どこから・だって・いいわよ。要は。店へ入れればいいのよ。そうすれば。雨や雹や霰が堕ちてきやしないか・なんてことに悩まされずに済むわ。ヘンなオジさんが。恩着せがましく・傘を広げ・やしないか・なんて。そんなこと・されたら。ありがたくもなくて・迷惑なだけだわ。なんて・ことも。考えずに済んでしまうのだし。
それに。
裏口というのは。この店の中で並べられる。いろんなものが。搬入される場所でもあるわけだよ。キミたち。若いキミたちふたりにとって。きっと。これからのちのキミたちの人生において。折に触れて。思い出しては懐かしむに足る。なにごとか。を。目の当たり。に。する。ことがありうる。かも知れない。と。いうものさ。
なにを大げさな。
葡萄パンだって。プラスチックの髭剃りだって。エロ漫画だって。豚カツ弁当だって。なんだって。コンビニエンス・ストアアで売られているものなら。どんなものを見たって。驚いたりするものか。
だったら。この店へ入るのに。どこの扉から入ろうと。同じことじゃあない。ねえ。モタ。あなたは。なにを見ても驚かない。なにを見ても感じない。ただ。目に映ったものを。頭の中で。逆さの像にするだけ。だったら。どこから入ろうと同じことなら。早く入ってしまいましょうよ。店の中へ。コンビニエンス・ストアアへ。
レエコの言うとおりだ。とにもかくにも我々にとっていまいちばん近い入り口は。目の前にある裏口の木戸口であるわけなのだから。
あんたたちに言われるまでもない。入るさ。俺は。俺の意思に従って。コンビニエンス・ストアアの中の人。に。なるんだ。
ただし。ただし。俺がコンビニエンス・ストアアへ入ったからといって。俺が。裏口から。コンビニエンス・ストアアへ入ってしまったからといって。
俺が。最前からずっと。俺のオツムを悩ませている。気に掛かり事。のことを。忘れたり。放っておいたりしているわけではないんだ。
ああ。あれだね。モタ。おまえさん宛てに幾度も手紙をよこした相手のこと。だっけか。
なに? それ。へえ。この哲学者さん。案外モテるんだ。ラヴ・レタアが何通も。いかすわね。それじゃあ。なにも。わたしのお尻の片方ばかりじろじろと盗み見ていることなんてないじゃあないの。
馬鹿。相手が誰だか。男性だか。女性だかもわからないんだぞ。
あら。そんなこと。どうだっていいじゃあない。恋に性差はないわ。あなた方だって。わたしだって。男なのか女なのか。ほんとうのところは。わかんないじゃあないの。区別の曖昧なことなんて。どうだっていいってことよ。本当のところは。ね。
俺は好かれたかないね。男に。なんか。それに俺は。好きになんかなりたかないよ。男の。こと。なんか。あんた。だって。そう。だろ?
好かれたい。とか。好かれたくない。とか。好きになりたい。とか。好きになりたくない。とか。そんなことども。が。おまえさんの自由になると。でも。思っているのか。この。バカ。この。アホ。この。ノータリン。この。シアワセ。もの。
本気で。そんなこと。を。考えて・いるのか。おまえさんの身の回りのこと。や。おまえさんとはなんの関係もない。遠い世界での出来事に。おまえさんの意思や。おまえさんの好悪の感情が。ほんの少しでも。反映される。と。おまえさんは。本気で。そう。考えているのか。
だったら?
だったら。
わたしは。おまえさんの身の上に。
傘を差しかけて。あげる。
また。傘だって。いやなオジさんね。わたしだったら。モタがどれほど自分のことを頼みにしていようが。そんなこと。これっぽっちも気にならないわ。モタが。自分のことを男性だと信じていようが。モタが。自分と。同性だと思っているひとたちとのつながりを断ちたい。と。考えていようが。そんなこと。どうだっていいことよ。わたしにとっては。あなたにとっても。
傘を差しかける値打ちもない。
そんなことよりも。早く。急がずに。いそいそと。優雅に。コンビニエンス・ストアアへ入店。しましょう。
裏口から。
木戸口から。