恵子 物流が大事だから、そこがメインなんですか?さっき言った命のぬくもりという基準にずれている気がします。
諭吉 仕方がないんだよ。今のシステムはそうなんだから…。味噌蔵に住む微生物と呼ばれる菌たちが、常温の場合は動いて活発に活動をしているんだよ。そうすると温度が高ければ高いほど袋に入った味噌が膨張して破れるんだよ。そんな破れてくる元気な味噌がトラックに乗ってスーパーまで運ばれると想像してみて。
恵子 元気な味噌たちがトラックで運ばれてさらに元気になってしまうとしたら……。それはもう味噌飛び散り事件ですね。
諭吉 そうなんだ。味噌飛び散り事件になってえらいことになるんだよ。だからその発酵を完全に黙らせる方法を取るんだ。殺菌という菌たちの断末魔の声が聞こえないかい?最高で七十度までしか菌は生きていられないのだから。四十八度までとローフード協会は定めているけど熱に弱いのが菌の特徴なんだよ。
恵子 それで味噌飛び散り事件回避のために殺菌ですかあ。
諭吉 そう。スーパーに並ぶまではそれで良いんだけど。本来の目的は美味しくて栄養価の高い味噌を頂いて健康増進を図るって言うのが大事なんだが。
恵子 違うんですか?もったいぶっちゃってえええ。
諭吉 残念ながらその味噌は菌が死んでしまっている、とさっき言っただろ?
恵子 言いましたねええ。じゃあその味噌を食べても菌は死んでいるから体内に入っても消化を助ける菌の働きはしないってことですか?