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Tourguide Hiro!

皆さんこんにちは!通訳ガイド(英語)Hiroです。
日本が誇る歌舞伎・宝塚の人気は世界でますます高まっています。

ここでは歌舞伎をはじめとするさまざまな舞台の楽しさ、奥深さを感じるままにお伝えします!

 歌舞伎の特徴のひとつとして、上手から下手まで舞台の全てを明るく照らす場面がよく出てきます。全体が照らされているので、登場する人物一人ひとりが実に良く見えます。幕が開いて始めの部分では江戸時代にきっといたであろう通りがかりの町人や商人、仲居さんなどなど、一瞬にして江戸時代にタイムスリップさせてくれる雰囲気を醸し出す役者が舞台に立ちます。そして、しばらくして主人公が颯爽と、ときにはそっと登場します。でも、はじめの場面から主人公の登場、そして最後まで、特定の役者にスポットライトが当たるのを意識することはありません。背景の風景・建物と役者の演技が一体となって、観客としてはきれいな絵をずっと眺めているような気分にさせてくれます。
 それでいて、主人公ははっきりとそれがお芝居の中心人物であると観客は認識できるのです。それは主人公の役者のもつ風貌、芸域の広さであり、見得をはじめとした長年培われてきた動きの工夫によるものと言えましょう。そして、まわりで支える歌舞伎役者の、主人公を引き立てる演技、ふるまいがさらに主人公に華やかさをもたらします。ここではスポットライトがなくてもお芝居が成立しています。これもやはり江戸時代照明がなかったころからの創意工夫の賜物です。ここに歌舞伎のすごさを感じています。
 宝塚などの演劇では、これとは対照的にスポットライトがとても大切な役目を果たします。主役に強烈な光を浴びせることで、誰がこのお芝居の主人公かを明確に観客に説明します。際立つ美しさ、壮大さ、と表現する手段としてなくてはならないものです。歌舞伎でも、江戸時代中期から明治時代以降最近の作品にはこのライトを積極的に活用しています。でも、無くても観客を十分に魅了します。これは、ひとつには歌舞伎には絵面の美しさがあるからではないでしょうか。スポットライトを使うにしても一枚の絵としてその華麗さ、壮絶さ、柔らかさをお客様の心の中に印象づけるのが歌舞伎のもつ力だと思います。
 明るい舞台とは逆に、暗闇の場面もよく登場します。でも、この場合でも歌舞伎ではちょっと照明を暗くするだけで演技が進んでいきます。もちろん、本当に全体の照明を消して暗闇を表現することもあります。暗闇もひとつの絵面の美しさなのです。歌舞伎には「だんまり」という演技の手法があります。本当は暗く何も見えていない設定なのに、お客様には役者の演技、衣装が手に手をとるように楽しめます。お芝居の登場人物の関係もこの場面でよくわかるときもあります。暗闇をここまでお客様に楽しませるお芝居は、歌舞伎以外には無いのではないかと私は思ったりしています。 
 照明は明るく照らし出すだけではない、暗闇をも美しくさせる秘めた力をもっていることを歌舞伎は教えてくれます。皆様、ぜひ劇場に足をお運びください。
金丸座の櫓 
 歌舞伎の照明が好きです。お芝居が始まっても客席が明るいので、役者と同じ空間にいて一緒になって舞台の雰囲気を共有しているように感じるからです。距離を感じさせることもなく、役者が何となく身近な存在に思えてきます。(これは演目にもよります。演出によっては暗転した中でお芝居がはじまるものもあります。)特に、江戸時代初期から中ごろにかけて作られた演目を観てそう思います。これはなぜでしょうか。わたしはこんぴら歌舞伎を毎年開催している四国の金丸座でその答えを見つけたような気がします。

 金丸座は江戸時代の芝居小屋の雰囲気、造りをそのまま残すとても貴重な木造建築です。特に印象的だったのは、建物の左右から外の昼間の光が明るく客席と舞台を共に照らしていて、その雰囲気がとてもやわらかく感じられたことです。もともと江戸時代の芝居小屋には今のような照明はなく、役者と観客が同じ明るさのもとで小屋の中で同じ時間を共有していた、と考えると、今も客席を明るくする理由が見えてきたように感じます。伝統を受け継ぐということは、芸そのものと共にその雰囲気も大切に伝えていくことなのだと、金丸座に行って思うようになりました。

 さらに、雰囲気づくりに欠かせないのは客席のまわりにたくさん掲げられている赤い小さな提灯です。赤い色が視界に入るとなんだかワクワクさせるような高揚感につつまれます。特にお芝居のあいだ赤い提灯のあかりを消して最後の場面でパッと点灯させると、より一層華やかで目の覚めるような爽快な気分になります。

 歌舞伎も江戸時代後半や明治時代に入ると、「暗闇」「暗転」などがさらに効果的に使われるようになりました。電気を使った照明も使われ、より表現方法に幅をもたせることができるようになりました。次回はその中でもスポットライトの効果、そして暗闇の演出・工夫について考えてみたいと思います。

金丸座の入り口 
  

 劇場に行くとかならず筋書き(プログラム)を売っています。買おうか、買わないで舞台そのものを楽しもうかと迷うところですが、私はいつも手に入れます。歌舞伎の筋書きは表紙が美しい錦絵になっています。部屋に一冊だけ飾っても素敵ですし、何冊か集めてテーブルに並べてみるととても迫力があります。さらに、中身もとても充実しています。演目の解説、みどころ、あらすじがわかりやすく書かれていて、帰りの電車の中で読んでいると舞台の情景がひとつひとつよみがえってきます。後日振り返ってみるのも楽しみです。観劇のおみやげとしても最適です。

 あと、通訳ガイドとして英語で歌舞伎を説明するときにとても役立つのが新橋演舞場の筋書きです。英語版のあらすじが入っています。いつもひととおり読んだあと、音読もしてみたりと英語の学習に大いに利用しています。使える表現をどんどんピックアップできます。

 また、筋書きに「今月の出演俳優」のページがあります。若い俳優は1,2年の間に写真が変わっていることがよくあります。成長の過程がよくわかって面白いです。そして、屋号も掲載されていますので何回か読むうちに覚えられるようになります。3階席からの大向こうが投げかける屋号があらかじめわかると歌舞伎の見方に変化がつくかも知れません。

 筋書きの最初の方のページは初日から中日(なかび)までは鳥居派の絵看板が、中日以降は舞台の写真が掲載されます。観劇した日によってどちらを手にするかが決まりますが、どちらも素晴らしいです。

 歌舞伎の楽しみとして、筋書を取り上げてみました。ぜひご参考になさってください。



 歌舞伎を観るとき、どの席が良いでしょうか、とのご質問をよく受けます。
私は、どのお席でも魅力があって楽しめると常日頃から思っています。
その時々のお財布のご都合にあわせて、というときもありますし、
演目によって、たとえば宙乗りがあるときはあえて3階席の左側のお席をとったりします。本日はそれぞれの階のお座席の魅力についてお伝えいたします。

1階席は本当に良いお席です。まず、役者の顔、姿はもちろんのこと、場所によっては息遣いや滴り落ちる汗まで照明に反射して美しく見えるときがあります。なにより、舞台が大きく感じます。客席に入ると定式幕がとても立派に見え、ゲストとご一緒に観劇するときなど、きっと思い出に残る舞台を堪能できることでしょう。座席の足元も余裕があり、くつろげます。

2階席はやや上から舞台を見下ろすことができます。ここは役者の演技をしっかり捉えることができるのはもちろん、舞台の奥行きを感じることができます。1階席では折り重なってよく見えなかった役者もここでは立ち位置を含めてよく見えます。正面のほかに、サイドのお座席もぜひともおすすめです。先日観劇したときは右側のお席で、花道が鳥屋から七三まで、全てを見渡すことができました。京鹿子娘道成寺や白波五人男のように花道で居並びせりふを披露する役者を楽しんだり、勧進帳の飛び六法や助六の七三でのきっぱりとした見得など、演目によってもとても魅力を感じます。

3階席はさらに空高くから舞台を見下ろします。ほぼ、舞台の天井と同じぐらいの高さです。花道は全部見れるわけではありませんが、七三での役者の顔は見ることができます。(一部のお席を除きます。)大向こうという役者に応援の掛け声をかける人もいて、1、2階とは違った雰囲気を楽しめます。ただし、サイドのお席は舞台が一部見えづらくなる場所があり、観慣れている方でしたら舞台の右半分を観て、左半分は想像で補う、といったちょっと変わった楽しみ方もあります。新橋演舞場は歌舞伎座と違って一幕見席がなかったり3階席そのものが少ないので、チケットがとりづらい面もあります。何回も歌舞伎を観る方にとってはたいへんありがたいお席です。

 ぜひいろいろなお席を体験して、自分にとっての魅力ある舞台を見つけていただければと願っております。きっと新たな発見があることでしょう。


建替え前の歌舞伎座3階席からの眺め 

 昨日は通訳ガイド仲間2人と一緒に新橋演舞場へ歌舞伎を観に行きました。
今回選んだ演目は「時今也桔梗旗揚」と「京鹿子娘道成寺」、
秀山祭九月大歌舞伎夜の部は緊張感あふれる時代物のお芝居と 華やかな舞踊が両方楽しめる魅力たっぷりの舞台でした。

 少し早めに演舞場近くの喫茶店に入り、開場までの間コーヒーを飲んでゆっくりとくつろぎながら歌舞伎のお話をさせていただきました。思えば通訳ガイド試験のために 軽い気持ちで「花道」を見学しようと思い歌舞伎座へ初めて足をふみいれたのが 平成18年11月の吉例顔見世歌舞伎でした。あれからもう6年が経とうと しています。そのときから夢中になって毎月必ず劇場に足を運び、そのたびにいただいた公演パンフレットを入れたファイルもいつの間にか分厚いものになっていました。何度も拝見したお芝居もだいぶ増えました。歌舞伎の楽しさ、醍醐味を自分で味わうだけでなく、そろそろ周りの人たちにもお伝えしていく時期にきたのかなとも思ったりしました。

 今回ご一緒した方は本当に熱心にお話を聴いてくださいました。とても熱心で志の高い方で、通訳ガイドでお客様をご案内する際もきっと熱意を込めたガイディングをして下さることでしょう。とても楽しみです。

 新橋演舞場の近くには料亭が軒を並べており、その一角でお弁当を売っていました。幕間にいただきましたが、味がほどよく染み込んでとてもおいしかったです。おすすめです。

 今回のお席は2階右側の舞台寄り。花道が鳥屋から七三まですべて見渡せました。舞台に本当に近く、娘道成寺の釣鐘はびっくりするほど大きく見えました。道成寺では花道がとても華やかでした。白拍子花子の登場する場面やつらね、そして今回は歌舞伎十八番の「押戻し」が入り、美しい歌舞伎の舞踊に加えて江戸荒事も堪能できるまたとない機会となりました。帰りは舞台の余韻を皆それぞれに味わいながら帰途につきました。本当に充実した一日でした。ありがとうございました。