アーティスト 石村嘉成さん と ヒロ君のこと

 

 

 

たまたま見つけた石村和徳さんのアメブロで自閉症の息子さんの写真を見た時、

20年間しまっておいた宝箱が突然眩い光と共にゆっくりと開くように思えました。

 

英語塾を営んでいた私は、仕事が夕方なので、午後三時までのパート勤務ばかりを選んで、昼と夜双方の仕事をなんとかこなしていました。

 

子ども達が二人とも私大に進学し、家計のやりくりに奔走していた頃、小学一年生の自閉症の児童、ヒロ君のお世話をする補助教員として働いていました。

 

あれから20年経っていますから、成長したヒロ君は石村和徳さんの息子の嘉成さんとは2歳年下の26歳。

 

ものすごく絵が上手だったヒロ君と嘉成さんが重なり、父親の和徳さんのブログに引き込まれてしまいました。

重度の自閉症だった嘉成さんはフランスの美術展で受賞し、画家として活躍されるまでになりました。

 

昨年の暮れには「アーティスト 石村嘉成」としてNHKの番組にも紹介されたようです。

 

今はもう会うこともないヒロ君も今も絵を描いているのでしょうか?

 

嘉成さんのように賞を取ることはなくても描き続けていて欲しい。

 

図工の時間、ヒロ君はいつもブツブツ言いながら一心不乱に絵を描いていました。

抽象画のように見えましたがヒロ君にしかわからない何かを描いていました。

とても小学一年生の描く絵とは思えない出来栄えでした。

 

でも描き上がった途端に黒い絵の具をパレットいっぱいに出して全部塗り潰してしまうのです。

黒が無くなれば茶色や緑。

とにかく元の絵がどんな風だったか分からなくしてしまうのです。

 

当時ガラケーの携帯電話なら持っていたのに、絵が完成した瞬間を撮影すれば良かったと今でも悔やまれます。

 

ヒロ君の子育てに苦労されていたご両親に見せてあげたら

どんなにか喜んでもらえたことでしょう。

 

ヒロ君は「静かにしましょう。」

とか、「国語の教科書を出しましょう。」

などの指示は言葉で言っても直ぐできないのに、

絵を見るとパッとわかるのです。

 

 

 

キョロキョロ 自閉症の子ども達は耳からの情報よりも

目からの情報の方が取り入れやすい

 

 

養護の先生と私の二名が交代でヒロ君についていましたが、

養護の先生は絵が上手で指示絵のカードをリングで持ち歩いていたので、

私も使わせてもらっていました。

 

 

 

『光とともに』 戸部けいこ作

 

 

 

毎日ヒロ君を見ていて、自閉症と診断された子ども達の右脳と左脳の関係が、

他の子とは違うのかもしれないと漠然と感じていました。

 

ある説によると、多くの人の左脳は右脳を抑制し、

絵を描くための右脳の機能を妨げてしまっているのだとか。

左脳の言語機能などを抑制することで

右脳の働きを優位にさせることができるとのこと。

 

脳の仕組みの研究が進み、

自閉症の子ども達がもっと生きやすい社会になることを願っています。

 

 

石村さんの著書
自閉症の画家が世界に羽ばたくまで(扶桑社)
石村 和徳 (著), 石村 有希子 (著), 石村 嘉成 (著)

 

自閉症の画家が世界に羽ばたくまで (扶桑社BOOKS)