自転車乗るなら土の上

自転車乗るなら土の上

BMCサポートライダー 國井敏夫
2012シーズンから本格的にレース活動を開始
MTB→FS01 29とTE01 29
CX→CX-01とGF-02Disc
ROAD→SLR01

Amebaでブログを始めよう!
2017春の王滝SDA100km
2017.5.21開催 長野県王滝村国有林内特設コース
天候:晴れ(ドライ)
リザルト:総合第13位
タイム:5時間19分

この半年は、トレーニングの全てをこの日のために費やしてきた。限られた時間の中で最大限の効果が得られるよう、練習の仕方や時間配分を一から見直し、学生時代も含めて生まれてこのかた一番キレがあると感じるほど体調は万全だった。バイクコントロールもジープロードでのコーナーリングをメインに、誰にも負けない自信がつくまで練習した。バイクは手足のように操れるフルサスにチェンジし、アッキーさんの整備でコンディションは完璧。言い訳できる余地は一切なかった。絶対に勝ってやろうと思っていた。

{6CDE8C04-9DF3-478F-9DE5-92E162070896}
Photo by Sayakoさん
スタート直前までアッキーさんが声をかけてくれたことで、この上ない安心感とともにスタートを切ることができた。リアルスタートからのダッシュにも余裕を持って対応し、登りに入ることができた。スタートから30分、宮津選手を中心とする先頭パックから遅れはしたけどそれは想定の範囲内で、後半に絶対に追いついける!という強い意気込みで、自分のペースを保った。
{9E1E4A3C-6039-4567-9462-BA44EA74DF0A}
Photo by Sayakoさん

最初の頂上は4位。その後一時は山中選手が先行するものの、下りで再び山中選手に追いつき、お互いに声をかけつつ、ペースを保った。セミスリックタイヤのG-CLAWを選択して、下りでは圧倒的に不利かとも思ったものの、いざ走ってみれば山中選手と同等に走れている。やっぱり選択は間違いじゃなかった。そう確信してペースを上げた。3本目の登りで山中選手が千切れてしまうが、前に3位で走行中の岡本選手の背中が見え始め、CP1へと続く下り基調のアップダウンで一気に追いつく。フルサスを選択したおかげでハードテイルでは脚を止めてしまうような路面の凹凸でも回し続けられるのはやっぱり有利だと感じた瞬間だった。3位で通過したCP1、先頭パックとの差は目視で3、4分ほどつき1時間48分。決して遅くないタイムだし、むしろ先頭パックがオーバーペースのように感じる。オーバーペースのツケは必ず終盤に回ってくるはず。中盤以降、必ずチャンスがやってくる!

岡本選手に先行してCP1の後の登りをクリアして、再び下りに入る。先ほどから例年以上に路面がガレている雰囲気はあったけど、ここに至るまでの展開でテンションが上がってしまい、明らかに冷静さを失っていたのだろう、ガンガン突っ込んで行っちゃえという無謀な考えにいつの間にか思考が切り替わっていた。あのとき、それに気づけるほどの余裕は現実には肉体的にも精神的にもなかったのだろう。CP1通過から10分経過した1時間58分、下りの右から左へとS字状に続くコーナー。若干オーバースピードで進入してしまった自覚があった。そこに立ち上がりのライン上に落石があり、本来ならイン側に切り込んで回避すべきところを、オーバースピードであったために切り込めず、アウト側に逃げた。結果的に10cmほどの落石のすき間をすり抜けることになってしまい、その際に後輪を岩肌に接触させてしまい、まさかのサイドカットのパンク。
{4475CFFA-644C-493E-B99E-09FDDA5130B8}
もしスリックタイヤでなければフロントが逃げずにイン側に回避できたかもしれない。あるいは手前で十分に減速していれば余裕を持ってイン側にライン修正できていたかもしれない。今から振り返ってもタラレバばかりで、2度と取り戻すことはできないほんの一瞬の判断ミス。でも実際には一瞬のミスなどではなく、結局のところタイヤに合った走り、路面に合った走り、王滝に合った走りができていなかったのだ。周りの人たちには散々パンクや落車に気をつけるように忠告しておきながら、自らがそのミスを犯す。驕り。慢心。自分自身のことが本当に嫌になった。

岡本選手は先行していき、山中選手は追い抜きざまに心配して声をかけてくれる。こんなところでこれまでの取り組みを棒に振るわけにはいかない。状況は明らかなので、チューブとタイヤブートをサドルバッグから取り出した。素早くチューブを入れたいのに、タイヤブートがなかなか良い位置に収まらず、嵌め直すこと2回、ようやく復旧。CO2ボンベで空気を充填し、10分もかかって再スタートした。CXerの丸山厚選手が通過したばかりだったので、まだ行ける、まだ終わりじゃない、とにかく前を追おう、と気合いを入れ直す。サドルに伝わってくる後輪の感触はいくぶん空気圧が低すぎたか?と思っていたところ、5分もしないうちに再び後輪がパンク。やっぱり空気圧が低すぎた。あるいはチューブがうまく収まっていなかったか?いずれにしてもやってはいけないミスを連発してしまった。正直なところ、もうやめようかという思いも一瞬頭をよぎった。でも私の前を通過していくライダー達が次々と励ましの言葉をかけてくれる。これが本当にうれしかった。悔しさとうれしさと自分への腹立たしさが入り混じって、半泣きのままチューブを交換した。絶対にゴールしてやる。最後まで絶対に諦めない。

チューブの予備はもうないため、3度目のパンクは許されない。万一のためにファストリスポーンは温存してあるけど、もうパンクはしたくない。丁寧にタイヤの内面を拭いて、空気圧を今度は高めに充填。18分ほどかかってしまったけど、少し安心感を持って再スタート。現時点での順位は20位?30位?まあいい。さっき通過していったライダー達に声をかけながら次々と追き返していく。SSクラスの猛者達のエネルギッシュな走りにも元気をもらいながら、あっという間にダム湖まで到達。

補給はレーススタート1時間後から開始し、ジェル→スポーツ羊羹→ジェル→スポーツ羊羹と30分おきに補給。水分は10分〜15分毎に1口を必ず飲む。たったこれだけだけど、きっちり時間通りにこなしたことでエネルギー切れや脱水症状はなし。空腹感の兆候すらなかった。ダム湖をすぎて登りが始まっても、ペースが落ちる気配はなく、良い感触で踏めている。暑さが例年以上に厳しいけど、ボトルの中にはまだ半分くらいドリンクが入っている。小まめに口に含んでいるからか、あまり減っていないことに驚く。後輪の空気圧を高くした分、サスユニットのロックは登り下りを問わず全開放にした。丁寧なペダリングを心掛ければ中間のトレイルモードと遜色なくロスなく前に進んでくれる。CP2が近づいてくる。当初の目標タイムよりも30分以上遅れている。苦しそうな山内選手の背中が近づく。ボトルが半分を切っているので一旦止まって水を継ぎ足す。2分ほどの停車で再スタート。

CP2の後のガレた激坂は、綺麗に整地されていて、思わず呆気にとられるほどスムーズにクリア。その後も厳しい登りが続くものの、脚を止めることなくペースを維持した。42kmのライダー達と合流し、抜きどころが難しくなってくる。不意に声をかけてしまうとバランスを崩してしまうから、早めに声をかけつつ、できるだけ車間を開けて追い越す。その際にラインを外すことになるので、再びのパンクを避けるために細心の注意を払う。

CP3をノンストップで通過し、前を追う。見慣れたチームジャージを見つけて、心が休まる。M永さんに声をかけて励まし合う。みんなの期待に応えられない悔しさと自分への腹立たしさで涙が出てくる。だからこそ、今できる精一杯の走りで応えたい。そのためにも限界ギリギリの負荷をかけ続ける。そして最後の厳しい登りの中盤、ついに脚が攣る。さっき抜いたライダー達に声をかけてもらうも、反応できない。30秒?1分?しばらくの停車。ドリンクとともにミネラルタブレットを口に含む。すると一瞬で解消する。再スタート。身体はもう限界。やっぱり前を追うことで無意識のうちにオーバーペースになっていたのだろう。止まりそうなスピードに、心が折れそうになる。そんな時に再び見慣れたチームジャージが。今度はシゲちゃんだ。チームのみんなにはいつも苦しいところで支えてもらってばかりだった。最後の一押しで登りきり、いよいよダウンヒル。できるだけ直線的なラインを取り、ブレーキを最小限に、バイクを倒さないように。スリックタイヤとは思えないグリップ感で、最後の下りを追い込む。
{5C3EADAE-F38F-486D-AA8A-342B1D736DD6}
Photo by MP園長

ゴールでは園長がキンキンに冷えたコーラで出迎えてくれた。5時間19分で総合13位。悔しいけど、これが今の実力。トップからは40分以上遅れている。パンクがなければ、なんていうのは負け犬の遠吠え。完敗だ。

悔しい。その気持ちはどうやっても拭い去ることができない。でも、というか、だからこそ、秋の120kmに向けて、次こそは勝ってやる!という気持ちが湧いてくる。この気持ちが湧いてくるうちは、私はこの偉大なアドベンチャーに挑戦し続けるのだろう。

これまでの取り組みには、本当に多くの方に支えられてきました。これに懲りず、これからもどうぞ温かい目で見守っていただければ幸いです。特にMilePostのアッキーさんとシゲちゃんには、日頃から多大なサポートと叱咤激励をいただき、今の私があります。いつも本当にありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願いします。

使用機材
・バイク BMC FS-01 29(Mサイズ)
・F・RサスユニットFOX (空気圧前後80psi)
・メインコンポ SHIMANO XTR
・ホイール DT SWISS XR1501 SPLINE ONE
・タイヤ IRC GーCLAW TLR(空気圧1.5Bar)
・ハンドルバー FSA K-FORCE FLAT 700mm)
・ボトルケージ オージーケーカブト RC-12R
・グリップ Lizard Skins DSP Grip
・バイクメンテナンス MilePost Pro Cycling Shop
・ヘルメット bolle THE ONE
・グローブ オージーケーカブト EXG-3
・サングラス bolle B-ROCK(Modulator Brown Emerald)
・シューズ Giro エンパイアVR90
・インソール LEGNA カスタムインソール(シダス ウィンタープラス)

MilePost BMC Racing 國井敏夫