レッジーナ移籍が決定した2002年東戸塚グランド。別れを惜しむサポーターが多く詰めかけた。
そのサポーターに特に応える訳でもなく、クラブハウスに帰る。中村俊輔はそういうプレイヤーだった。
入団時から技術は抜きに出ていた。
開幕前のプレシーズンマッチ、国立でのヴェルディ戦。左ハーフで先発した俊輔はグランダーで右サイドを駆け上がる鈴木健人にピタリと合わせた。衝撃のサイドチェンジだった。
次第にチームの中心を担い、存在感を増した。2000年はチャンピオンシップで鹿島に敗れたものの、MVPを獲得した。勿論前期優勝に貢献したが、でもその賞の意味合いは試合を決定づける技術に贈られた意味合いが強いものだった。
そして今回 Jリーグで2度目のMVPを獲得した。
彼はテクニカルな魅せるプレーは勿論、チームを引っ張る戦士として受賞した。彼のプレーには華麗という印象より、勝つことに直結する力強いメッセージが多かった。トリコロールを身を纏い、全身全霊で闘う姿に多くのサポーターは、中村俊輔と優勝したいと心に刻んだ。
結果は叶わなかった。
イングランドのフットボールを書いたニックホーンビーの小説には以下文面がある。「フットボールは恋愛と同じだ。幸せだと思えば、突然悲しみが訪れる。そこには苦痛や痛みを伴うものだ。」
等々力競技場のアウェースタンドには試合前希望に満ち溢れていた。しかタイムアップを告げる笛が鳴ってから、悲しみ、苦痛や痛み、現実と受け入れがたい残酷な事実がそこにはあった。
ニックホーンビーの小説には以下文面が続く。「それでもフットボールは続いていく。」
クラブが存続する限り、立ち止まる事は許されない。Jリーグアワードでは中村俊輔は前を向いていた。中村俊輔は俊輔と優勝したいという弾幕を一生忘れないと語った。それは感傷的な発言ではなく、共に優勝するといった力強い宣言だった。
私たちのフットボールは続く。中村俊輔と共に。