ずいぶんと昔からのことだ
私自身と
私の心身は
別々だった
そのほうが
一緒になって走るより
ずいぶん身軽だった
速く走れた
私は
私の心身を
洗濯ネットのような袋に入れて
それを持ちながら
走リ続けた
振り回しながら
走ると
もっと楽に走れた
走りながら
振り回されたそれは
あちらこちらに
ぶつかり
周りのものを傷つけ
それ自体も傷ついた
私は
お構いなしに
ただただ
走り続けた
走り疲れると
横に置いて休み
また
振り回しながら
走り続けた
年を取り
走れなくなったとき
あたりの景色をながめると
走るような道ではないことに
気付かされた
手に持っていた袋の中をみると
それは
ボロボロになっていた
いたわるように
それを手にしても
それからは
頑なな拒絶を感じた
長い年月
自分のことしか考えず
振り回し
傷つけたそれと私とは
修復のきかない関係になっていた
当たり前の話だ
どれほと優しくしようが
どれほど正論を語ろうが
それから伝わってくるのは
拒絶だけだ
どれだけ苦しもうと
無関心だった私に対して
それは
長い年月をかけて
私を憎み続けていた
私たちが
わかりあい
ひとつになるのは
たやすいことではない
救いは
みあたらない



