今日、俺は警察に事情聴取で呼び出された。

 

俺と交際している亜矢という女が俺との関係に悩んで自殺を図ったのだという。

幸い、彼女は一命は取りとめたものの歩行障害が残るということだった。

 

まぁ、俺にとってはよくある出来事。

いちいち気にしてなんかいられない。

女ってヤツは何かと男を独占したがる。

 

俺は亜矢の他にも舞、和美という都合3人の女と付き合っている。

亜矢は妊娠したので他の2人とは別れて、自分だけの彼氏になって欲しいと俺に言ってきた。

だから、こう言った。

 

 「避妊はお前に任せたハズだ。だから、妊娠したのはお前の責任。」

 「降ろすなら金は出す。結婚も認知も俺は絶対にしない。お前が決めろ!」と。

 

そしたら、遺書を残して自分の住むアパートの三階から飛び降りた。

本気で死ぬ気なら三階はちと低い。

そして、妊娠したというのは俺を動揺させるウソだった。

 

 

俺の名前は源田高氏(げんだ・こうじ)。

女とパチンコが好きな道楽者の23歳の二流大生だ。

1浪して、1年留年しているが就活なんてする気はサラサラない。

なぜなら、俺の親父は従業員1,500人の上場会社の社長で俺はその跡取りだから。

 

学生というモラトリアムを使って存分に遊んでいるが、時に女関係でこうしたトラブルに見舞われることもある。

 

亜矢とはもう終わりだ。

俺と付き合う時にあれほど忠告したのに・・・

 

「俺を独占しようとするな。独占したければ俺みたいな男とは付き合うな。」

「俺は俺のことを真から愛してくれる女と出逢うまでひとりの女とは付き合わない」

「つまり、どれだけ俺を愛せるか、尽くせるかだ」と。

 

亜矢のヤツはどこかで俺が大企業のぐーたら御曹司であることを知ったのだろう。

だから、あんな芝居がかった狂言自殺をしたに違いない。

 

他の2人の女は俺がぐーたら御曹司であることは知らない。

だけど、今回の騒動で彼女たちも程なく気づくかも知れない。

 

俺はただのぐーたら二流大生の男として付き合ってくれる女がいい。

 

そしたら今度は舞のヤツが行動を起こした。

舞もまた自分の正体を隠して俺と付き合っていたのだが、当時の俺はそんなことは知る由もなかった。

 

舞は亜矢とは違い、ハニートラップを俺に仕掛けるようなしたたかな女だったとは夢にも思わなかった。

 

女はやはり魔物だ。

 

(つづく)