「ほめられると能力が伸びる」などという話は昔から言われています。実はその話は本当だったのです。
この事実を上手く応用すれば、人を動かすことは難しくないのです。
 
 
・「ほめて能力を伸ばす」の科学的妥当性が証明された
 
2012年11月にアメリカの科学誌「プロスワン」に、日本の科学者グループが明らかにした実験結果の報告が掲載されました。
これは愛知県岡崎市にある自然科学研究機構生理学研究所のグループが、東大先端科学技術研究センターと共同で行ったもので、運動トレーニングを行った際に他人からほめられると「上手に」運動技能を取得できるということが、科学的に証明されたのです。
 
 
48人の成人を対象に行った実験は次のようなものです。まず「30秒間のうちにキーボードのキーをある順番でできるだけ速く叩く」という連続的な指の動かし方をトレーニングによって覚えてもらい、覚えた直後に被験者を次の3つのグループに分けて「ほめられ実験」を実施しました。
 
1.「評価者はあなたの成績を評価している」と自分が評価者からほめられるグループ
 
2.「評価者は他の人の成績を評価している」と他人が評価者からほめられるのを見せられるグループ
 
3.「これがあなたの成績です」と自分の成績をグラフで見せられるグループ
 
 
翌日、それぞれのグループに覚えたことを思い出して再度指を動かしてもらったところ、1のグループは練習より20%多く指運動できたのに対し、2と3のグループは14%の向上にとどまりました。
つまり、運動トレーニングの直後にほめられたことによって、その後の運動技能の習得が促されたのです。
 
つまりほめられたグループは翌日も好成績を記録したということです
 
研究担当者によると、この研究結果によって他人にほめられると脳の綿条体の動きが金銭的報酬を得たときに匹敵するほど活発に働くということが明らかになったといい、ほめるという行為は脳にとって非常に重要な「社会的報酬」だということがわかりました。
 
教育やリハビリテーションなどの現場で運動技能の記憶・習得をより「上手に」促すために、今後は運動トレーニングをした後に、ほめるという社会的報酬をしっかりと与えることがますます大切になっていくはずです。