忘れないように記しておく。
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「強くなる。もっと強くなれば忘れずにいられる。」
「うんざりするような人生の中で、でも無性に会いたくなる思い出がある。」
「何にも感じずに生きていくより傷つくほうがまし。かならず立ち直れる速さは経験に比例する。」
すとん、と胸に刺さる、フレーズの数々。
刺さったところから、同時に感情が溢れ出し、それによって心に深く刻み込まれる。
もっともっと、人々に届け、そしてその心に刺され、と思う。
POPSは、聴き手の耳に、ただ届くだけじゃダメだ。
POPS=大衆音楽ではあるが、大衆的=「わっかりやすーい。」ではダメなのだ。
小学校低学年がとれる球威の、ぽすんぽすんとしたキャッチボールみたいなのは、
退屈なだけだ。意味がない。
そして「本気」がない。(そっちが本気だとしてもこっちが本気になれない。)
グサッ、グサッと、言葉や音が、
聴き手の耳のみならず 「心」にまで届き、なおかつそこに刺さらなきゃいけないのだ。
そうでなきゃ、大勢の人間相手の「大衆音楽」にならない。
大衆をを牽引し、その心を震わす、もしくは動かすくらいの説得力のある曲でなければ、
大衆音楽とはいえない。
そんな力をもたずして、何のための大衆音楽=POPSなのだろう。
最近のJ-POP界。
発信する側、受信する側、双方共に、ナメあっている、というか、ナメられあっている。
いや、いいものについては、どんどんいい方へ「進化」をとげているとは思うのだが、
一方で、ヌルい作品が、数としてやけに多く目に付くようになってきた、と思う。
友達との携帯メールでのやりとりみたいな詞。
「・・・で?」といいたくなるようなテーマ。
耳にしてこちらが恥ずかしくなるようなタイトル。
そして何より、それらがまた、何故かヒットチャートを平気で席捲してしまうという現状。
ヌルい。ユルい。そしてアマい。全部ひっくるめてかったるい。
人様の音楽に対する趣味嗜好については、とやかくいう気は本当に全くない。
何を良しとするかは、人それぞれでいいものである。
しかし、あまりにも幼稚なものが、
「世間でウケるもの」として多くを占めるようになってくると、
「良質なPOPSの真心」みたいなものが、廃れていくような気がして、
ちょっと、勝手に、個人的に、ツラいものがあるのだ。
ここにきて、ユーミンの新譜を聴くことが、もはや「安心感」になってしまうなんて。
こんな「安心感」なんていう聴かれ方、
松任谷ご夫妻としても、不本意なんじゃないだろうか。しかし、こればっかりは仕方ない。
だって、「POPSの真心」が、ユーミン作品には、いつも確実にあるんだもの。
送り手受け手双方共に「本気」のやりとりが約束されているんだもの。
もはや、今の音楽業界においての売れる売れないなんてものは、もうどうでもいい。
それより、ユーミンには、これからも定期的にリリースをし続けることにより、
ひとつの砦としてそこにいてほしいというか。
もう、ほとんど、職人さんに「伝統芸能の灯を絶やさないで。」と切望する気分に近い。
と、いっても、POPS職人と、伝統芸能の職人さんとは、やっぱり違うわけだ。
「変わらずにいるためには、変わり続けていなければならない。」
これは、ユーミン自身がよく言う言葉なのであるが、つまるところ、
「いつでもユーミンがユーミンとしてここにいる」という安心感は、
こうしたものが礎となってこそ、成立しているものなのではないかと思う。
今回のこのアルバムは、
「変わらずにいるためには、変わり続けていなければならない。」というこの言葉の意味を、
非常によくあらわす内容になっていると思う。
とても「ユーミンらしさ」に溢れているのに、その印象は何も変わらないまま、
しかし、10年前のユーミンとは、あきらかに変わってきている。
いや、変化していくことそのものについては、今に始まったことではなく、
これまでも常にずーっといろいろな形で変化をし続けてきた人ではあるのだが、
ただ、そのこれまでの変化というのは、
「時代の風みたいなものを先取りして映し出せる鏡」として機能すること、
その機能がすなわち作品に、「変化」というかたちになってあらわれた、
という感じだっただろうか。
しかし、時代の風みたいなものがピタリと止んで、
時代の色合いや価値観もいろんな多種多様のものが混ざり合いすぎていて混沌とした、
そんな昨今にあっては、
何かをひとまとめにして映し出そう、鏡になろうとしても、できないのではないかと思う。
これは、ユーミンに限らず誰もが、であるが。
そうなった時に、何を映し出せば、自分は表現者として変わっていけるか。
ここにきて、ユーミンは、ようやく、自分自身にスポットを当て始めたのではないか。
否応なく変化していく自分自身を映し出すことによって、
「変わらずにいるためには、変わり続けていなければならない。」を
表現しはじめのではないか。
そんなふうに、私には感じられた。
「時代」のほうではなく、今回は、かわっていく「ユーミン自身」が、
このアルバムの中にいる。
「作家的」「職人気質」な部分、そんな「ユーミンらしさ」はそのままなのだが、
しかし、作者本人の「生身の」人となりみたいなものが、
濃くにじみ出るようになってきた、そんなアルバムだと思う。
このアルバムを聴くと、
「この先、ユーミンは、ユーミンとして、何を描いていくのか。」ということが、
これまで以上に非常に気になり、楽しみになってくる。
今回のアルバムは、そんなアルバムである。
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