置き去りにしてしまった愛馬

 

 

 

 

(昨日の記事の続き)

道なき道を進んでいた馬車は遂にぬかるみにはまり、

前に進めなくなってしまいました。

祖父「リュックを持って降りるぞ」

「お馬は?」

祖父「綱を解いたら私たちの後をついてくるだろうから危険だ。

    このままにしておこう。」

とにかく逃げ延びることだけを優先するしかなかったのでしょう。

母は今でも「あの馬はどうしただろうか?可哀想なことをした。」と呟きます。

 

広い道までたどり着いた時、暗闇の向こうから近づいて来るトラックが見えました。

 

祖母は「あれに乗せてもらおう!」

 

と飛び出して行こうとしましたが、

 

「待て! 敵のトラックだったらどうするんだ! 」と祖父は制止しました。

 

「どのみち死ぬんじゃあ! 放せ〜!!」

 

大声で叫びながらトラックの前に飛び出し、両手を広げた祖母。

 

彼女まだ30代だった。

 

「死んでたまるか!」と言う強い思いがあったのでしょう。

 

急ブレーキをかけたトラックには日本の兵隊さん達が乗っていました。

 

乗せてもらったトラックには蓬を干したものが敷き詰められていたそうです。

 

母は蓬の香を嗅ぎながら胸を撫でていました。

胸のドキドキはいつまでも収まらなかったそうです。

 

 

誰もが命がけで必死だった77年前の夏の夜。

 

あなた達のお陰で今私は生きています。

 

ありがとう...。