女もの
家の前には田んぼが広がっていて、
夏になれば水が流れて、
風が吹けば涼しかった。
そこでいつも、姉と妹と遊んでいた。
姉は活発で、何に対しても行動力があった。
妹はまだまだよちよち歩きだったが、
好奇心は旺盛だった。
姉はチェック柄が好きで、
いつもチェック柄のスカートを
履いていて、頭にはたいてい
カチューシャがはまっていた。
とても活発な面がある
姉だったが、
化粧などの、「女性らしい」
ことにも好奇心旺盛で、
おもちゃの口紅や、チークなどでいつも
遊んでいた。
ある日、
外で遊ぶ事になったのだが、
姉は普段にも増して
自分なりにおしゃれな服を選んで着ていた。
なぜだか自分も楽しい気分になり、
当時母親が持っていた
割と高さのある、真っ白で綺麗な
ハイヒールを下駄箱から取り出し、
履いた。
Tシャツ、短パンで、足下は白のハイヒール。
姉は、何も言わなかった。
そして僕たちは、田んぼに向かった。
自分が納得いく格好ができて嬉しかったのか、
姉はうきうきとあるいていた。
その後ろをぼくは、おたおたと着いて行った。
真っ白のハイヒールは、
少しぬめった田んぼの泥にまみれていった。
ふりかえる
とぎれとぎれだけど。
膝に頭をのせて
母の顔を見上げたら、
母は目に涙を溜めて今にも爆発しそうだった。
身体を強ばらせて、
がたがた震えて、
言葉にならない言葉を
口からこぼしながら。
ふと隣の部屋に耳を傾けると
父親が少し高めで大きな声を張り上げていた。
その隣で負けじとおばが声を張り上げる。
そんな光景を、当時は、
全く理解できなかった。
時間が経って、
それからも、この事は
僕と、家族を縛った。
膝に頭をのせて
母の顔を見上げたら、
母は目に涙を溜めて今にも爆発しそうだった。
身体を強ばらせて、
がたがた震えて、
言葉にならない言葉を
口からこぼしながら。
ふと隣の部屋に耳を傾けると
父親が少し高めで大きな声を張り上げていた。
その隣で負けじとおばが声を張り上げる。
そんな光景を、当時は、
全く理解できなかった。
時間が経って、
それからも、この事は
僕と、家族を縛った。