デパートの前で美しい親子を見た。
お母さんは踵の高いブーツを履き、三歳くらいの男の子と手を繋いで歩いている。
男の子は車道側だった。
賢い、おとなしい子なんだろう。お母さんの手を振り切ることはないんだろう。お母さんも男の子を信頼しているんだろうな。
男の子も奇声なんか上げないし、いきなり車道に飛びだしたりしないし、お母さんの言うことをよく聞くいい子なんだろうな。
うちとは大違い。
……あのころ、スニーカーじゃないとだめだった。もちろんスカートなんか履けない。バッグはリュックで、両手が使えないとだめ。
子どもはぜったいに建物側。私はなにがなんでも車道側。
信頼。……まったくできない。ハーネスは命綱だった。持ち手を自分のベルト、もしくはリュックに括り付けてた。
そうしないと散歩なんて無理だった。
保健師や周りから散歩しなさい、なんて笑いながら言われるたび、「簡単に言いやがって」と腹が立ってた。
お散歩はデッドオアアライブだった。
毎日、デッドオアアライブ。
そうやって必死に散歩すれば、指をさされ「犬みたいだ」と笑われ、「子どもをなんだと思っているの」と説教された。
彼らには想像力がないんだろう。
こっちがどんな気持ちでハーネスを使っているか。
多動・衝動タイプの子どもにとって、ハーネスは命綱だ。
ないと死ぬ。死ぬんだよ。
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