※ネタバレあります


 二分の一の魔法が見たかったのだが、どちらも気になっていたし、見に行った日、延期されていたしで、結局こっちを見た。

 あらすじをざっくりいうと、韓国の半地下に住んでいる家族が、金持ちの家族に経歴を詐称して、お手伝いやら家庭教師やらで職を得て、金を吸い上げると言ったものだ。

 parasiteは「寄生」という意味らしい。

 たしかに、半地下に住んでいる方の家族は金持ち家族に寄生している。が、物語の中盤にゾッとする真実が待ち受けており、もともと薄気味悪かった雰囲気の物語の暗転は加速していく。そして、タイトルの真意が明るみに出るのである。

 私はこれを見終わった時、周りにいる人が信じられないほど恐怖に怯えたのを覚えている。電車で流れる韓国語を聞いてもゾッとした。それくらい怖かった。




ここからネタバレです。観る予定の方は、ブラウザバックをお願いします。











 まず、半地下に住んでいる家族は4人。父、母、主人公(兄)、妹。まずこの主人公が大学生の友人の紹介で、金持ちの家族(金持ち父、金持ち母、姉、弟、家政婦、三匹の犬)の娘の家庭教師をすることから全ては始まる。貧乏で大学に4浪の身であったが、その勉強の甲斐あって家庭教師としては優秀に仕事をこなす。
 そこで信頼を得た主人公は、今度は芸術家肌の弟の美術の先生を探しているという金持ち母の愚痴を聞き、妹を他人の美術の先生として引き込む。実は、主人公が大学生であると詐称するために用意した書類は妹が偽造したものだ。妹には美術の才能があったのだ。しかし、美術の先生の免許など持っていない。ネットで調べた知識を弟の行動に合わせて喋っただけの授業だった。ところが金持ち母は主人公の紹介ならとあっさり信頼してしまうのだった。
 さらに、妹は金持ち父の車の運転手に仕掛けをして運転手を辞めさせ、自分の父を新しい運転手として紹介する。もちろん、他人として。
 さらに、今度は家政婦を邪魔と感じた3人は、綿密な計画のもと、今の金持ち家族が住む前からその豪邸に住んでいたという古株の彼女を追い出してしまうのである。もちろん、後釜には彼らの家族の母が他人として入ってくる。

 こうして、4人は同じ家でそれぞれ仕事を得た。そして、デタラメな仕事で大量の金を吸い上げる。まさに、寄生しているというわけだ。

 最初に薄気味悪い雰囲気と書いたが、ここまでは所々コメディタッチで描かれていて展開には波乱を含んでいるものの、軽い気持ちで見れる。

 では、私の不安に感じる気持ちは勘違いだったのだろうか。

 いや、答えは否だ。

 ある日この金持ち家族がキャンプに出掛け、半地下家族は豪邸で思い思いに過ごす。嵐の夜更けに4人で酒を飲んでいると、家のインターホンが鳴る。
 最初は無視していたもののしつこいので応答してみると、ずぶ濡れの前家政婦がモニターに映し出される。彼女は「忘れ物をしたので中に入れて欲しい」と訴えた。
 4人は躊躇いながらも渋々彼女を中に入れる。家政婦として家に居残る名目がある母以外は物陰に隠れて様子を見守った。
 前家政婦は一目散に半地下の食料品置き場に駆けていくと、食器棚をズラした。すると、そこに地下へと続く階段が現れたのである。彼女曰く、「韓国の富豪は北からのミサイル攻撃に備えたシェルターを地下に持っている」のだそうだ。そして、このシェルターの存在を今住んでいる家族は知らない。何故なら、この前家政婦は家も買えぬほどの貧乏人で、この地下に自分の夫をこっそり住ませていたからだ。

 そう、これこそが、タイトル、「パラサイト」の真意だ。この前家政婦夫婦こそが隠された最初の寄生虫。

 ここに来て、もう一つの半地下の家族の存在が明らかになるのだ。考えただけでゾッとする事実に、まるで幽霊でも現れるかのような演出でホラー映画を見ている気分だった。

 そこから意図せぬ形で4人のつながりが家政婦夫婦にバレる。さらに嵐の影響で金持ちの家族がキャンプから帰ってくるというのである。
 4人はなんとかこの夫婦を地下室に閉じ込めるが、家政婦をしている母以外は豪邸から逃げなければならない。寸手のところ話で逃げ遅れ、また寸手のところで隠れながら、父は、金持ち父が金持ち母に話していた、「あの運転手からは半地下の匂いがする」という自分への悪口を聞いてしまう。

 いろいろハプニングがあるものの、3人はなんとかバレずに嵐の中逃げ出す。しかし半地下の家には川のように雨水が流れ込み、3人は必要なものだけ持って同じ様に貧乏な人がひしめく避難所へ向かう。

 昨晩のことで憔悴しきった3人の元へ、金持ち一家から「弟の誕生会に出席しろ」という旨の連絡が来る。貧乏人はみな雨に家を破壊されたり流されたりしたものの、金持ちにはまるで関係のないことだった。

 主人公は家庭教師を通して、娘と男女としての交際を本気でするほどの仲になっていた。父や妹、母を含めた他のパーティー参加者が庭に集まっているのを尻目に、娘と逢瀬していた。
 しかし、主人公にはある決意があった。娘に庭のパーティー会場に行くように促し、それを見届けると自分は地下へ向かう。その手には、物語序盤で友人から主人公に貰い受けた岩が握られていた。

 主人公は鼻息荒く地下へ向かう。

 しかし、すぐには夫婦の姿は見当たらない。恐る恐る降り立ち、辺りを見回すと、前家政婦の遺体が転がっていた。主人公の意表をつき、隠れていた夫が奇襲をかける。主人公はなんとか地上に逃げるものの追いつかれ、持っていた岩を取り上げられて頭を殴られてしまう。

 そのまま夫は地上に降り立ち、キッチンの包丁を持ち出しパーティー会場へと躍り出る。

 そして、半地下家族を探し出して、妹を躊躇いなく刺す。

 衝撃の映像に、妹の近くにいた、金持ち一家の弟が気絶してしまう。半地下家族以外に妹の心配をする者は誰もいない。明らかに妹の方が重症だというのに、金持ち家族は、弟を病院に連れていくから早く車を出せ、と、運転手である父に迫る。しかし父は妹のことで頭がいっぱいで動かない。母は、家政婦の夫に目を付けられ必死に応戦しているところだった。

 と、そこで、地下から出てきたばかりの夫の匂いに金持ち父が鼻をつまむ。

 その光景を見た途端、父は完全にキレてしまった。母によって返り討ちにされた、家政婦の夫の手から包丁を奪い取ると、金持ち父に向けてグサりと刺してしまったのである。

 主人公が次に目を覚ました時、頭を打ったことが原因と思われるが、彼は気狂いになってしまった。

 常にへにゃへにゃと笑って過ごし、妹の死を解ることができなかった。金持ち父を殺した父も行方不明になってしまい、母と二人暮らしだった。

 しかし、ある日主人公は気付く。

 父の居場所は、あの半地下のシェルターなのだと。

 そして、父に向かって、いつか大金持ちになってその家を買い取ってみせると誓う手紙を書き物語は終わる。



 怖い上に、後味は最高に悪い。

 後半の怒涛の展開は下手なホラーよりずっと怖かった。

 もう一つの半地下の家族が明らかになってからは笑えるところが一つもなくただただ、暗く怖い展開が続く。

 半地下のジリ貧生活から無理に這い上がろうとして、ジリ貧生活どころか大事なものすらいくつも失ってしまった家族の悲しい話だった。