その夜。

おばちゃんはずっとケータイで誰かとメールをしながら

タバコを吸い続けた。二段ベットの上から、降りれない。


言葉も交わさないまま翌日を迎え、

一応「いってきま~す」って

言ってはみたけど、

返事はない。



おばちゃんは今日は休みだ。



玄関を出て、いつものバス停に向かわずに

コンビニの前に並ぶみんなに見つからないように

そばのマンションの階段に隠れ出す自分。


足が、動かない。


そしてそのまま、近くにある空地へ逃亡。



蟻と戯れるあたり。完璧に病んでる。


石のベンチが、ひたすら熱い。


近くに店もないし、行くところがない。


おいおい、早速無断欠勤かよ。。。


でも逃げ場はないぞ。


1時間くらい寝っ転がって、汗だくになってたら、


なんかもう全てがどーでもよくなっていた。


ハイ、派遣会社に電話。

もう何かがぶっ飛んでるので、強気でGO!!


「今、サボって空地にいます。もう働けません。」


いやいや!!ってアロハシャツのおっちゃん。

そりゃぁ困るだろうよ、こんなん雇っちゃって。

とりあえず、マネージャーにはこちらから連絡しておきますので、

また折り返します!!

焦るおっちゃん。そんな声に、妙に落ち着く自分。


サイテーである。


部屋に帰って、ビックリするおばちゃんを尻目に、

「寝る!」って言い放って目の前で思う存分寝てやった。



その後は、石垣島の話が進み、それと同時に部屋の片づけと、

光熱費の支払いなんかして、

アロハシャツおっちゃんに「明日迎えに行きます…。」

って言われ、荷物をまとめてた。

うっかり捨てずにテーブルにしといて良かった、

段ボールさんよ…まだもちょっとよろしくな。



って壊れてないほうの段ボール一個に、ぎゅうぎゅうに

片っ端から荷物を投げ込んだ。


布団とか洗濯用グッズとか、もういいや、くれてやる!!

ってなんとか最小限にして、郵パックおじちゃんを呼ぶ。


良かった、この前のおっちゃんじゃなかった。


コンビニに行ったら、話を聞きつけた大宮ボーイの

通称「だ~か。」に引き留められた。

夕陽浴びながら、二人でしゃがんで、

「俺もすぐ辞めようと思ったんだけど」

って優しく説得してくれた。



けど、あたしは前を見たら、

(ってそれが決して「前」ではないことは後々気付くんだけど)、

後ろを振り返らない。なんて言ったらカッコ良いけど、

実際は、「振り返れない」んだ。



ビーチの子たちが、ビックリして来てくれた。


お別れ会に、飲みに行こ!って。


モチロンOK!!


で、夜な夜な飲んで飲んで、刺身食って飲んで、

カラオケ行って歌って、朝の4時くらいに

HYを外で熱唱した。青春だね。


HYの「あなた」かな。

みんなそれぞれ、誰かを想いながら、泣きそうになりながら、

空見上げて、歌ってた。
その晩。
ワゴン車の荷台に8人くらいで乗り込んで、

車で1時間くらいの海葡萄丼屋さんに向かった。

なんかドラマのような光景。

荷台に女の子、運転手は男の子。

名古屋の子や大宮の子、横浜とか大阪の子に
沖縄生まれの子。

みんなそれぞれ色んな背景抱えて、この島に来てた。

でも、ただ単純に「楽しみたい!」って理由の子は、
一人もいなかった。

身の上話なんかをしながら、お店に到着。

みんなで酔っ払って、緊張が少し解けた。




寮の部屋に戻ると、相変わらず電話で愚痴ってるおばちゃん。

あれやま~、と思いながらも明日の準備をしてた。

おばちゃんやたらと機嫌悪し。

やっぱ、一人で行っちゃったのは、マズかったのかな?

「楽しかったの?そう、良かったね!」って若干ふてくされ気味。。

だから一応、行く前に声かけたんだけどな~、
って何も言えなかったけど、
まぁいっか、って放っといた。

翌日、マネージャーに昨日のお礼をして、また仕事に励んだ。

なんかオーナーに呼び出されて、
会員おじちゃんタチの豪華な会合部屋に連れて行かれ、

自己紹介させられた。

今までこんなこと、一度もなかったらしい。

妙なプレッシャーを感じる。


なんで?あたしだけ?


仕事を終えたのはいいけれど、昨日飲みすぎちゃったし
疲れ果てて、プレッシャーにも押し潰されそうで、


そんな状態であの部屋に戻る気がしない。


まだ怒ってんのかな。。。


まぁ帰るとこはあそこしかないんだからしょうがないか、

と割り切って帰って玄関の前。

部屋の中から電話してる声が響いた。


めっちゃあたしのグチ。


うわ~~~玄関開けられねぇ~~~、って

昨日の仲間たちの部屋にそのままGO!


「どしたん?」って聞かれたけど何も言えなかった。


「ん~~、なんか飲みたくなっちゃってさっっ。」

って誤魔化して、今度はお酒に逃げてしまった。



翌日、遅刻。

おばちゃん、起こしてくんないで先行っちゃった。


その夜、おばちゃんに説教食らった。

まあ、当たり前なんだけど。


朝起きなかったこととか、それを怒られるのはわかる。

うん、納得。しょうがない。反省してるよ。


でもそのうち、昨日の仲間のこととか、あんた病気なんじゃないの?

みたいな、根掘り葉掘り説教し始めた。


さすがにカチンときて、

「そこまで言われる筋合いない!」って

言い残して部屋を出た。



そして、


またお酒に逃げた。



次の日は遅番だったから、おばちゃん出てくの見計らって、

部屋に戻った。


大量の吸い殻。


うぉーーーーーーー、窓開けよ、そしてシャワーじゃ!

ってちょっと自分奮い立たせてたら、

ビーチスタッフの女の子からメールがきた。

『相部屋のおばさんとなんかあったの?』

って。


どうやら朝の送迎バス内で、

「部屋変えてください!!」

って物凄い剣幕で総務部に電話していたらしい。

それを発見して、メールくれた。

「ちょっと話をしたら文句言われて、迷惑してるんです!」

っておいおぃぃ…マジかよ…。



途端にガクッて膝の力が抜けた。



頑張ってシャワー浴びて、仕事に行ったけど

バスからの景色も、キレイなはずの海も、


なんか全ての景色がすでに写真みたいだった。


何にも入ってこない。

仕事終わったらどうしよう。


同期のKくんからも心配メールがきた。

『なんかおばさんめっちゃキレてるけど、大丈夫?』

って。職場にまで撒き散らしてるとは・・・


くぅぅ!って思ったけど、怒れない。

自分が悪い。


帰りのバス停で、寂しさMAXになってしまった。


また、違う部屋で寝かせてもらった。


翌日お休みだったから、ヒマでまたいつもの逃避グセ勃発。

懲りない性分。

ナゼかケータイで求人サイトを見てるあたし。



うん、離島もいいな♪

そんなときだけ、ウキウキできる。


って、こっそり石垣島のホテルに履歴書をFAX。

何かあったらの保険のつもりらしい。

自分、なにしてんだろ、これじゃただのホテル荒らしじゃん、

って思っても、

逃げ場を確保しておかないと、



どうしても安心できなかった。
4日目は、お休みだった。

相部屋のおばちゃんとは、休みが合わなかったから、
疲れたカラダを休めようと、丸一日爆睡してしまった。

これが、いけなかった。


仕事を終えて帰ってきたおばちゃんに、
「ずっと寝てたの?」って驚かれて
自分はすっごい寝ちゃうって、つい話しちゃった。


おばちゃんは
「不眠症、みたく過眠症ってのもあるんだってよ。」

から始まって、ココロの病気トーク開始。


おばちゃんは、実家でウツで引きこもって、病院通ってたらしい。

そしてあたしと同じく、自分を追い込んでみよう、って沖縄まで来たらしい。

そういえば、お父さんと毎晩電話して、
仕事の愚痴をグチグチと言ってたな。。って思い出した。

ってなんかあたしと一緒で共感はできていいけど、ちょっとヤバいんじゃ?

って危機感を感じる。

「いつでも帰っておいで。」母親の言葉が、頭をよぎる。

あたしはまだ通院もしてなかったし、寝過ぎなのも
支度に時間がかかるのも、疲れやすいのも

ただ自分が怠け者だと思い続けていたから、

話を聞いて、自分、病気なんじゃ?って思ってしまった。


次の日の朝、妙にダルくなった。
そのまた次の日、とうとう起きれなくて、マネージャーに
「休みます」って電話して、

あたしは眠りの世界に逃げ込んだ。



翌日。フロントへ行くと、マネージャーが心配して、
話を聞いてくれた。

話しながらまた涙が出てきた。

そしたら、「今日は有休!ビーチのスタッフに連絡しとくから、
マリンスポーツでも何でも、好きに遊びまわって来い!!」


よっしゃぁ、顔パスゲット☆★!!

なんて、まさか思えない。

遊びに行くのさえ面倒くさい。


まぁ折角だし行ってみるか、って寮に水着取りに帰って、
再びプライベートビーチへ。


従業員はものすごい数いるのに、マネージャーは顔が広いらしく、
あたしが着替えてる間に、みんなに話がまわってた。

ビーチで飲食販売してるスタッフたちが、やたら優しい。

やっぱりみんな真っ黒なんだけど、
前の真っ黒軍団の肌の色より、少し優しい色に見えた。


どうやらみんな男の子も女の子も、同じ寮にいるらしい。
あたしはフロントで、同年代がほとんどいなかったから、
そんなちょっとした触れ合いが、嬉しかった。



真っ白な砂浜と、真っ青な海と、それに溶けこんじゃいそうな 空。

自称カメラ大好き人間だったあたしには、もううってつけの景色☆★!!


・・・のはずが、ナゼか血が騒がない。

大好きな「トリハダ」、が立ってくれない。

そして海荒れてて遊泳禁止。


そういえば、持ってきた愛カメラ、一回も動かしてあげてないな…、
って
しかたなく、ビーチチェアに横になって、ボーっとしてた。

ビーチスタッフの女の子が、内緒でビール持ってきてくれた。

よし!!酔っ払ってしまおう。



ほろ酔い気分で、ビーチスタッフとお喋りして、
話の流れで歓迎会をしてくれることになった。

「今日の夜、ワゴン車にみんな乗っかって、海葡萄丼食べに行こう!!」

って言ってくれた。


ちょっとだけ、希望が湧いた。

さてはて、着いたフロントは、会員制のゴルフ場だけあって
なんか「地元の大地主」の香りを漂わせる黒いおじいちゃんたちで賑わってた。

一緒に働くのは長期で滞在中のアルバイト4人と、社員さんたち。

バイトの1歳年上の女の子は、なんと実家が徒歩圏内でめちゃ近い。

軽くおじいちゃんのオーナーは、これまた東京の人で、昔はパイロットをしてたらしい。
すげぇ!!

引退して夫婦で沖縄暮らしをしているそうな。

ビックリしたのは、あたしが前勤めていたアパレルショップの本社の社員さんが、
オーナーの息子だったこと!!

ん?? なんか、縁を感じるぞ…??

…ってオーナーも思ってくれたのか、ゴルフの知識なんぞ1ミリもないあたしを、

スマートにドライブに誘ってくれた。


って言ってもゴルフ用のあの車ね(笑)。

んで、2時間くらいだだっぴろいグリーンの中を、二人でドライブ&時たまおサンポ。

オーナー、なんだか動きがクリント・イーストウッドみたい。

さすがパイロット!!


場内のレストランでお茶して、なんか全てが顔パスだしみんなお辞儀してくるし、

愛人にでもなった気分(笑)


お仕事内容は、フロントでお客さんの対応・清算とか、ショップの販売とか、
まぁ慣れちゃえば簡単なもの。

しかも地元のお金持ちおじいちゃんばっかだから、アットホームで
時間はのんびり過ぎていく。

早朝から夜まで働いて、送迎バスを待つ。

そんなんで3日間くらい過ぎたある日。


仕事終わりに、

初めて見た、沖縄の、雷。

夜空にもくもくもくっ!!って、おっっっきな入道雲がそそり立ってて、

その雲の中でね、ピカピカッ、って閃光が走る。


物凄いドラマチックで、それでいて怪しげで、

もうジブリの世界。あっけにとられて

30分くらい、ボーっと見てた。


バス、行っちゃった。
次のバスまで1時間弱。

フロント戻ってみんなに笑われて、
事務所のベランダで、タバコ吸って時間潰してた。

オーナーも出てきて、マル金吸いながら、

「ホームシックになってないか?」

って。


ずっと避けてた母親からの電話を見透かされたようで、

思わず、まだダイビングショップにいると思ってるだろう母親に、
電話した。

声聴いたら、勝手に涙が出てきた。

「いつでも帰ってきなさいよ、うちのアパートきてもいいから。」


ただの慰めであっただろうこの言葉が、あたしに

火をつけた。
那覇から名護まで高速で向かった。

みんなの荷物乗っけて、あたしだけ段ボール2つで多くて、
しかも郵パックの伝票、ナゼか東京発じゃなく那覇発になってる。

ヤバい。
逃げてきたのバレたかな??


ま、いっか、派遣会社のおっちゃん、またもやアロハシャツだし。
なんかすげーにこやかだし。

助手席に乗って、外を眺めながら、ちょっとウキウキしてきた。

高速の添え木の植物が、黄色いプルメリアで可愛かったのを覚えてる。



1時間くらい車走らせて、到着したのは

おっっきな会員制のリゾートホテル。
なんか敷地内に可愛いバスとか走ってるし、ディズニーランドみたい。

ほかの二人は客室清掃のお仕事なので、ここで一旦お別れ。


一人、まずゴルフ場のフロント行ってご挨拶。

え?なんか、みんなスーツなんだけど…。
アロハシャツじゃないの?ここは。

思いっきりサンダル履いてきちゃったんですけど。。


おずおずレストランへ通され、おずおずマネージャーと軽い面接。

まぁ好印象で、今度は寮に荷物置きに行った。
寮はちょっと離れた場所にあるから、行き帰りは送迎バスに乗るらしい。

気になっていた相部屋の相手は、一緒にきたおばちゃん。

良かった安心したねぇ~♪なんてキャピキャピしてた。

(今後何が起こるとも知らずに…)


当日は部屋のカーテンやら必要なものを、総務の人に連れてってもらって
100均で買い集めた。

それから、同期の3人で焼き肉を食べに行ったな。

同い年のKくんと、40手前のおばちゃん。

部屋に戻ったら、おっ♪今度はクーラーちゃんと効くじゃん♪♪
まぁちょっと汚いけど、この前のとこより全然マシ。

二段ベットだったから、遠慮して上をとった。
明日から、お仕事開始だ!!

って、テーブルにした段ボールの上に
二人でカップラーメン並べて、
タバコの煙もくもくいわせて、あぐらかいて食べた。


でもなんか急に寂しくなって、
寮の前のコンビニでビール買って、羽田まで送ってくれた友達に電話した。

向こうも一緒に飲んでくれて、電話越しに酔っ払いトークしてた。

ヤンキー座りで、目~焦点合ってない。
ヤバい。


さてさて次の日、コンビニの前にくる送迎バスに乗り込んだ。
色んな職種の人、ほかの寮の人。
めいっぱい詰め込まれて、バスはいざホテルに向かうのでありました…。

ダイビングショップを逃亡して、
とりあえず向かった空港。

ちょっとボーーーーっと、飛行機を見てた。


そこで、ふと思い出した。

東京の友達が、教えておいてくれた連絡先。


誰の連絡先か、っていうと、
その友達の彼氏が、中国に留学してたときに知り合った、
沖縄在住の男の子、っていうあまりにも遠すぎるビミョーなライン。


まぁものは試しだ、話はしといてくれるって言ってたし、

電話してみよう!ありがとう携帯電話!!!


顔も知らないその人に、
「はじめまして~。」って今いる状況をいきなり説明して、

なんと4日間お世話になることになった。

空港まで迎えにきてもらって、

レゲェがガンガンの軽に乗り込んで、

ほんとにザ・沖縄って感じのひろ~い民家に到着。


男の子は同い年で、両親とお姉さん、おばあちゃんと暮らしてる。


お姉さんの部屋に泊めてもらうことになった。

お姉さんは子供を亡くして、離婚したてだったみたい。

寂しかったのか、夜な夜ないろんな話をしてくれた。


沖縄の文化とか、東京に行く沖縄人は極まれだとか、

沖縄人は一部を除いて金銭的理由で県内から出ないとか、

お笑い番組の話とか、うちの裏にMAXのナナの実家があるよ、とか、


沖縄人は日本の内陸地に住む人たちを「ナイチャー」って呼ぶんだよ、

で、自分たちのことは「ウチナー」、とか。



男の子はサンシンを弾いてくれたり。

ひっそりと育ててる、あまりよろしくない植物を見せてくれたり。


国際通り観光に連れていってくれたり、友達呼んで嵐の中飲みに連れてってくれたり。


オリオンビールと、海葡萄とゴーヤとか
もろもろを食べながら、ちょっと酔っ払いながら。

店にはやっぱり、HYとか
当時流行ってた沖縄出身のアーティストの曲ばかりが流れてた。

さすがにMAXは流れなかったけどね(笑)。


そこで
「東京の人ってさ、みんなそんなに顔薄いの?」って聞かれた。

ビックリ。初めて言われた。どっちかっていうと濃いほうなんですけど…。


そんな風に4日間は、呑気に買い物したり、一日中寝かせてもらったり、
ちょっとカラダを休めて過ごした。


あっという間だったな。
最後の日、お姉さんと男の子が、那覇空港まで車で送ってくれた。

これまた空港の近くにある、
ホテルのアルバイトを管理してる派遣会社にタクシーで向かう。

またアロハシャツのおっちゃん。


同期があと、二人いた。同い年で名古屋からきた男の子と、
同じ東京のおばちゃん。

みんな一緒にワゴン車に乗って、
いざ!ホテルのある名護へ出発!!
ヘトヘトになって、ダイビングショップに辿り着いた。

全体的に木造りで、犬がいる、ちょっとお洒落な空間。

うん、いいんじゃない?


事務所に通されて、話を聞いた。

「今回募集をかけたのは事務なんですが、事務は割と手が足りているので
 週半分は海に出ていただきますね。」



え!?  海!!??



どうやら、バナナボートとか、マリンスポーツサービスの補佐的な仕事、

「浜辺で営業かけたりとか、浜辺で安全管理したりとか、
 時にはボートに乗ってシュノーケリングのお客さんと海に入って
 先導したりとか・・・一緒に潜って、そのあと営業かけたりとか、
 そうゆうあくまで「補佐」的な仕事ですけど、大丈夫ですよね?」

「補佐補佐」って…

あたし、
泳げないんですけど。。。

そして水着1着しか持ってきてないんですけど…。


返す言葉がない。


そんな矢先、海に出ていたスタッフが戻ってきた。


そこにいたのは、
まままままままままままっくろ!!!

真っ黒軍団。

一昔前の「ゴンギャル」って呼ばれた人種より遥かに黒い。

「とりあえず、彼らと一緒に後片付けしてください。」

え、荷物は? 寮の部屋は?  一休みもナシ?


状況にちょっと引きつつ、シュノーケルとか足ヒレとか、
みんなで仲良くホースで水洗い。

酸素ボンベとかいきなり持たされて、超重い。

「だいじょぶだいじょぶ~、
 すぐ、こんなんなっちゃうから~(笑)」

って黒々した腕を見せてくる男の子。

戸惑う、あまりにも場違いな真っ白なあたし。



「明日から海出てもらいますんで~今からミーティングしま~す」

っておぃ!!

だから休憩は!?



簡単な自己紹介と、説明と、スタッフの今日の反省会など。

気づいたら、8時くらい。


へっとへとでやっと通された部屋は、沖縄!!
って感じの石造りの、古びたアパート。

しかも階段オンリー。そして5階。

段ボール二箱を、一人で必死に運んだ。


鉄の玄関は錆まくってて、昼間の太陽いっぱい浴びて、
まだ触れないほど熱い。


エアコン全然言うこと聞いてくんない。

絨毯が、やたら汚い。っていうかカーテン無いじゃん。

先に言っといてよ~。



荷物をほどいて、段ボール2つをたたんで、

コーラとラッキーストライクで休憩。


なんか…、ヤバくないか?

ちょっと話違い過ぎない?ってものすごい不安感に襲われる。全く眠れない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、


無理!!!



どうしよう、断るにもなぁ。

そうだ!!もう一件受かったほうのホテルに電話してみよう!

っていつもの逃避思考が始まってしまった。



もう夜ちょっと遅いけど、試しに電話してみた。
ほんっと我ながらしょーもない…。


プルルル…♪

「ハイ」 よっしゃ!!出た!!!


まだ空いてますか?って聞いたら、受け入れOKとの返事。

準備があるから、4日後からになっちゃいますけど。って。


勢いで、「お願いします!!」っておいおい。


ダッシュでショップの店長に、「東京帰ります」って嘘つきに行く自分。

もう周り何も見えてないね。


店長は渋々。
軽く説教されながらも、とりあえず今晩は泊めてくれることになった。

たたんだ段ボール組み立て直して荷物まとめて、
徹夜で郵便局調べたり、

ケータイから朝郵送の手続きしたり、シャワーあびたり・・・

もう、夜逃げの気分。


そして迎えた朝。

エレベーターなしの5階の部屋まで、郵便局のおっちゃんが来てくれて、

荷物の多さにちょっと困惑気味。


ごめんなさい・・・・・


でも、下りのが楽でしょ?

お仕事だから、お願いね、って思いながらさすがに手伝わなかった。



店に部屋の鍵返しに行って、黒い人たちに白い目で見られる白いあたし。


そんなん気にしてる暇はないのだ!!


とりあえず逃亡完了!!



…さて、空いた4日間。



何処に向かおうか。
 
 
8月1日。

出発の日。

うっかりお風呂も入らず寝ちゃったあたしは、

寝坊までしてしまった。

親友のうちで速攻でシャワー浴びて、
メイクもせず、最終身支度をしていた。


当時付き合っていた彼氏が、バイク飛ばして来てくれた。

1年は行ってこようと思ってたから、

「花の遠距離恋愛だね」なんてふざけて、


でも、時間がなくて良かった。

泣く時間もなかったから。



友達の車が到着して、すっぴんのままいざ羽田へ!

友達は、お餞別にターコイズのペンダントをくれた。

嬉しかった。


フライトぎりぎりに到着して、飛行機に乗り込んだ。

久しぶりの大好きな飛行機、しかも窓際♪。


でもあれ?変だな、なんか緊張してる。すでにトイレ行きたい。


そしてすでに寂しい。



隣の女子大生の二人組は、雑誌に夢中になってる。

離陸の時間が近づいた。

女子大生、アイマスクしちゃった。



え、空見ないの?



飛行機慣れしてるのかな~、もったいないなぁ。

まぁ価値観人それぞれだけどさっ。

なんて強がりながら、離陸時の重力を存分に楽しんだ。


とても晴れていたから、窓にはりつきじーっと空を見る。

小さいころから空とか雲とか大好きだったから、いつも飛行機に乗ると
夢中になって一瞬たりとも見逃せないの。もったいなくて。超大変。

入道雲がもくもくしてて、パキパキした青と白のコントラスト。


めっちゃキレイ!頭ん中が興奮状態なのに、なのに!


誰かに言いたい、伝えたいのに、ひとりぼっちだ。


この瞬間に、やっと気付いた。

一気に不安感がカラダを包み込む。

自分の始めたことの、自分の中での大きさに今更ながら恐れ入ってる。

自分追い込みすぎたかな…、なんて

緊張して、1時間半のフライトで3回もトイレ行っちゃった。


その度に起こされる女子大生。

ごめんなさい…


そんなこんなで余裕なくなってるうちに、あっという間に那覇に到着。

短大時代に沖縄にはきたことがある。


着陸するといきなり目に入る、飛行機の下に広がる真っ白な地面が眩しい。

そうそう、この感じ。


ちょっと、希望が湧いた。



空港のトイレでメイクして、お腹すいたからバーガーショップに入って休憩。

みんなに「無事着きましたメール」を送信!


こっから空港近辺にあるらしいダイビングショップまでタクらないと。


聞いてはいたけど沖縄は電車がないから、(当時モノレールはできてたけど)

タクシーの初乗りが450円と格安。

アロハシャツきた真っ黒なタクシーのおっちゃんに、住所書いた紙渡して、

お決まりの「どっから来たの~」バナシをしながら、

いざ!!ショップに向かったのであります。。。

 

22の夏。

あたしは旅に出た。



突如思い立って、

そんな時のあたしの瞬発力と行動力は、半端じゃない。

自分でも驚くほど、思い切りが良い。


7月の4週目。

その頃のあたしの頭は家族のことでいっぱい。

みんなが点々バラバラになって、誰の手にも負えない状態が続いてた。


もうすでにウツになってたのかな。

全く起きれない。仕事が続かない。

友達と飲んだくれてばかりで、自分が何を考えてるのか、何が大切なのか。


全て見失ってた。


まだ甘えがきく環境に自分を置いているせいなんじゃないか。

自分を追い込めば、この自堕落な生活に終止符をうてるんじゃないか…、

なんて考えついちゃったモンだから、

自分を奮い立たせるために、一回、

完全に「ひとりぼっち」になってみようと思った。



そうだ!夏だし寮つきのリゾートバイトがいいな!!

場所は…うーーーーん、

できるだけ遠く…、すぐに帰って来れないように。
誰も来ないように。



そして、あたしが選んだのは沖縄だった。



ちょうど、一人暮らしを始めてから一年後のこと。



そう思いついたら即行動開始。

沖縄のリゾートバイトの求人に片っ端から電話して、履歴書をFAXする。

リゾートホテルのゴルフ場のフロントと、

ダイビングのイベントショップの事務のお仕事。

この2件からOKをもらって、
できればイベントショップのほうが楽しそうだから、

ホテルの仕事は断って、那覇にあるそのショップに電話した。



出発は8月1日。

一週間弱しかない。

その時「実家」というものをほとんど失っていた状態のあたしは、

愛車だった白いジョーカー君を売って

家具類はレンタル倉庫借りて全部入れて、部屋を引き払って、

沖縄に荷物の段ボールを送って、

一応親や友達たちに報告に行って…。


今思えばめっちゃハードな一週間。

汗だくになってよく頑張ったなぁ(笑)。


出発の前日。
7月31日の夜、部屋の引き払いがやっと終わって、

親友のとこに泊まりに行った。

荷物が重すぎて、自力で羽田まで行くことに断念したあたしは、

友達にヘルプの電話をした。


「明日、羽田まで送ってください。。。」


車でわざわざ千葉から来てくれることになった。

集合は6時半。


その日は、疲れ果てて、お風呂も入らず寝ちゃったよ。