読書感想文47 村田沙耶香 ギンイロノウタ | 恥辱とカタルシス

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

あー、げっそり……。

 

こんばんは、渋谷です。




村田沙耶香さんの「ギンイロノウタ」を読みましたよ。中編2篇を収録したこの作品、収録作は「ひかりのあしおと」と「ギンイロノウタ」となっております。「ギンイロノウタ」は野間文芸新人賞受賞作です。


両方若い女の子が主人公。両方とも主人公は病んでいて性についてこじれている。こじらせものに抵抗がない私ですが、この本はちょっとヤバかった……。ヤバかったというか、はっきり言ってついて行けなかったです。


「コンビニ人間」が面白かった村田沙耶香さんですが、あれはだいぶマイルドだったんだなあ。作家仲間から「クレイジー沙耶香」と呼ばれてらっしゃるそうなんですが、納得。この作家さん、ちょっと変わっとるわー……。




「ひかりのあしおと」は、子供の頃「光る人型」に公衆トイレに連れ込まれ、謎の呪文を刷り込まれちゃった女の子、誉ちゃんが主人公です。この子はそれ以来光が怖くなっちゃって、大学の教室でも蛍光灯から遠い席ばっかり探してます。いつ光人間が襲ってくるかわからないから。挙動不審で周りからキモがられる女の子。でも彼氏は切れず、常にセックスの相手には事欠きません。


誉ちゃんは恋愛したいんじゃなくて、セックスしたいのね。その間は光る人型から逃れられるから。だからまあセフレですわね。でもそのセックスも暗くて気持ち悪い。どうやって早いとこ服を汚さず射精させるかばっか考えている。 


もう基本から病んでる子なのでやってることも意味不明です。誉ちゃんのお母さんは可愛らしいまるで少女のような女性で、誉ちゃんにも夫にも甘えまくります。でもなんか影ではお母さんも病んでいる。その病み方に理由がないから、気持ち悪いんだよなあ。


しまいにはなんだか分からん刃傷沙汰を起こす誉ちゃん。彼女は一体何を求めているんだ。欲しがっているものが分からない。だから、ひたすら気持ち悪かったです。これはホラーと言っていいんじゃないかと思います。




「ギンイロノウタ」はもっと気持ち悪かった。名古屋大の女の子が、宗教の勧誘のおばさんを殺しちゃった事件あったやん?あそこに至るまでの心情を綴ったような作品。


主人公の有里ちゃんは産まれたときから卑屈な女の子。神経質で高圧的なお母さんに育てられはしましたが、まあどこにだっている程度の高圧ぶりです。母親というのは怒るもんです。いらいらする時だってあるよ。母親だって人間なんだよ。


ですが卑屈っ子有里ちゃんは幼稚園児にして妙な具合にねじれます。魔女っ子アニメの中で、「まいっちんぐマチコ先生」的なシチュエーションを見ちゃって、「そっか、大人になって身体を晒せば男の人が注目してくれるんだ!」と思っちゃう。


もー変やって。チラシから男性モデルの目元だけ切り抜いて、押入れの天井に貼りまくる。その押入れの中で裸になって自慰にふける子供。……キモい……キツイ。なんか私の嫌なシチュエーションです。


そのまま中学生になって、自己肯定感を高めるために誘ってきた先輩とロストバージンしちゃおうとするんですが、うまくいかない。自分はセックスさえできない不良品なのかとがっくりきちゃう。そんな時に担任になった熱血教師に恨みを抱き、デスノートをつくって教師を「あーやって殺すこーやって殺す」と書き連ねる。最後には暴れる引きこもりみたいになって、殺意を道行く人にぶちまけ始める卑屈っ子有里ちゃん。


なんかね、とにかく不快なお話でした。逆の意味で私の琴線に触れる。そもそも、村田さんの描く主人公って、理由もなく病んでるんですよね。ふんわり理由らしきものは提示されますが、「その程度でその思考になる?」って疑問に思う。多分生まれつきの病み人間なんだろうなって。


まあ生まれつき病んでる人も世の中には多数おられるんでしょう。病みに理由が必要な訳でもない。その「理由なき狂気」みたいなのがめちゃ怖かった。あと、「私には理解できない」っていうのが不快だった。


道を歩いてたら知らないおっさんがパンツ一丁でデカいパグをボーリング球みたいに転がしてたとしましょう。……怖いですよね。不快ですよね。それに近い恐怖。あー、疲れた。




ちなみにこんな怖いの書いてるのに、村田沙耶香さんってお父さん裁判官で、家庭はちゃんとしてて家族の仲がすごくいいんだって。絶対変な親御さんやと思ったのに(失礼)。


お父さんとお母さんは仲良しで、お兄さんもいて大人になってからも4人でレストランに食事に行ったりするんだって。……そんな家庭環境で育って、なんでこんな話をかけるような作家さんが生み出されるんだろう。


あ、もしかして、「生まれつきの病み人間」……?いや、そんな馬鹿な。村田さんはエンタメとしてこういう作品を書いてるんだ。誉ちゃんや有里ちゃんが村田さんの投影とは限らない。限らない……よね?


同じ暗い作品でも、田中慎弥さんとはまったく違う作風だった村田沙耶香さん。


……ちょっと、時間を置いてから別の著作も読んでみたいと思います。文章の美しさは特筆すべきものがあったから。でも、すぐには無理だ。


そんなわけで、ではまたっ!