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大昔の徳大寺有恒のエッセイ本「ダンディー・トーク2・イギリス車の精神」を今更読んでみました。

世の中に「自動車評論家」と言う不思議な職業が有り、徳大寺有恒はその中でも図抜けて一般人にも知名度の高い「自動車評論家」でした。氏のシリーズ本「間違いだらけのクルマ選び」は自動車評論本として100万部を優に越え、もう自動車関係の書籍でこんな大ヒットは今後は望むべくも有りません。

2014年にお亡くなりになられました。晩年は体調が優れなくて、メディアへの露出も少なかったですね。

この徳大寺有恒のエッセイ本は1992年に書かれたもので、奇しくも俺のユーノス・ロードスターと年式が一緒でした。

この前に「ダンディー・トーク」て徳大寺有恒エッセイ本の第1弾が在るんですが今高いの。定価1500円だった本がアマゾンで1万円越え(笑)買えんわ!

俺は若い頃、この徳大寺有恒…「徳さん」が大嫌いでした(笑)この本の存在も当時から知ってましたが「何がダンディー・トークだよ。自分でダンディー言うたら恥ずかしいわ!」と斜に構えて当時は読みませんでした。

だから大ヒットの「間違いだらけのクルマ選び」も1度も買った事が無い。

「間違いだらけのクルマ選び」は年度毎に刊行されてたんですよ、今年のは◯◯年度版、みたいに。毎年書店に平積みで並んで居たのに1冊たりとも手にすら取った事が無かったなあ、ひねくれてますねえ。

俺が若い頃の徳さんのイメージは、成金趣味で尊大でデブでカッコつけの只のクソオヤジでしたね(笑)

それが自分も歳を取り、思考にも幅が出て来て…白黒をハッキリ付ける事ばかりが世の中では無い、グレーな領域にこそ人の世のおかしみや悲しさがある、と少しづつ解って来たら、徳さんのスゴさも解る様になったんですなあ。徳さんのエッセイ「ぶ男に生まれて」「眼が見えない猫の気持ち」辺りからはもう大好きになって居たなあ。クルマを書いた本より自身の体験談やポリシーの話のが俺は好きでした。

「ぶ男に生まれて」で印象にある言葉は「もし君を好きだと言ってくれた女が居たなら、その娘が君のタイプと少し違ったとしても感謝して大切にしろ。1人の女性が男に教えてくれる事は沢山有るんだから」正にぶ男に生まれた徳さんならではの草食君へのエール。

また「眼が見えない猫の気持ち」では「チャオ(失明した飼い猫)の眼が見える様になるなら何だってやってやろうと思う様になった。チャオと出会って、私にもこんな優しい気持ちがあるとは…自分自身正直驚いた」分かります。物も言わない飼い猫への老いた男の深い愛情。

まあ徳大寺有恒って人は、クルマだけじゃなく、音楽、映画、古典、歴史、芸術、文化、地理、ファッション、酒、美味いもの、スポーツ、人間関係、民族学、男の身の振り方、恋愛に至るまで兎に角造詣が深い。唯一、興味無さげだったのが自然界や生き物、釣り、野宿と言ったアウトドアですかね。

俺は知的な野蛮人に憧れていて、自身もそれに近づきたく思いますが、もしも徳さんに格闘技やラグビーに由来する凄味や説得力ある肉体が有り、更にカヌーから座ったまま投網を投げ魚を捕り、また更に素手で殺した鹿をその場でさばいて焼いて食っちまう様な所があったら最高だな(笑)

脱線しました。しかしまあ、徳さんの知識や男味の文章力、その経験値は他所の自動車評論家には到底及ばない所、死してなお追随を許しませんね。

そしてその徳さんを支え続けた奥様がこれまた素晴らしいんだなあ。

徳さんの妙味が理解出来ずに反発して居た20代の自分自身を懐かしく思いながら、ゆっくり読ませて頂きました。