父の本棚1

 

 マクラメの紐は手に入れたものの、トンボ玉など中心に据えるのに良いものがないので、今は、ストップニヤリまた、バザーや骨董市で手に入れよう思う。

 

 という訳で、以前に父が私に本を読む楽しさを教えてくれたことを書いたが、スイッチが入ったらしく、父が私に勧めてくれた本の紹介をしようと思う。名付けて「父の本棚」ニコニコ

 

 中学2年生の時に、吉村昭氏の短編「野犬狩り」が、父が勧めてくれた一番初めの小説だったと思う。短編で、読みやすいと思ったのだろうか。戦後の日本で野犬が群をつくり、それを捕獲する「野犬狩り」を担った人間と野犬の話。残念ながら、その本は手元に無いので、紹介は後日にしたいが、父が吉村昭氏の本を表するのに、「淡々と書かれているのに、胸に迫るものがあり、面白い」ということだ。確かに文章に誇張はなく、事実が淡々と書かれているのだが、一つひとつの言葉が状況の悲惨さ、主人公の慟哭、汗の臭いを感じさせる、、、、、。

 

読んだことがない人には伝わりにくいと思うが、読んでいると静かな熱が心に灯って読み手がじっとりと汗ばむような小説を書く作家だと思う。

 

 今回は、父が2冊目に紹介してくれた「星への旅」

 これも短編。戦記、歴史小説で有名な氏だが、初めは「しなやかなロマンティシズム」と評されるような小説を書いておられた。

 

 

 新潮文庫、表題作「星への旅」他、「鉄橋」「少女架刑」「透明標本」「石の微笑」「白い道」が収録されている。

 

 この中の「少女架刑」と「透明標本」が私のお気に入り。この2作は関連が少しある。

 「少女架刑」は死んだ少女の魂が呼吸が止まった瞬間から、自分の肉体が死後どのように扱われ、朽ちていくかを一人称で語ります。

 

 少女は貧しい家の娘で彼女の肉体は、献体として病院に提供される。少女が自分を見つめて語る口調は、哀しみを湛えていると感じさせながら、どこか醒めている。

 

 すでに死んでいるのだから醒めてて当然なんだけど、自分がこれからどうなっていくのか、少女は静かな不安や怯えを感じている、、、、。「死後の世界」おどろおどろしいものではない。

 でも、死後が静寂とは限らない現実を教えてくれる。そんな小説です。

 

今更ながら、父は思春期の娘に何でこんな本を紹介し続けたのか?

 

自分が、面白かったからだろうな、たぶんキョロキョロ