読書感想文80 曽根圭介 鼻 | 恥辱とカタルシス

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作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

おお、80冊目だ。

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

はたと気づけば今年に入って80冊目の読書感想文になっておりましたよ。読んだねえ。今までやってたネットサーフィンもケータイゲームも個人売買も全部放り出して本を読んだ4か月間。私、「やりますよ」といったら止まらなくなるタイプなんですね。「飽きたから辞めますよ」とも突然言いますが、読書は辞めませんよ。今年いっぱい、いやいやずっと続けていきたい趣味です。と言うか勉強です。だってすべては作家になるための通過点。

 

単純計算すると、今年中に200冊という目標はクリアできそうです。元は「一年で100冊読む!」とか言ってたんだから倍だわな。なんなら300冊とか読めるのかな?書きながらだから、読んでばっかりというわけにもいかないのですが。

 

桜庭一樹さんはお忙しい今でも年間400冊本読んでるんですって。習う姿勢が素晴らしいですね。見習おう。習うって大事ね。今日の私は知らない世界を彷徨ってきたのよ。まだ抜け出せてない。読んだのは曽根圭介さんの短編集「鼻」。

 

ホラーの世界でした。うえーん、常識が通用しない世界って怖いよう!ルールもなんもないからこっちも心の準備ができないよう!

 

怖い短編集でしたが、引き込まれてあっという間に読了しちゃいました。収録作が

 

暴落

受難

 

となっております。

 

 

 

どの話も不条理でエグくて怖かったんです。ぐすぐす。なんか借りてきた猫みたいになってますが、ほんまに怖かったのよ。

 

だって「暴落」は18歳以上の成人はみんな個人を評価する「株式」が上場されちゃう世界なんです。「渋谷東子株」が上場されてて、トピックに「本ばかり読んでる専業主婦の渋谷東子氏、本に夢中でギョーザを焦がす!(実話)」とか流れて個人株が下落しちゃう。一定の額を下回ると、人として価値なしと判断され社会的に再起不可能になる。行きつく先でおかしなNPOに囲われ、臓器を抜かれちゃうんです。なんかつい最近も臓器を抜かれる話したよなあ。このいやーな話に因果応報が絡んでくるのが「暴落」。あー、げっそり来た。迫力の世界観。私株、一体現在いくらなのかしら……。想像するだに恐ろしいわ。

 

そして「受難」なんかほんとーに受難でしかないから!

 

仕事を辞めて送別会を開いてもらった主人公、飲み過ぎて記憶をなくし、目が覚めるとビルの谷間でダクトに手錠で繋がれています。街中だから逆に、呼べど叫べど誰も助けに来ない。周りでごんごん工事やってるんですね。

 

発見してくれたのは中学生男子、不思議系OL、自殺願望を持った紳士。みんな狂っちゃってるから、話はできるんだけど誰も助けてくれないのよー。一生懸命宥めてすかすのにみーんな聞く耳を持たない!この恐怖!お腹は空くし環境は劣悪だしくせえしきたねえし!結局主人公死んじゃうよ!うわーん基地外怖いー‼

 

最終的に「鼻」に至って恐怖はピークに。この作品は日本ホラー小説大賞短編部門受賞作なんですが。

 

「テング」という鼻が長い種族と「ブタ」と呼ばれる鼻の短い種族が混在する日本が舞台。ブタが高等民族、テングは下等民族だとされています。まるでナチスの粛清のように迫害されるテングたち。そんななか、テングであった妻を娶ったブタ医師が主人公として描かれています。

 

ブタ医師は、今は亡き妻と娘にそっくりなテングの母娘をかくまいます。母娘に亡き妻と娘の衣類を与え、何かあったら連絡するようにと名刺を渡す。なんと人権派のお医者さんでしょう。恐ろしい世の中ですが、テングの母娘が生き延びることができますように。そんなことを思いながら読み進めていきましたら。

 

別軸で自己臭恐怖症の刑事が出てくるのですね。「俺はくせえんじゃねえか」と常に考えていて、自分の近くでくんくん鼻を動かす者がいたらぶん殴っちゃうこれまた基地外です。ぶん殴るどころか半殺しです。この刑事が追っているのが幼女連続失踪事件。行きつくところにいたのが「自分を医者だと思い込んでいる変質者」。刑事が中学生だったころ、ぶん殴って鼻をナイフで削り落とした少年のなれの果てです。それが「ブタ医者」。

 

ブタ医者は通りすがりの中学生に鼻を削り取られてこれまた基地外になっちゃって、「テング」だの「ブタ」だのが生息する混沌の世界を創作していたんです。自分の鼻がなくなっちゃったもんだから、「鼻の長さで揉めてる世界」の住人になっちゃったのね。そいで失踪した幼女は、ブタ医者がテングからブタに鼻を形成手術するために入院させてると「思い込んでた」女の子達。もう死んでましてね。ついでに刑事の鼻も「ブタにしてあげるね、こうすれば君は生き残れるんだから」つってちょっきーん……!

 

 

 

はあ……参った。ブタ医者、妄想の中で医者なだけなので。現実には普通の人なので。形成手術とかじゃないんだもん。描写が怖すぎる。

 

叙述トリックを仕掛けたミステリーともとれますが、やっぱホラーやね。だって怖い。一般市民としては刑事が善人じゃない時点で怖いんですけど。自分が臭いんじゃないか→他人の鼻とっちゃおうってどういう思考回路やねん。でもこの非日常、奇想天外がすごいよねえ。だってこれは小説、ノンフィクションの世界なんだから。

 

なんでもやりたいようにやればいいんだ。善人のレジスタンスが狂人の妄想だと誰が思いますか。参りました。曽根圭介さん、やっぱり好きな作家さんです。私こういうギョッとするみたいなのがやっぱり好きなんだな。平和な作品もいいけれど、こういうびっくりが好き。自分でも書けるようになりたい。勉強させていただきました。

 

 

 

さあ、この後もミステリー。「ミステリーはあんまりなあ」とか言ってた1か月前の私に教えてやりたいわ。あんた1か月後にはミステリーしか読んでないよって。人生って一瞬先のことは分かんないもんですねえ。予定調和で生きてないから余計やな。

 

次は道尾秀介さん。好き好き。楽しみです。というわけで。

 

おやすみなさいー!