ムネオ議員と違ってこっちは無罪?

次々と供述覆す異例の展開、司法判断は… 郵便不正公判10日に判決

産経新聞 9月8日(水)20時1分配信

 障害者団体向け割引郵便制度をめぐり偽の証明書を発行したとして、虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた厚生労働省元局長、村木厚子被告(54)の判決公判が10日、大阪地裁(横田信之裁判長)で開かれる。公判は、捜査段階で村木被告の関与を示す供述調書に署名した関係者が次々と「調書は検事の作文」などと供述を覆し、検察側立証の核となる調書の大半が証拠採用されない異例の展開をたどった。無罪の公算が高まる中、司法判断が注目される。

 ■部下への指示

 「『執行猶予がつけば大した罪ではない』と検事に言われ腹が立った。検事と一般市民は違う」

 4月14日。法廷の証言台で村木被告はそう話し、ハンカチを目にあてた。冷静に公判に臨んできた村木被告が取り調べの状況を問う弁護人の尋問に、初めてみせた涙だった。

 捜査段階から一貫して容疑を否認した村木被告。法廷では「あなたがうそをついているか、他の全員がうそをついているかだ」と検事から迫られたことも明かした。公判ではこの「他の全員」が次々と村木被告の関与を否定した。

 偽造証明書を発行した元係長、上村勉被告(41)=同罪で公判中=は「自分の判断」と証言し、「調書は検事のでっちあげ。勾(こう)留(りゅう)が長引くのが怖くて村木被告に指示されたという調書に署名した」と涙ながらに訴えた。

 横田裁判長は5月、「意思に反する内容が記載された」と上村被告の供述調書の証拠採用を却下。検察側は「上司の指示がないまま証明書を発行する必要性が全くない」と主張するが、最も重要な証拠は消えた。

 ■議員の口利き

 事件の発端は16年2月、障害者団体「凛の会」元会長、倉沢邦夫被告(74)=1審・同罪は無罪、検察側控訴=が石井一参院議員(76)に証明書発行の口利きを依頼したことだと検察側は主張する。

 しかし、石井議員は法廷で「倉沢被告から障害者団体の件で依頼されたことはない」と否定。弁護側は、倉沢被告の手帳に口利き依頼を示す記載があった時間帯には、石井議員が千葉県のゴルフ場にいたという「アリバイ」を立証した。

 一方、倉沢被告は「石井議員に依頼し、『障害者のためになるのは良いことじゃないか』といわれた」と証言。検察側は「石井議員が直前にゴルフを決め、倉沢被告との面談は別の日時に変更されたとみるのが自然」などと口利き依頼自体はあったと主張している。

 ■証明書の手渡し

 供述調書の大半が却下され、立証の柱を失った検察側の生命線は、捜査段階の供述を核心部分では維持した倉沢被告の公判証言だ。

 倉沢被告は「村木被告から直接証明書を渡された」との供述を公判で最後まで変えなかった。検察側は「虚偽を述べる理由は全くない」として村木被告の関与を示す根拠とする。

 ただ、倉沢被告の手帳には、証明書を受け取るために厚労省を訪れたことを示す記載がなく、法廷でも日付を特定できなかった。

 証明書が凛の会に渡った経緯については、上村被告が凛の会発起人の河野克史被告(69)=1審・同罪で有罪、被告側控訴=に手渡した-と述べ、“単独犯行”を強調した。ただ、同様に村木被告の関与を否定する河野被告も「証明書は郵送されたのでは」と話すなど、細部で証言は食い違う。

 弁護側は倉沢被告を「顕著な虚言傾向がある」とみており、検察側の構図自体が虚偽供述に端を発した架空のストーリーだったと批判している。