父が寝物語に上田秋成の「雨月物語」を聴かせてくれた、と書いたが、これだけだと、すごく高尚に聞こえるが、実は、そんな上品なものではない。

憧れの2段ベッドを買ってもらったのは、小学4年生の時。小さい棚がついていて、本を置けるようになっていた。そこに父が電灯を置いてくれた。もちろん、夜中にトイレに起きた時などに手元で電気をつけられるようにという配慮だったのだろう。が、しかし、結果的に私は、寝ながら本を読むという悪癖が身につく結果となってしまった。

、、、、、、キョロキョロ

こうして、「おやすみなさーい」といって寝ると見せかけて夜な夜な漫画や好きな童話や世界の昔話を夜中まで読んでいたウインク


ここからが、父との攻防戦の始まりだった。

父は企業戦士だったので、当然夜遅い。で、夜中まで本を読んでいる私に気がついて、怖がらせて早く寝かしつけようとして「雨月物語」を話し出したのが真相だ。グラサン

話は面白かったが、寝たくなんかないプンプン父が部屋に来る気配がすると、慌てて電気を消し、寝たふりをする。

そんなに早く寝る訳もないと気がついた父は、真っ暗な部屋に入ると電灯に触れて確かめ出した。電灯が熱いという事は、さっきまで起きていた証拠でバレて怒られて、という繰り返しだった。ある時は、父のチェックが終わってから、電気をつけて本を読んだが、父は部屋の外で隠れていて、明かりがつくや扉を開けて「早く寝ろ!」と怒る、なんて事もよくあった。



雨月物語「吉備津の釜」は、吉凶を占う神事を自分達の都合でねじ曲げて、不幸を招いた身勝手さと女の情念の恐ろしさの物語だが、私にとっては、父の寝物語と騙し騙されの攻防戦の思い出の本なのだニコニコ

父が部屋に入って電灯をさわって「まだ、熱い」といった時は、「吉備津の釜」のクライマックスシーンよりドキドキしてコワカッタガーン

高校に入る頃には、本を読んで完徹など当たり前、さすがに高校生の娘の部屋に父が夜中に来ることはなくなったが、夜中、本を読む時間は本当に楽しかったo(^-^)o