1945年8月9日　日本とソ連の間で締結されていた日ソ中立条約を破りソ連は満州へ侵攻。

当時日本領であった樺太でも、武意加の国境警察に砲撃が加えられソ連軍の侵攻が始まり、白旗を掲げた人々、赤十字旗を表示したテントに対して攻撃を加えました。

以下、「樺太一九四五年夏―樺太終戦記録」より

当時の北三松豊原駅長は「白旗を掲げた駅舎を攻撃するソ連の非人道的な行為であった」と当時を次のように回想している。

　終戦になると市役所の斡旋で、白布を集めて白旗を作った。

白天竺木綿、さらしなどで幅90センチ、長さ５メートールの細長い急ごしらえであったが駅舎の屋根に3本、周辺の建物の屋上に１、２本ずつ掲げ、無抵抗であることを示した。

　　中略

　仮設の赤十字テントでは病人が手当てを受け、水飲み場はかわいた喉をうるおそうとする人達が黒だかり。

待合室は満室で周囲の建物の陰などにいこい、荷物の上に身を投げかける人、真岡などにおける戦闘について話す人・・・・・・。

宿舎割を待つ疎開者とその世話をやく人たち数百人で、さして広くない駅前はごった返していた。

　その時、駅員が「敵機来襲」と叫んだ。

走り出してみるとソ連機が上空で旋回している。

　しかし、屋上には白旗が何本も掲げられ、広場の疎開者の中の日赤の救急所のテントにも赤十字旗が表示されているので、爆撃をするとは考えられなかったが、安全のために防空壕への避難を命じた。

駅前は花壇を取り払い、５～７人収容の壕28個があり、周囲のコンクリート広場には急患のために3つの壕があった。

ところが、爆撃がいまさら加えられると思わないのだろう、駅の中や、貨客車にはいる者、広場で空をながめる者などが多かった。

　駅構内では満線に近い客貨車の入れ替え作業も変わりなく続いていた。

と、急降下した１機は、入れ替え機関車を目標に爆弾を投下、貨物3番線にいた機関車は轟音とともに横転（機関士は即死し、操車係と連結手は重傷）、続いて2番機が急降下、貨物2番線に投下した爆弾で転車台が逆転した。また貨物1番ホームの鉄道物資部倉庫は焼夷弾が命中して炎上した。

　爆風と弾片の飛散で、駅と鉄道局分室の窓ガラスはこなごなに粉砕され、機銃掃射で、駅の中や広場は一瞬にして地獄のような様相に変った。

　樺太一九四五年夏―樺太終戦記録（金子俊男）