種子島に鉄砲が伝来して以降,鉄砲は日本の歴史ばかりでなく,文化にも影響を与えてきた。日本語の中には,鉄砲から派生した言葉が少なくない。機械部品のバネの語源も鉄砲に由来するという説が有力である。
火縄銃の側面に取り付けられたU字型に曲げられた細長い真鍮製の部品が板バネである。引き金を引くと,この板バネの反発力で火縄を取り付けた火挟みが弾き落とされ火薬に点火さる,その爆発力で弾丸が発射されるのだ。

この板バネのことを,砲術各流派は,はじき金とか松葉金,毛抜き金と呼んでいる。松葉金や毛抜き金は,板バネの形状から名付けられたのだが,弾き金は,板バネの動きに着目して名付けられた。文字通り,バネの力によって火縄を弾き落とすからだ。この「はじき金」を「跳ねる」「とび跳ねる」に引っかけ、なおかつ訛り、「バネ」となったという説が有力だと言われている。
火縄銃の製造には、部品としてネジとバネが欠かせない。ネジは銃身後部の穴を塞ぐために用いられる。

これは尾栓ネジとよばれるもので、種子島に鉄砲が伝来するまで,日本にはネジ製造の技術がなかった。
一方,バネの製造は,ネジの陰に隠れて,あまり評価されていない。しかしバネの製造も,当時は困難だった。バネというものは、材料となる金属に強度と柔軟性がなければ話にならない。硬すぎたら折れるし、柔らかすぎたらバネとして使えない。 日本の鉄は,西洋の鉄と違い,とてももろい。日本には1800度の高温を生み出すコークスのような燃料がなかったからである。そのためバネに真鍮を用いたのである。板バネなら,まだ厚さが取れるからそうでもないだろうが,ゼンマイを作るのは,さらに大変だ。

真鍮のゼンマイは巻くと強い反発力が発生するが、鉄鋼に比べて持続力が弱く、ゆるみやすく反発力を失ってしまう。そんな限られた島国の環境の中で,薄い真鍮のゼンマイを造り上げたのだから,日本人の工夫する能力はすばらしい。日本の刀鍛冶は,鉄ばかりでなく各種の金属にも精通していたのだろう。