年々に折られて梅のすがた哉

年々に折られて梅のすがた哉

       ~土方歳三~

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俺の日誌の題目か?

ああ、これはだな…その…。

お前が知ってるかどうかはわからんが、俺は京に上る直前の文久三年のはじめに「豊玉発句集」を編んだ。
『豊玉』ってのは俺の雅号だ。
つまり「俺」の発句集だ。

…なんだ、その妙な顔つきは…可笑しいか?




その…、京に上るってえのは一大決心が必要なわけだ。
それでだな…ま、一応俺の発句をまとめておこうと思いついてだな。
急な思いつきでもあり、出立の日まで時間が無かったこともあって十分練ることが出来なかったんだが、評判がよかったものと、そのほかいくつかを加えて、全部で41句を納めた。

「梅の花 壱輪咲いても 梅はうめ」…だと?

ああ、それも俺の句だよっ!なんだっ!その笑いを押し殺したような顔はっ!!!


俺のイチオシはだな…巻頭に置いたこれだな。


「さしむかふ 心は清き 水鏡」


ま、いろいろ語るのは野暮だからやめておく。
京に上る直前の心持ちを察してくれると嬉しく思う。

それでなくとも俺の句は理屈っぽくていけねえとよく注意されるんでな。


「しれば迷い しらねば迷はぬ 恋の道」がイチオシだと思っただとぉっ!!!


そっそれはだなっ!没にしようと思って丸で囲んであったんだよっ!
今とは習慣が違うのかもしれねえが、あの句は…


忘れろっ!!!


お前…結構よく知ってるじゃねえか、俺の発句。
まさか…全部読んだんじゃねえだろうなっ!
どこから手に入れたっ!正直に吐け!!!

なんだとぉ!総司の奴…(ワナワナワナ)


こ…近藤さんもか…
(近藤さんは全く悪気がないんだが…それはわかっちゃいるんだが…)



はぁ・・・・・(ため息)



おっと話がそれちまった。

日誌の題目の話だったな。


京に上るときに、俺は芹沢鴨って男に出会った。
ああ、一緒に壬生浪士組を作った男、筆頭局長だった男だ。


「凍鉄の花」てえ漫画があるんだか、知っているか。
その中で芹沢さんが総司にこう言うんだ。

「侍とは花だ。だが散るだけの桜ではない。
真の侍とは、折られるほどに強くなり、
寒風の中にも凜と咲く、梅のようなものだと思わぬか。
散りても後に強き香を残す…」


それを聞いて、俺は自分の発句を思い出した。

それがこの日誌の題目、「年々に 折られて梅の すがた哉」ってやつだ。


この際、この発句の善し悪しはまぁ、置いておいてだな…。

伸びやかに育つ桜とは違って梅はあちこちに節を作る。
それにいい花を沢山つけさせるためには、枝を切らねえといけねえのさ。
切られることで鍛えられるような、そんな感じかもしれねえな。

俺も、そんな梅のようでありてえと思ってな。


散りても後に強き香を残す……か…。



俺もそんな梅の花のようで在りたいもんだな…。