久々にロードスターを洗車したので、水気を飛ばすべくそこらを一回りした。

R140。前方の信号が赤なので停車すると、右後方から一台、オートバイがすり抜けて来た。紅いカウルの付いた二灯ヘッドライトの、スーパースポーツ。

スーパースポーツとは、加速や減速、旋回性に優れたレーサータイプのオートバイの公道版で走りを楽しむ為だけのフェティッシュなオートバイの事を指す。

停車中の、私の真横に着くか着かないか位で信号が青になり、そのスーパースポーツは、徐行しつつも交差点の停止線で停まる事無く、私のロードスターの前にスイッ!と出て来た。

「すいません!」

の意味を込めた、ヘルメットの軽い会釈と左手を斜め下に振る仕草。私も同じシチュエーションなら必ずやる、路上で四輪に敵意を抱かせない術のひとつ。

あ、マナー良い乗り手だな、と同時にそのスーパースポーツの乗り手が、ヘルメットから出た髪、ウェアのカラー、体の線の細さで分かった「あれ?オンナだ…!」

オートバイはホンダのCBR600だったか。

私のロードスターの前に出てきたそのオンナは、コキコキッ!とヘルメットの頭を左右に振ると、飛行機が離陸する様な静かなリズムで、悠々とスムースに、しかし素早くスーパースポーツを加速させ、アッ!と言う間に消えはった……馬鹿な男がやる、空吹かしを入れながらのこれ見よがしな加速では無い。滝を落下する水の様に力強くて自然な、そんな加速だった。

「随分と上手いオンナだなあ~」

と半ば呆気に取られた私でしたが、数秒後、彼女を細かく観察したくなり、ロードスターの速度を上げて追いかけた。

暫くすると、前方をトラック達がのろくさと列なって居るのが見えて来て、ドラゴンタトゥーの女、じゃなかったスーパースポーツのオンナが最後尾に引っ掛かって居た。

トロい速度のトラックに諦めた様に両足をブラブラさせ、またヘルメットの頭を左右に振る。その後、左手で左の膝をさすりながら、片手運転でトラックの後を巡航していた。その仕草はオートバイの操作に熟練した、男の仕草そのものだったが、前述した様に、真後ろから細かく観察しても、髪の長さやウェアのカラー、体の線の細さで……特に肩幅の狭さ、腰のラインはどう見ても若いオンナのそれなので、これは女性に間違いない、と言う結論に達した次第でありました。

その後、スーパースポーツのオンナは、波久礼駅の手前の豚丼屋に入って行かはりました…

御昼御飯は丼ものか。勿論、御一人様。

何かムッチャ男前…カッコいい…顔見たかったなあ~(*_*)