前出の山崎元中隊長に充てた未投函の手紙を見つけた。
「大陸従軍の想い出を拝読させて頂きました。本当に懐かしく感慨無量であります。又、当時を髣髴する思いを抱かされた次第です。
今日まで疑問に思い、凝りとして残っていた点も解消されまして、本当に嬉しく存じております。それは、田子機爆砕の真相を、中隊長及び戦隊長が知っておられたか、否や…の一点でありました。
想い出の記録を拝読致しまして、真相を承知されていたことを初めて知った次第です。この点、誠に自分の不明であったことを大いに恥じております。
従軍の想い出を拝読致しまして、これに関連したようなことですが、私なりの思い出や当時私の考えていた事等、素直に記述してみました。従って、文中に失礼な箇所もあると存じますが、お許しを願います。御笑覧頂ければ幸いに存じます。」
(山崎元中隊長の想い出の記録というのは、おそらく戦隊の会誌に掲載されたものと思われる。それは、後の昭和五十六年に発行された「飛行第九十戦隊史」(編集者:村井信方 発行:飛行第九十戦隊会 非売品))に転載されている。)
きっかけが、新たなきっかけを生んだ。父、保は身体の自由が利かなくなるまでのほんの短い期間に、春の雪解けの水が恰も早蕨の上を迸り流れるかのように、彼の「当時」を綴り始めた。

