教会内部にはフランシスコ会の修道士たちが瞑想する場所として、43の修道会墓地から集められた、凡そ5000体の人骨で装飾された礼拝堂 (人骨堂) が残っている。当時、急速な勢いで流行したペストで命を落とした信者たちや修道士たちの人骨が、礼拝堂の内部に所狭しと組み込まれているのだ。
キリスト教カソリックに於いては、ラテン語の memento メメントというミサの言葉があり、「汝忘れるなかれ」で祈りが始まる。また、memento mori メメント モリという、修道士たちが日夜繰り返し唱える文言もある。「死を思え 」という、死に対する尊厳と死者への追悼の気持ちが表れている。
ラテン語 memoria メモリアは memento メメントからの派生語で、英語の memory メモリー 記憶の語源である。memorandum メモランダム 覚え書きも同じ語源。
礼拝堂 (人骨堂) をしゃれこうべや人骨で飾ったり、絵画のモチーフに死の象徴としてしゃれこうべを描いたりするのは、人間の欠陥や過ちを思い出させるものとして重要視された。
ルネッサンスやバロック期のイタリアでも、しゃれこうべは神聖なものとして大切に扱われた。ローマにはフランチェスコ修道会ゆかりのCappuccino カプチン会があり、修道士たちの人骨で装飾された、La Cripta dei Cappuccini 骸骨寺が残っている。