渋谷です。
「ジュマンジ」はロビン・ウイリアムズとか子役の頃のキルスティン・ダンストが出てるやつですね。古い映画ですが楽しめました。「シング」はピクサーだかなんだかのアニメ。動物オールスターの映画で、コアラの主人公の声を内村光良さんが吹き替えていました。これが、面白かった。
こーいっちゃなんなんですが、私映画ってあんまし好きじゃないんですよね。映画館なんて特に嫌。「2時間座ってそこから動くな!」って言われてるみたいで嫌。ドラマも「来週もこの時間にテレビの前に座っとけ!」って言われてるみたい。まあレンタルDVDなんかは途中で止めれるし、ドラマも録画しときゃいいんですけどね。
でもなんか嫌。なのにうちの夫は無類の映画好きドラマ好き。いつもは横目で流し見る程度にしか付き合ってやらないのですが、子供のために借りてきたこの2本は面白かった。
特に「シング」。夢は諦めちゃいけないんだなあと、とても素直に感動しました。やっぱり子供向けのものって、ストレートでいいなあ。
……そんなことを思いながら、今日読んだのは安壇美緒さんの「天龍院亜希子の日記」。小説すばる新人賞受賞作です。
小説すばるに応募しようとしてる私、そりゃ読まなきゃ。そう思って借りて読んでみて……、うーん、ちょっと思ってたのと、違うかな。
タイトルにもなっている「天龍院亜希子」という人は、作品中には登場しません。主人公譲の小学生時代の同級生で、大人になった譲はネット上で亜希子のブログを発見します。
譲は亜希子のハデな名前をからかって泣かせてしまった過去を、ずっと心の中に引きずってきました。なにごとにも無気力で、日々をなんとなく過ごしている譲。亜希子の「誰にも覗かれない井戸」のようなブログを覗き見ることが習慣になっていきます。
……ひたすらね、譲くんの日常を追っただけのお話なんです。人材派遣会社の正社員の譲くん。遠恋の彼女とは自然消滅しそうで、会社では産休後時短勤務の先輩への批難から面倒な立場に立たされている。でも譲くんはキレない。だからといって改革の旗も振らない。なんにもしない譲くん。
子供の頃憧れていた野球選手「マサオカ」が覚せい剤で捕まってしまう。仕事もうまくいかないし。なんだいもう。別に破れかぶれなんて激しい感情を炸裂させるわけでもないのに、譲くんは同期の巨乳ちゃんと何回かやっちゃいます。でも特に感慨もなく。それどころか巨乳ちゃんと浮気した直後に遠恋の彼女に電話ごしにプロポーズ。
「俺、真面目になんか全然考えてなかったんだけど、たった今うまくやれそうな気がしたんだ」みたいなよー分からんプロポーズだよ。……えええ、君、等身大にも程がないかい?
今の若い子ってこんなんなん?こんなで、女の子の方もオッケー出すんだから分かりゃせんよ。譲くんの結婚を知った巨乳ちゃんが暴れるのかと思いきやそれもない。なんなん、みんな解脱済み? 精神統一で感情の振れ幅ゼロ? サトリ世代、恐るべしですなあ……。
いやね、譲くんだって色々と苦悩は抱いているんですよ。いるんだけど、なんか「必死さ」が見えないんだよね。それが普通なのかな。巨乳ちゃんの方はもうちょっと人間らしいんだけど。遠恋だった彼女もね。譲くん、彼の一人称で書かれた小説なのに、最後まで何考えてんだかよく分かんない子だった。
遠恋の彼女のお父さんが長く先生をしておられた方で、その人の言葉は重みがあって良かったんですがね。
「君がマサオカを信じることで、自分が知り得ない誰かからの善意を信じることができる」
譲くんは肩入れした派遣社員の男の子の裏切りにあい、意気消沈していたんですね。人間なんか信じちゃだめだなー、と思っていた譲くんを、きっとこの言葉は救ったんでしょう。
でもさ、もっと自力で切り拓けよ!自分でなんかしろよ!結婚の段取りも彼女任せだし!まったく、見てていらいらするったらありゃしない!
……でもね、私がこうして譲くんにいらつくのも、作者である安壇さんに格段の「読ませる力」があるからなんですね。文章が軽くてテンポがいい。会話なんてイキイキしていてとっても素敵。だから決して薄い本じゃないのにするする読んじゃう。この文章の魅力がなければ、退屈で途中で本を閉じてしまっていたかも知れません。
吸い込まれて、ほぼノンストップで読みました。この方の他の作品を読んでみたいなあ。もうちょっと事件が起きるやつ。
結局「天龍院亜希子」がなんだったのかもよく分からなかったし。タイトルの付け方は秀逸ですよね。「鬼龍院花子の生涯」みたいなすごいやつかと思ったんだよ。まさかこんな平和な本だとは……。
ほら、私事件大好きだから。次はもうちょっとごちゃごちゃしたやつ読もう。日常系、純文学系がお好きな方にはいい本かと思います。私には、優し過ぎたようです。
では、次の本いきますー!