読む政治:診療報酬増を「偽装」 「長妻氏主導」空回り(その2止)

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 <1面からつづく>

 ◇加速する省内統制 面談報告義務化「厚労相は偏屈亭主だ」
 仕事始めの1月4日朝、長妻昭厚生労働相は年頭訓示をしようと厚労省2階大講堂の壇上に立った。ところが多くの職員は距離を置き、長妻氏との間に空間が広がった。

 「もうちょっと(前に)……。最近は怖くありませんので」

 珍しい長妻氏のジョークに、会場にはややこわばった笑いが起きた。

 空前の歳入不足の中、10年度予算編成を終えた長妻氏は昨年12月28日、全局長を集め慰労の昼食会を開いた。

 1500円の折り詰め弁当代は出席者の自腹、領収書も渡す「長妻流」ではあったが、「皆さん、お疲れ様でした。予算編成ではお世話になりました」と長妻氏からねぎらいの言葉があったことに、日ごろ叱責(しっせき)されるばかりの局長たちはみな耳を疑った。仕事の話も一切なく、出席者からは「政権交代で(厚労省の雰囲気は)よくなった」とのお世辞まで飛び出した。

 しかし、優しさも見せる一方で、長妻氏は徐々に省内の統制を強めている。

 政治家が官僚を使いこなし、仕事に結果を出す組織へと変えるにはトップダウンの管理が必要で、大臣は局長を、局長は部課長をマネジメントできなくてはならない--長妻氏は常々そう強調してきた。それを実行するため、長妻氏は昨年11月から毎週、局長以上の幹部を集めた朝礼を開いているが、さらにねじを巻くべく、昨年末から今月にかけ矢継ぎ早に指示を出した。

 「各課長や室長等が各団体と面談した実績リストを、日時、相手、内容について週1回(長妻氏に)報告することになりました」

 今月中旬、課長級以上の職員に官房総務課からこんなメールが届いた。各種団体との癒着が天下りの温床になってきたとみる長妻氏は、14日以降、団体との面談日時や相手、内容を毎週金曜日にメールで報告するよう幹部に義務付けたのだ。

 同様の指示は議員やマスコミとの接触にも及び、毎日午後5時までに内容を逐一知らせる必要がある。就任早々、事務次官、官房長らの日程表を入手し、行動に目を光らせてきた長妻氏だが、ここへきて監視の網を全幹部に広げた。

 長妻氏は29日の記者会見で、厚労省の組織管理について「マネジメントというのがしっかりできなかった」と語り、今後人事を含め、統制を強める考えを強調した。こうした強権的な締め付けは、意に介さない官僚も一部いるものの、多くの職員を萎縮(いしゅく)させている。ある課長は「まるで信用されていない。女房の浮気を疑う偏屈亭主のようだ」と吐き捨てるように言った。

 ◇「社会保障を経済の支え手に」 成長分野、熱い視線
 「年金」「特殊法人改革」「統制」。長妻氏は自身を語る上でのキーワードとも言えるその三つに加え、自らの浮揚にもつなげられる分野として「成長戦略」に熱い視線を注ぎ始めた。一般歳出の半分、27兆円を投じる社会保障を成長分野ととらえ、日本経済の支え手になってもらうアイデアを生み出せないか、というわけだ。

 9日、長妻氏は中堅職員を中心とする、肝いりの「医療・介護・保育『未来への投資』プロジェクトチーム(PT)」のメンバーを集めた。「医療や介護は市場が拡大すると負担も高まる。どこで成長とみなすのか」。そう問う長妻氏に伊奈川秀和・社会保障担当参事官が「今後確実にサービスと雇用が増えます」と説明すると、長妻氏は「GDP(国内総生産)は増える、雇用も増える、か……」とつぶやいた。

 とはいえ、PTは長妻氏の勉強会レベルにとどまっている。「株式会社の病院参入は進んでいないのか」「医薬品のインターネットでの販売は可能か」。こうした基礎的な質問に、役人が答えているだけだ。

 ただし、この日、話が厚労省の独立行政法人、医薬品医療機器総合機構の改革に及んだ時は、長妻氏の口ぶりは追及調に変わった。

 長妻氏「改革プロジェクトは省内にあるか」

 木下賢志・官房総務課参事官「ありません」

 長妻氏「劇的にやらないとだめだ。最重要課題としてプランを立ててもらいたい」

     ◇

 訓示や政策の進行度を示すグラフで埋め尽くされた大臣室の壁に最近、「仕事に締め切りを!」「中間報告を!」「政策背番号制を!」と大書された紙が張り出された。政策背番号制とは政策ごとに企画・立案した官僚を記録し、人事評価に反映させる仕組みである。「できないなら、辞めてください」。平然と告げる長妻氏が、次々と課す宿題の頻度は上がる一方だ。

 「97点取っても、『あと3点取れない原因は』と責め立てられる」「サイボーグのような人に評価されたくない」。省内にはそんな不満が充満している。

 社会保険庁の一連の不祥事を見て見ぬふりし、少子化の進行を指をくわえて見つめ、派遣労働者が苦境に陥るのを予想しながら放置した厚労省。そんな組織が、長妻氏にはたるんだ職員の集合体に映る。それでも、あまりに急進的な手法には、まだ多くの職員がついていけていない。【佐藤丈一】