正直に言うと、トレイルグリップでいちばん引っかかるのは、つま先まで覆う大胆なトレッドソールだと思う。ソールがつま先の側にまで立ち上がるデザインは、見た目の迫力こそあるものの、街の中できれいめの服に合わせようとすると、足元だけ急に山の気配を放つ。今回の「トレイルグリップ エイペックス2 GTX」は、その特徴的なモデルを、より上質な素材にアップデートしたユニセックスのスニーカーだという。ただ、素材が上質になっても、ソールの存在感が消えるわけではない。そこをどう受け止めるかが、このスニーカーの評価を分けると思う。個人的には、この主張の強さを「面白い」と思えるか、「疲れる」と感じるかで、買うかどうかがほぼ決まる気がしている。なお、私は実際に履いたわけではないので、ここから先は、公開されている仕様と写真から読み取れる範囲での話になる。

まず機能面を整理する。防水性と透湿性に優れたゴアテックスメンブレン、軽量なEVAミッドソール、あらゆる環境下で高いグリップ力を発揮するというヴィブラムメガグリップのアウトソール。これらは元のモデルから引き継がれた部分だと説明されている。雨の日に靴の中が濡れて冷えるのは、地味にいちばん不快なトラブルだ。防水なのに蒸れにくい、という両立はありがたい。軽いEVAミッドソールも、歩く時間が長い人には効いてくるはずだ。ただ、重さの数値や、クッション性の具体的な印象は、今回の情報には出てこない。つまり、防水性能と軽さは期待できても、疲れにくさまでは断言できない。

見た目の話に戻ると、アップデートの核心はサイドパネルの素材だ。マットな質感のヌバックを使い、凹凸のあるキャビアテクスチャーのレザーと組み合わせて、独特のコントラストを出しているという。起毛したヌバックは、光を吸って落ち着いた表情になる。一方、キャビアのような粒立ったレザーは、光を細かく拾う。同じ靴の中で、質感の違う面が隣り合っているわけで、のっぺり見えやすいスニーカーの顔つきを、うまく立体的にしているのだと思う。トレイル系のごつさに、少しだけ大人の落ち着きを混ぜる手つきが、今回のアップデートの狙いなのだろう。

ただし、ヌバックには注意点がある。表面を起毛させた革は、一般的に水や汚れに弱く、シミが残りやすいと言われる。ゴアテックスのメンブレンが中への浸水を防いでくれても、外側の見た目まで守ってくれるわけではない。雨の日用に買ったつもりが、雨の日に履くのをためらう、という矛盾が起きかねない。お手入れの方法や、撥水加工の有無は、今回の情報には書かれていない。買うなら、防水スプレーなどの対策は前提にしておいたほうがいいと思う。毎日ガシガシ履いて、汚れを気にせず使い倒したい人には、素材の選択そのものが向いていない可能性もある。

本体と同じ色でまとめたメタリックのアイレットは、いい仕事をしている。靴紐を通す穴の金具は、目立たせようと思えばいくらでも目立たせられる部分だ。そこを同色でまとめて、控えめな光だけを残したのは、都市で履く靴として正しい判断に見える。派手な金具が並ぶ靴は、一歩間違えると安っぽく見えてしまう。その危険を、色をそろえることで避けているのが、私は気に入っている。この靴で、いちばん好きなディテールを挙げるなら、ここだ。

比べる相手を考えると、現実的な分かれ道は「雨の日に歩けるトレイル系スニーカーが欲しいだけなのか」という点だ。サロモンやメレルのようなアウトドア系のブランドにも、ゴアテックスを使ったモデルはある。単純に防水とグリップだけを求めるなら、そちらで足りる可能性が高い。モンクレールを選ぶ理由は、ヌバックとレザーの質感、そして都会の服に溶け込ませる佇まいにある。つまり、この靴は性能で選ぶのではなく、性能を落とさずに上質さを足した靴として選ぶものだ。そこに価値を感じるかどうかが、判断の中心になる。性能が同じなら安いほうがいい、という考え方も、もちろん正しい。ただ、毎日履く靴は、気分に与える影響も小さくない。

不満も書いておく。価格が、今回の情報には出てこない。カラー展開も、スニーカーについては触れられていない。ここは、買う前に確認するしかない部分だ。さらに、つま先まで覆うトレッドは、見た目の主張が強い反面、細身のパンツやスラックスとの相性は、あまり良くなさそうだと感じる。靴だけが大きく見えて、足元のバランスが崩れる可能性がある。万能なスニーカーを探している人には、少し癖が強いと思う。正直に言えば、このデザインを完全に実用的だと褒めることは、私にはできない。

組み合わせを想像するなら、ゆとりのあるワイドなデニムや、ミリタリー寄りのカーゴパンツ、ボリュームのあるナイロンのアウターあたりが合いそうだ。靴に厚みがあるので、パンツの裾に余裕があるほうが、足元が馴染む。逆に、細身のきれいめパンツに合わせるなら、靴だけが浮かないように、上半身にも少し機能的な要素を入れたい。ユニセックスのモデルなので、ゆったりした服にも合わせやすいはずだ。

結論を言う。私なら、この靴は「雨の日にも履ける、街のための一足」として買う。ただし条件がある。ヌバックの手入れを面倒に思わないこと、ワイドなパンツを持っていること、そして価格に納得できること。この三つが揃わないなら、機能だけを見て、アウトドア系ブランドのゴアテックスのスニーカーを選ぶほうが、後悔は少ないと思う。逆に、三つが揃うなら、質感の面白さで毎日の足元を楽しくしてくれる一足になる。