【ソウル西脇真一】石川県の能登半島沖で救助された脱北者9人は4日、日本から韓国へ移送され、脱北者の施設に収容された。当局の尋問を受け、不審点がなければ定住支援施設で教育を受け、韓国国民として社会に出る。ただ、激しい競争社会の中で差別や就職の壁にぶつかる人も多く、厳しい現実が待ち受けている。 韓国統一省によると国内の脱北者は10月現在で2万2400人。07年に1万人を突破して以降、急増している。生活苦から逃れようと脱出する人が後を絶たないのが実情だ。韓国に入った脱北者は、情報機関の国家情報院や捜査当局による合同尋問を受け、動機や家族関係などを調べられる。偽装脱北が発覚するケースがあり、昨年は亡命中の北朝鮮元高官の暗殺指令を受けた工作員が摘発された。 その後、ソウル近郊の施設で生活習慣の違いや買い物の仕方などを12週間学び韓国人としての生活が始まる。ただ、今年2月に韓国警察庁が発表した調査結果によると、脱北者世帯のうち、月平均所得が100万ウォン(約6万5000円)未満が半数に上る。韓国の平均は375万ウォンだ。また就職可能な人のうち5割以上がアルバイトなどの非正規職で、自営業や正規職に就いているのは2割だった。経済的な苦境より脱北者への差別のつらさを訴える人も多い。 【関連記事】
「この記事の著作権は毎日新聞 に帰属します。」