今日は、スーパームーンなのに、雨で見る事が出来ません。残念ショボーン
今回の父の本棚は、吉村 昭 著 「破船」 新潮文庫
 
ネタバレしてますニコニコ
 
主人公: 伊作 男子 9歳から10歳の約3年間
その他の登場人物: 家族: 父、  母、 弟(磯吉)、妹(かね)、妹(てる)
場 所:  貧しい漁村  小ダコや秋刀魚、イワシなどを獲っている。
状 況: 伊作の父は貧しさから労働力として年季(身売り)される。父は逞しく伊作は父のようになりたいと思っている。母も貧しさに負けまいと逞しく、伊作に厳しくするが、この村で生きていくには普通の家庭状況。
 
内 容
 伊作は、年季した父言葉を守って父の代わりに自分が母を助け、弟妹たちを育てようと頑張っている。自分より一つ上の娘、民に恋心を抱いているが、民の家も貧しく民の姉も身売りしている。伊作は、民もそうなるのではないかと心配している。
 民への恋情は、性的な意味合いも含まれている。
 
この村は、非常に貧しくどの家も男は労働力として、女は嫁も娘も身体を売り、3年から10年くらい年季に行く。もちろん、年季先で亡くなる事もあるし、村に帰ってからも身体を壊すものもいるし、娘は嫁ぐこともままならない。
 ある嫁は年季があけて夫のもとに戻るが、年季先で仕事以外で男と情を交わしたのではないかと疑われ虐待の末、自死してしまう。
 
 ある日、彼は「塩焼き」の任を任される。それは、大人としてその労働力を認められたことを意味し、彼は誇らしく思う。さて、この塩焼きは、海水から塩を抽出する作業でこれを売る事で村の収入源となっている。しかし、この塩焼きは、夜、夜中の作業である。
 この夜、夜中に作業することに村のある秘密が隠されている、、、、。
 
 それは「お舟様」、、、、、、。
 
 難破船の事、、、。難破船には、米などの食物や油、茶、酒、衣類など村では贅沢な品物が乗っており、それを「お舟様」と呼んでいる。
 つまり夜、浜で塩焼きで火を燃やす事で、遭難しそうな船がその明かりを頼りに浜に寄ってくるのを待ち伏せているのだ。「お舟様」には、生きている船員がいるが弱っている。彼らは、生き残りの人間も撲殺し、船の荷を奪ってしまう。得た食料などは家族構成によって平等に分けられる。村にが豊かになる。

しかし、ばれれば大変なことになる。村おさは、村人に貧しい日々と同じ生活を続けるように戒める。



 伊作は日々逞しくなっていく様子は、読んでいて頼もしかった。彼の母も伊作を認める。それが、伊作には嬉しい。
 
 ある日、お舟様が来ない時期(海が荒れ航海が無い時期)に一艘の船が浜に近づく。食料もなく、乗っていた人間は既に死んでいた。赤い服を着て、、、、。何故、赤い服を着ているのか?色々な推測の中、梅毒に感染した者が流されたと判断された。(「梅毒」という病名は出てきませんが、村人の解釈する症状から、梅毒と思われます。)その着物から梅毒は感染しないとの判断で女子供に分け与えられた。
 
 村にはない、上質の赤い布は、女たちに笑みをもたらし、仕立て直して女児に着せようと洗濯をする。
 
 しかし、こおの舟様に乗っていたのは、梅毒患者でなはかった、、、。
 
 もがり、、、、、天然痘だった、、、、、。感染力が強く致死率も高いこの病気に女、子ども、老人を中心に村人が何人も死に、生き残った者も、まだ、感染力があるとされ、村から離れていく。それは、死を意味する。しかし、村を存続させるためには仕方が無い処置、、、。
 
 
 
 
今日、読み終えました。
 
 自然の中、貧しい日常を逞しく生き、ささやかな望みや喜びを糧に生きていく人々。家族を大切に無骨だけど善良な人々。過酷な環境に生きる人々。家族を飢えさせないためには、人殺しやその隠ぺいも辞さない、後ろ暗さをしょった人々。
 
 10歳の少年の目を通して語られる村や人々の様子、想い。
 
 そんなあがきを一蹴してしまう、感染症はやっぱり恐ろしい。
 
 予防接種については、その副作用や副反応などで「被害者」となった方もいると報道されている。
 
 でも、やっぱり予防接種や予防薬によって救われる命があるのは事実。社会生活が維持し守られているのも事実。吉村氏は、天然痘の予防の種を日本に持ち帰った人間についても小説を書いている。
 
 だから、私は一定、安全性が確認されている予防接種については、絶対受けた方がいいと、受けるべきだと思っている。予防接種が無い時代に生きた人々の悲劇や不幸の上にようやく獲得された人類の英知なのだから。
 
 
 この時代の、この村の平均寿命は何歳くらいだろうか。30歳すぎくらかな?
 

あと、興味深かったのは伊作の弟妹達の名前。吉村氏は、伊作の弟妹達の名前を伏せて「弟」「妹」としか表現していない。一番下の妹は、死んだ時に初めて「てる」としている。その後、彼女の死を語る時、名前で呼ばれている。弟の磯吉は、伊作の仕事を手伝うようになってから名前が初めてでた。上の妹も、死に瀕した時に、名前がでてきている。これは、氏の意図した事だと推測している。この貧しい村で子どもが、生きのびるのも過酷なのだろう。家族の役に立って初めて人として認められ、死する時に人として生まれてきたのに、何かをなす前に死んでしまった、哀しさを表しかったのかもしれない。しかし、伊作の父も母も村人も子どもを大切にしているのが、とても良く伝わってきた。



 「破船」は、父が認知症になってから読んだので、父とこの本について話したことは無い。
 本を片付けている時に「この本、まだ読んでないなぁ~キョロキョロ」と処分せずに持ち帰った一冊。
 面白かったニコニコ
 父なら、この小説をなんと評するか?、、、、、、、わからないショボーン