「死んでしまう」とうろたえて口走る妻に、「病院行くぞ」と俺はクルマを出した。
前兆はいくらでもあった。
その以前から呼吸がやや荒かったし、その前後の数日間やたら水を吐き、おかしな鳴きかたをした。
恐らく、毛玉を吐きたいのだろうと俺たちは高をくくっていた。以前から何度かそうした行動を示したことがあったからだ。
水曜日から水を吐く量が異様に増えた。
木曜にはリビングに戻るとジュリーの嘔吐により、俺の携帯が水びたしになって壊れてしまった。夜、ヤマダ電機にスマホを買いに出かけた。
ヤマダ電機なんかじゃなくて動物病院に行くべきだったのだ。
本当に悔やんでも悔やみきれない。
「吐きたくてもはけないんだろうなあ」
「草でも買ってきたら?」
「そうする」
馬鹿か俺たちは。
金曜になり、ジュリーの吐く回数は減った。体調が好転したのだろう、と俺はそっとしておいた。それもよくなかったのだ。夕方になり、帰宅した妻が様子を見たときの光景は冒頭に記したとおりだ。
動物病院の駐車場は満車で、とりあえずジュリーと妻子を下ろしてクルマを停める場所を探し、遅れて動物病院へ入った。既にジュリーは診察を受けていた。女性の医師は深刻な顔つきをしていた。娘は泣きじゃくっていた。途中からだが、ジュリーの状態が相当に重症なのは会話の端々で理解した。あとで聞いたところ、放置していたら2,3時間もたずに絶命していたという。
あまりにも体温が下がりすぎたために検温できず、血圧が下がりすぎたために血液検査のための採血すら困難な有様だった。
「どうなるかわからないけどやってみるしかない」という意味のことを医者が言った。
この日からジュリーは入院することになった。
