小学3年頃の夏休み

 

友達がいない私は、毎日祖母の家に行っていた。

 

 

そろばん教室に行くまでの数時間、祖母の北側のうす暗い部屋で寝っ転がったり、

 

祖母と同居している従兄の部屋にコッソリ行っては、ドラえもんやパーマン、うる星やつら、めぞん一刻、千年女王などを読んでいた。

 

なかでも銀河鉄道999が大好きでどんだけ読み返したかわからない。

 

従兄の隠しているおやつもコッソリ頂きながら。 

 

 

 

 

ある昼下がり、古ぼけたレースが揺れる祖母の部屋で昼寝をしていた。

 

何かがざわつく感覚で目が覚めた。

 

机の上で何かがうごめいていた。そっと起きて近づいてみると

 

 

 

蜘蛛が蛾を捕食している最中だった。

 

 

蜘蛛は捕獲に夢中で私に気づかなかったのか、蛾にとどめをさそうとキリキリと羽交い絞めし、長い時間をかけて静かに殺しに集中していた

 

 

最後か・・と思う瞬間にそれはおこった。

 

 

蛾は自分の命が死んでしまうその時

 

 

卵を産みだした。

 

 

腹をちじめたり伸ばしたりしながら

 

 

ポロポロといくつもいくつも卵を生んだ

 

 

 

生と死が同時に目の前でおこっていた

 

 

 

私は動けなかった

声も出なかった・・・・・・

 

 

 

 

その後どうなったのか全く記憶がない

 

だけど何十年経っても鮮明に覚えているのは

 

その時、小学生の私が理解できない気持ちが一つあったことかもしれないと、今は思う。

 

 

 

大人になったときその気持ちの正体がやっとわかった

 

 

私は生と死に恍惚という感情を抱き見ていた。。。

 

 

 

 
 
つい最近のこと。
 
人は死ぬとき苦痛や痛み、苦しみながら死ぬのでなく、
恍惚感に包まれながら死ぬ
 
というのが分かってきたと何かに書いてあった(私の言うことはあまり信じないでください)
 
 
それは人だけでなく生き物すべてだとしたら
 
私の感じた恍惚感は
 
きっと死にゆく蛾の意識だったのかも知れないな・・・
 
 
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私でなく、娘が描いた蝶。
とてもうまかった…