君が泣くのを見るのは初めてじゃないのに

君の涙が落ちるのをふしぎな気持ちで見ていた


その涙はどこから生まれて
どこに失われていくんだろう


僕たちの取り戻せないものの象徴として

ただ失われるために生まれてきたのかもしれない



君の笑顔を見るのが好きだった
君のたわいもない話も
ほんのちょっとした癖すらも
ただ好きと感じたたくさんの瞬間


君を想った長い長い時間も
僕たちのこれからの長い長い時間も



涙はどこへ消えるんだろう
たった今までは君だった雫


僕たちの失ったものの象徴として

ただ消えていくために生まれた 君の 



その雫が消えていく先に僕はいなくて


ここに確かにいる君も僕も
まるで遠いもののように感じて



君が泣くのを見ていた ずっと





あなたの心が冷たい暗闇の中にあるのなら
私をそばにいさせて


一緒に小さなろうそくの炎を見つめて
ひとつの毛布にくるまって


二人なら暖かい
あなたの温度で私も


いつまでもたわいもないことを話して
話し疲れたら手をつないで


冷えた頬と頬をあわせて
おたがいの温度を確かめて


二人なら暖かい
あなたがいるから私も





君のために物語を書きたいんだ


それはね
小さなおんなのこが


みんなに大事にされて
大好きな人ができて
いつまでも幸せに暮らしましたってお話


悲しいことも
事件も起きない


胸がつぶれるような切なさもでてこない



退屈って思うかな
それでもいいんだよ



君が毎日眠るまで
僕が枕元で話してあげる


どんなにみんながその子が好きで
幸せになってほしいかって思ってるって


その名前は君だよ
僕が繰り返し呼ぶ名前



終わらないお話なんだよ
だっていつまでもいつまでもその子は
幸せに暮らしているんだもの


君が生きているあいだ
僕と一緒にいるあいだ
ずっと続くお話なんだよ





右手には太陽
左手には月を持って


顔をあげて髪をなびかせて
楽しげに歌う欲張りな女神


右足は萌える草
左足はステップをふんで


光を受けて闇を従えて
軽やかに笑う


右目では世界
左目では心を見て


哀しみも歓びも 永遠も瞬間も
その身に纏う欲張りな女神





あなたの心の柔らかいところが


誰かの心ない一言で切り裂かれ
その傷口から涙が止まらないときには


私にくちづけさせてください


その傷がはやく癒えるよう
これ以上苦しまなくてもいいように



あなたの心の柔らかいところを
そっと両手で包み込んで


私に暖めさせてください


もう震えなくてもいいように





ただ君はちょっと疲れてるんだよ


だから目を閉じておやすみ
今日はなにも考えないで



朝になれば日が昇るから
空は青くて やわらかい風が吹くから
君の好きなあの場所で
二人で並んで世界を見よう



いま君はちょっとだけ疲れてるんだよ


だから目を閉じて休んで



おやすみ





ただあなたと
一緒にすごしたかった ずっと


変わらないものだけを信じて
失われていくものには目をふせて





君を見てるとね


なんだか 永遠とかずっとってことが
ほんとにあるような気になっちゃうんだよ


君はいつまでもいつまでも
笑ったり花を摘んだり楽しそうにしてて


僕はずっとここでそれを見ていられたらなって





だって君は空の星がほしいって泣いてる


そんなもの手が届くはずないよ
そんなもの君一人のものになんてならないよ


手が届かないものを
手に入らないものを見つめて
君は泣いてばかりいるけど



泣くのをやめて手の中をみてごらん
そこには君だけの宝物が
たくさんきらきら光ってる


その輝きにいつも僕は目を細めて
それがどれほど眩いか君は知らないんだ
君を彩っていつもきらきら輝いているのに



届かない星なんていらないんだよ
遠い幻なんていらないんだよ


彼方を見つめて傷つくのはもうやめて
宝物をならべてここに星座を作ろう


君だけの宝物で
君だけの星座を



手が届かないものを
手に入らないものを見つめて
君は泣いてばかりいるけど


泣くのをやめてみてごらん
君の光をうけて輝く 君だけの星が
こんなにたくさん光ってる





君は心配する僕に 
かすれた声で だいじょうぶ って言った


それは 僕には拒絶に聞こえた
悲しければ泣いて
辛ければ話してほしかった いつも



どんなに近くふれていても
君は少しだけ遠くにいた


誰にも話さないことで
君はなにを守っているの?
僕にはそれが見えなかった
君がいつも隠していたもの


その重くて苦しいものを
僕にもわけてほしかった
それで君が楽になるなら
涙と一緒に 言葉と一緒に
僕の腕に受けるのに



君は僕の腕の中で
どんなに近くふれていても
いつも少しだけ遠くにいた


悲しければ泣いて
辛ければ話してほしかった ただ