寒い、そう感じた
男はゆっくり目蓋をあけてみると
暗い、真夜中なのだろうか?
でも月明かりでそれなりに見える
ぼんやりとした頭で考えて
すぐに思い出した
焦った様子でまわりを見渡す
何度も、何度も
立ち上がろうにも体中が痛いので
しばらく月を眺めることにした
「きれいだなぁ・・・」
だいぶ落ち着いてきた
改めて自分の状況を確認してみる
草むらに埋もれてたみたいだ
ゆっくり立ち上がると、ある物に気づいた
お地蔵様が数体並んでる
この裏に隠れる形で寝てたらしい
「地蔵様、ありがとうな…」
助かった理由はきっとこれだろう
何も持ってなかったので首飾りを供えた
さて、逃げなければならない
どの方角かも分からないが歩きだす
林を抜け、川を跨ぎ、ひたすら歩く
お腹がすいたが仕方がない
ふと灯りが見えた
おそるおそる近づいてみると
寺・・・なのかも知れない
足音をたてないように行ってみる
いい匂いだ
中を覗いてみると
誰かが鍋を煮ている
もう堪えられん・・・
気がついたら戸を叩いていた
「・・・どなたかな?」
「その…、旅の途中で道に迷った者だ、できれば一晩泊めてほしい」
「ほぉ、迷ったと?」
「そうだ迷った、中に入れてくれ」
「おまえさん狸や狐じゃなかろうな?」
「違う、わたしは人間だ!」
「・・・な~んてな、待っとれ」
こんなやり取りの後、戸が開き
立っていたのは白髪の老人だった
