彼女とは別の女性を前に一瞬言葉を失う俺であったがすぐに気を取り直してこう言った
「今出ているスクラッチって何がありますかね」
「そうですね、え~っと」
冷たい雨の雫が額から流れ落ちていくのも構わずその場で立ち尽くす俺は頭では女性の説明を聞きつつも脳内ではすっかり冷静さを取り戻していた
(何やってんだ、、、いったい)
偶然という名の運命、と解釈すればそうだったのかもしれない
が、6年振りとはいえたまたま遭遇しただけのこと
再会を喜ぶもだから何だというのだ
彼女が待っていたはずはないし、現にショートメールだっていまだに返信すら無いではないか
こんなの、、、迷惑に決まっている
確かにあの時、一瞬でも彼女と俺が燃え上がったのは事実
だとしてもそこから6年経った今、あの時のような燃え上がる感情が彼女に沸き起こるはずがないし、むしろ6年も経てばそんな感情は薄れているどころか遠い過去の遺物でしかないのではないか
「蛙化現象」などという言葉が流行っているようだがそれ以前の問題だ
、、、俺は何を興奮していたんだ
久しぶりにときめくココロ
忘れかけていたあの時のような激情
アバンチュールという名の危険な逢瀬
もう二度とあんな事は起こらないだろう、そう考えていたはずだったのに今になってまた、、、
スクラッチを適当に購入し、けずる事も忘れ車に乗り込んだ俺はそのまま真っ直ぐ仕事に戻った
帰路の車中ではいつも鳴っているはずのカーステレオすら無音状態
(もう終わった事だ、忘れよう)
気がつけば雨は少しづつ静かになっていた