何時もの様に溜め池に出掛けました。

稲刈り、もう始まってますね、農家の方が居たので、農道の脇にクルマ停めさせて貰う旨をお願いし、挨拶しておく。この旦那さんに挨拶するのもう何回目かな。瞳の色が凄い薄いんだなあ、緑内障?70歳過ぎだよなあ、働き者だよなあ。

コワイ顔してぶっきらぼうで怒ったみたいに「ゴミ棄てんな!」「田んぼの土崩すなよな!」とか言うけど最後はへへッて笑うんだよな。

今日は珍しく、溜め池の下の用水路にタナゴ釣りのおじさんが居ました。まあ他人の事をおじさんって、俺もオッサンですが(笑)60歳位かなあ、タナゴ釣りの道具は酷く特徴的なんで、釣りに覚えがある人ならば、遠くから見たってすぐにそれと分かる訳です。

台風による今シーズン初の貯水率100%超えの溜め池から、怒濤の様に濁流が排出される激流と化した用水路で呑気にタナゴを釣って居るおじさん。タナゴ、激流に流されて今日はそこには居ないんじゃないかなあ?思い思いに楽しんでますね。

タナゴおじさんに挨拶して、何時もの溜め池の何時もの場所で仕掛けを結び、何時もの様にフナ釣りを始めました。すると、さっきのタナゴおじさんが「いやあ~、釣れますか?」とか何とか言いながら笑顔で俺が陣取る横にやって来た。しゃがみ込んでタナゴの仕掛けを溜め池に投入して来ました。

しばし並んで釣りの話、変わりゆく自然の話、この溜め池とこの周辺に住む生き物の話、釣り場の情報交換等、とりとめも無い話をしました。

おじさんの本職(人生のテーマとして本気でやる釣り)はエサ釣りによる本流ヤマメ釣りだそうで、秩父の荒川がホームグラウンドだそうです。流量の多い本流で釣る30センチを越えるヤマメは掛かると猛スピードで走ってスリリングなんだそうです。本流ヤマメ、人生を賭けるに値する美しい相手だ。本流ヤマメとはおじさんいい趣味だよ、アタイちょっと見直しちゃった。健康で身体の巾の広いヤマメは、本当に美しい魚だと思う。しかしこの8月の台風で今シーズンはもう絶望だなあ、と嘆いて居ました。

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※小さいけどこの夏、秋田で釣れたヤマメ。ホンマに綺麗やなあ。



「庭に池を作って、土と貝を入れてタナゴを飼いたいんだよね」

「そりゃいいですねえ。でも、それにはやっぱり奥さんとか家族の同意が要りますよね?」

「そうなんだよね。でも池でタナゴ飼いたいなあ」

「僕ぁ、自宅を持てるなら庭に井戸を掘って、地下水を掛け流しにして渓流魚が飼いたいですね」

「そりゃいいなあ。豪気だねえ」

「子供の頃、秩父に住んで居た時に、実際に敷地内から出た湧水で滝壺みたいな池を造って、渓流魚を飼ってるお宅が有りました。死ぬ程羨ましかった。マジでそこん家の子になりたいと思いましたよ。そこん家の子になれるなら、しみったれたウチの家族なんざ即・捨てられると子供ながらに思ってました」

「それは素晴らしいね」

「今でも高層マンションなんか全く羨ましくないですけど、敷地内に湧水が沸いてる家は本当に羨ましかったですよ。だって庭にヤマメが泳いでるんですから」

二人は喋りながらもそれぞれ思い思いにフナをバンバカ釣り上げる。

そしてカガミゴイが釣れた。

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