複雑さを増す選挙区割りの結果、党派的・イデオロギー的な色分けが強まっているからだ。共和党も民主党もさまざまなデータや最新技術を駆使して、全米で保守派またはリベラル派中心の選挙区を編成しようとし、自党の議席確保に努めている。
そのおかげで、党の路線を順守する議員ほどいい思いをし、それを逸脱する議員ほどつらい仕打ちを受ける仕組みが出来上がってしまった。
上院では、かつてはそうした党派的線引きはあいまいだった。だが近年、上院は元下院議員が多くを占めるようになっており、そうした体質が上院にも持ち込まれつつある。
それは党派的分断を生み出すための仕組みといってもよく、その結果は今ご覧のとおりだ。
記者: Gerald F. Seib